集会委員会 スウェーデンの最高峰を登る 成田を発って

集会委員会
スウェーデンの最高峰を登る
成田を発って、その日の内にノルウエー北極圏最大の町トロムソへ着いた。白夜なので機上から、
眼下の様子がよく見える。大地が残雪の縞模様で覆われていた。雪なのだ。翌日フィンランドに入ると、
悪い予感が当たっていた。フィンランド最高峰ハルテイ(1328m)にはまともな登山道がなく、異常
降雪のため入山不能。よって、里に近い岩山のサーナ(1029m で 15 番目くらい)に変更して、全
員が登り平坦なラップランドの光景をまず楽しんだ。
スウェーデンの最高峰であるケブネカイセ(2114m)は、一般コースではない東ルートの上部を
ハーネス着用で氷河を横断し雪稜より東面の 200m の岩壁(フィクスワイヤーロープあり)でクラ
イミングを楽しみ、頂上台地に抜けた。さらに稜線を辿り、南面は数 100m、北面は 1000m も切
れ落ちる雪の鋭いピークに立った。スカンジナビア半島の北極圏最高峰でもあり、ラップランド
と氷触地形のフィヨルドの山々の展望が楽しめた。森林限界にある山小屋より 1400m の標高差
を 11 時間で往復。下りの下半分はルートを替えて雪渓の尻セードで滑り降り、頂上より実働 3
時間で山小屋に着いてしまった。こんなことができるのはガイド登山の醍醐味であろう。参加
15 人中 7 人が登頂した。他に 3 人がヘリで登頂。( ハルテイの位置はスカンジナビア半島、北
部中央の、ノルウエー、フィンランド、スウェーデンの 3 国の国境交叉地帯で、ケブネカイセ
はそのすぐ南隣になる。)
海洋アルプスはノルウエー西方のロフォーテン諸島、氷触結果の 1000m 級の岩峰が見渡す限り
に広がる絶景だった。昔の郵便船同様に今は沿岸急行船クルーズでフィヨルドや狭い海峡を抜け
るのだった。
出発直前にアイゼン携行不要の連絡を受けた。北極圏最高峰で?とも思ったし、ハーネス着用
の説明を受けて、同様の疑問があったが、行って見ると岩壁の岩場に残雪があっても氷結してお
らず、よって快適に登れた。尻セードの雪渓も柔らかく危険はない。ノルウエー沿岸の広い意味
での北極海にはメキシコ暖流が流れて冬も凍結はせず、温暖な気候とか。そして、このシーズン
は白夜つまり夜がないので放射冷却がなく、山中で、明るいだけではなく、凍結するような冷え
込みの無い白夜を実感出来た。北極圏の旅ゆえに、帰国直前のストックホルム以外は毎日が白夜
だった。
北欧 3 国の面積は日本の約 3 倍。各国より 1 か所選んで、つまり日本の 3 倍の広さの中から 3 か所
を厳選したプランのようなもの。フィンランド最高峰の分は他での埋め合わせになったが、北極圏最高
峰は思いのほかスマートに楽しめた。そして、下山して山小屋に着いたとたんに大粒の雨、これが翌日
まで続いた。全行程での雨はこの時だけだった。晴天にも恵まれた幸運の旅だったと言えよう。
(早川 滉 )