記事の内容はこちら

シリーズ「始まりつくるヒト!」
PR
「要求以上の価値を提供する」
ニングセンターほか工作機械などの切
削部に切削液を吹き付ける用途で開発
されたもの。開発元に聞いても、その用
叶エンジニアリング
ではない。だが、このとき納期が迫って
工作機械や生産ラインの設計製作などを手がける叶エンジニアリングは、ある自動車部品メーカーの
いた。まだポンプさえ発注していない
相談を受けて同社としては初めての洗浄機ユニットを開発した。要求以上の価値を顧客に提供する
ことを重視する同社は、持ち前の技術力を駆使して画期的なシステムを考案。さらに市場に登場した
ばかりの新構造のポンプを採用し、設置面積が従来機に比べて格段に小さいうえに、高い洗浄能力
を発揮する装置を実現した。
「ここを、どうにかしたいのだが…」
。
人が目視で切粉の有無をチェックして
置を叶エンジニアリングが開発してき
叶エンジニアリングの代表取締役社
いた。だが、このやり方は効率的とはい
たことがある(図1)
。
長、水谷克彦は長年の顧客である大手
えない。そこで新しい部品の生産を始
しかし、水谷は少し悩んだ。洗浄機
自動車部品メーカーから相談を持ちか
めるのを機に、この工程の改善に取り
けられた。顧客が指し示していたのは、
途以外に使われた例はなかった。水谷
がイメージするとおりに使えるか定か
図2 日本オイルポンプのユニット型クーラン
トポンプ『VORTEX - EP 型』
「本来は工作機
のクーラントポンプだが、フィルターを内蔵し常に
クリーンな水を高圧で吐出できる点が評価され、洗
浄機ユニットに採用していただけた。さらに、自動
洗浄でメンテナンスフリーであること、1台に複数
の機能を集約しているためコンパクトであることが
付加価値を提供できた。クーラントユニット以外に
も様々な用途の可能性があることを、今回気付かせ
ていただいた」
(日本オイルポンプ担当者)
。
この時点で、既に顧客が求める納期ま
で3カ月を切っていたのだ。設計やテス
水谷 克彦 氏
叶エンジニアリング 代表取締役社長
トに十分な時間をかける余裕は、もはや
残されていなかった。
窮地に立った水谷は決断した。
「もし
十分な性能が出なかったら、元のポン
ができた。そのうえ、VORTEXに内蔵
プを使ってもらうことにしよう」
。水谷
するフィルタは自浄機能を備えている
すと、そこに供給する水の量が増える。
らは自分たちのアイデアを信じて突っ
ため、フィルタのメンテナンスにかかる
ユニットの開発は未経験だったからだ。
従来よりも量が多い水を高圧で吹き出
走ることにしたのだ。
負荷も軽減できる。これらの特長を打
組もうとしていたのだ。
顧客からの打診は、むげには断われない
すようにするには、かなり大きな圧力と
水谷たちが設計した生産ラインに組み
もっとも、洗浄機ユニットを改善し
が、安易に引き受けて失敗したら顧客
容量を備えたポンプが必要になる。と
こだわりが新たな案件を呼び込む
対する評価を同時に高めることができ
込まれている洗浄機ユニットだ。
たいのならば、まず開発元に相談するだ
に迷惑をかけることになる。その一方
ころが、従来の洗浄機に搭載していた
水 谷 ら が リ ス ク を 承 知 で 未 知 の
る。つまり、ウイン-ウインの構図を実
金属を加工している、そのラインでは
ろう。自動車部品メーカーが、叶エンジ
で、既存の洗浄機の仕組みを見た時に
ポンプで対応しようとすると、ポンプの
VORTEXの採用にこだわった理由はも
現できると水谷らは考えた。
切削加工を施した部品に付着している
ニアリングにも相談を持ちかけたのは、
水谷にはひらめく部分があった。そこ
数を倍に増やさなくてはならなかった。
う一つある。それは「顧客から求められ
3カ月後、水谷らが開発した新型洗
で依頼を引き受けることにした。
そうなると、洗浄機ユニット全体が巨大
ているもの以上の価値を提供したい」
浄機ユニットは、自動車部品メーカー
化してしまう。このままでは水谷らのア
という水谷の強い意志があったことだ。
の生産ラインで無事稼働を始めた。最
イデアを具体化することは難しかった。
VORTEXは、従来機にはない新しい特
大の課題であった切粉の洗い残しは解
徴をもたらす可能性があった。その一
消した。洗浄機の専門業者でもなしえ
ち出せば顧客満足度と自社の技術力に
切粉を、洗浄機を使って水で洗い流し
「何か新しいアイデアを出すことを期待
ている。ところが既存の洗浄装置では、
されていたのかもしれない」と水谷は当
細長いねじ穴の内部など複雑な形状の
時を振り返る。この背景には、それま
圧力を高めて流量を増やす
部分に付着した切粉がうまく除去でき
で、その自動車部品メーカーの様々な要
既存の洗浄機では、固定したワーク
ないことがあった。このため洗浄後に
求にこたえる形で、数多くの機器や装
の上から水をかけて切粉を洗い流して
自分のアイデアを信じて突っ走る
つは、ユニット全体を小型にできること
なかった課題を、厳しい納期の中で解
いた。この場合、ワークの形状が複雑に
ちょうど、こうした問題に突き当たっ
だ。洗浄機ではフィルタで切粉を除去
決したのだった。さらにその後、同じ自
なると、水が届きにくい部分が出てくる。
たころ、解決策をもたらすかもしれない
しながら水を再利用している。ただし、
動車部品メーカーから新型洗浄機ユニ
この問題に対して水谷を中心とした
ポンプの情報を耳にした。日本オイル
再利用するには、洗浄の際に混入した
ットへの置き換えの依頼が続き、1年半
叶エンジニアリングの技術者らが提示
ポンプのユニット型クーラントポンプ
切粉を、フィルタを使って水から除去し
足らずで合計 4ラインの洗浄機ユニッ
した解決のアイデアが、ノズルを回しな
「VORTEX 」だ(図2 )
。まだ市場に登場
なければならない。
トを入れ替えることになったという。
がら水をかけて洗う方法だ。さらに一
したばかりの製品だったが、小型なが
VORTEXの場合、フィルタを内蔵し
「なぜか難しい案件ばかりが、ウチに
つのノズルだけではなく複数のノズル
ら十分な圧力や流量を備えた品種が製
ており、ポンプの外部にろ過用のフィル
来る」と水谷は苦笑いする。それは、普
から高圧の水を吹き付けるようにすれ
品ラインアップに含まれていた。水谷
タやタンクを設置する必要がない。こ
通のものづくり企業には任せられない
ば、洗浄能力は格段に高まると考えた。
はさっそく同社の担当者とコンタクト
のため設置面積を小さくできるわけだ。
高い技能と、期待以上の価値を提供す
さっそく水谷らは、そのアイデアを具
を取った。
実際、今回のケースでは洗浄機ユニッ
るという意志が評価されていることに
現化すべく設計に入った。このときノズ
ところが、VORTEXは、もともとマシ
トが占める面積を半分以下にすること
他ならない。
(敬称略)
ルを回す機構系の設計はすぐに見通し
が立ったのだが、複数のノズルから高圧
図1 叶エンジニアリング本社 総勢25名のスタッフがエレ、メカ双方の設計をこなし、自動化ライン
や専用機を顧客のニーズに合わせて製作まで行う。その技術力は極めて高い
で水をかける仕組みのところで問題に
直面した。水を吐出するノズルを増や
URL ◦ http://www.nop-vortex.jp/
お問い
合わせ
日本オイルポンプ株式会社
〒 101-0047 東京都千代田区内神田 2-15-9 内神田 282 ビル9F
TEL ◦ 03-5294-5807 FAX ◦ 03-5294-5808