統合的運動生成概念に基づくBiNIApproach

【統合的運動生成概念に基づく BiNI Approach 講義の概要】
人の動きというものは,言葉では説明しつくせないほどに巧みであり,高度に統合されている.それゆえ,神
秘的でもあり,われわれ治療家を悩まし続け,魅了し続ける.今まで,当然だと思っていた,盲目的に信じてき
た運動療法が,本当は結果的に効果がないばかりか患者を悪くしているとしたら?既成概念に捉われることは非
常に大きなリスクを孕んでいることに気がつかなければならない.静的ストレッチがパフォーマンスを低下させ
るという事が明らかになったように….
我々は,その「人の動き:運動」を,地球上で一様に与えられている力学的法則に立脚して,臨床家としての
新しい視点を加えて考察し,身体運動学そのものを運動生成として捉えなおしている.そして,バイオメカニク
スの観点から観察・説明できる身体運動を,神経科学・発生学・非線形力学・運動器連結を含む構造・人の左右
特異性・感覚入力位置特異性などの観点と関連性を持たせながら統合的に説明する概念,
「統合的運動生成概念」
を構築した.
身体運動に対する治療介入においてはバイオメカニクスで観察される外力こそ,中枢神経系が取り込む「感覚」
であると,我々は考えている.そしてその「感覚」こそが,
「中枢神経系」というコンバーターによって「運動」
に変換されるのである.人の動き,運動を変えたければ,「感覚」を変えることが不可欠となる.そして我々治
療家は,その「感覚」を操る専門家であるといえる.人が調節可能な外力である床反力,慣性力などをすべて「感
覚」として捉え,治療に応用している.人体構造はそれ自体が運動を規定する重要な一要素であるばかりでなく,
その構造や構造の変化も感覚の変化を生起するため,組織の性質・アライメント・他動的と思われるような関節
運動なども重要視している.さらには感覚入力位置特異性・人の左右特異性がおよぼす感覚入力特異性なども含
め,これらの感覚情報を操ることで合目的かつ合理的活動を提供し,学習につなげるプロセスを提唱したい.
人類の中枢神経系に対する理解は現段階ではかなり不十分であるが,感覚の変化は中枢神経系の変化であり,
中枢神経系の変化は運動の変化である.であるのならば,どのような感覚入力がどのような運動出力に変換され
るのかの法則性を蓄積することは治療の向上に大きく寄与するはずである.
このような観点から我々は,関節や疾患に関わらずシンプルでありながら的確な変化を引き起こす, BiNI
Approach (Biomechanics and Neuroscience Integrative Approach) を開発した.
日本のリハビリテーション誕生から半世紀,この業界に一石を投じ,その波紋の共鳴をもってパラダイムシフト
を敢行する.
【内
容】
当日は統合的運動生成概念を下記のように概説していきます.簡単な体験・実技を入れながら,運動を新たな
角度から観ていく事をご提示いたします.
1. 筋・筋膜・靭帯・骨膜
同士の滑り
2. 膜構造の役割
3. 臨床家が捉える神経システムとは?
4. COP の移動と COG の移動
5. 歩行とは?~Symphonic Gait~
6. Integrative Organization
7. BiNI Approach について
生き残ったのは強いものでもなければ賢いものでもない.
常に変化し続けたものである.
チャールズ・ダーウィン