充填スクッテルダイト超伝導体の渦糸状態の理論研究 数理物理学講座 41414018 松永 安史 充填スクッテルダイト構造を持つ重いフェルミオン超伝導体である PrOs 4 Sb12 が最近発見された。 この新しい超伝導体では磁気的なゆらぎでなく四重極ゆらぎの寄与が重要で、これまでの従来型 超伝導体とはまったく違う新しい異方的超伝導が実現していると考えられている。熱伝導の実験で は超伝導2段転移を伴う超伝導多重相図が示唆され、高磁場相の c 軸周りの4回対称の対関数が、 低磁場相では2回対称に変わることが報告されている。 本研究では、この多重相図超伝導での磁束渦糸状態の特徴的な性質について Ginzburg-Landau(GL)理論により研究した。2段転移を説明するために4回対称性から2回対称性 への転移を、4回対称のオーダーパラメータが最初の転移で現われ、2回目の転移で2回対称の オーダーパラメータが現われると考えた。この2つの成分をもつ GL 方程式を磁場中で時間発展さ せることによって、2段転移および、その渦糸構造について考察する。まずは、静的な渦糸構造を 調べ、GL 理論で2段の超伝導転移をもつ多重相図が再現できること、渦糸格子の形状が三角格 子からずれる可能性、また domain wall に捕らえられた渦糸は半整数磁束量子となって並ぶ vortex sheet となることなどを議論する[1]。さらに、この新しい構造である vortex sheet の動的性質を調べ るために、試料に電流を流した時の普通の渦糸と vortex sheet の流れていく様子を対比しながら 研究する。最後にピニングを導入した時の vortex sheet と普通の渦糸の動きについても考察する。 [1] Y. Matsunaga, M. Ichioka, and K. Machida, to be published in Phys. Rev. Lett. 磁場 ( H / H c 2 ) (a)磁場温度相図 (b) 1.0 正常状態 0.8 0.6 高磁場相 0.4 H c2 H* 0.2 低磁場相 0.0 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 温度 (T / Tc ) (a) は今回 計算で得られた多重相 図超伝導の (b) は T / Tc = 0.1 , H / H c 2 = 0.3 の 時 の内部磁場分布図、線上に並んだとこ ろが vortex sheet, 2種類の半整数磁 磁場温度相図。 H が高磁場相と低磁場相の2 束量子渦糸が交互に並び domain wall つの領域を分けている。 を作っている。 *
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