食物と薬の相互作用 食物アレルギー (一覧)

食物と薬の相互作用
(基本編)
出典:厚生労働省 e-ヘルスネット
食物アレルギー
(一覧)
食物と薬の相互作用
出典:厚生労働省 e-ヘルスネット
食物と薬の相互作用(基本編)
食物・食品と医薬品との相互作用とは、摂取した飲食物が医薬品の主作用や副作用に影響し、医薬品の効力や副
作用が増強したり、減弱したりする現象です。これらの相互作用には、作用機序の違いから二つのカテゴリーにわ
けられています。一つは、食品成分が薬の吸収、分布、代謝、排泄の過程で影響する薬物動態学的相互作用であ
り、もう一つは、食品成分が医薬品の効き方に協力的または拮抗的に影響することで起こる薬理学的相互作用で
す。
食物と薬の相互作用についての考え方
食物と医薬品との相互作用については、考え方として二つの方向性があります。第一は、食物が医薬品の作用
に与える影響というもので、同時摂取した食物の影響で医薬品の効能効果がどのように変化するかという視点で
す。この場合、摂取した飲食物あるいは特定の食品(食品成分)が医薬品の効能効果(主作用)に負の影響(効果
の減弱)を与えた場合は、疾病の増悪につながり、正の影響を与えた場合は、薬効の増強による、いわゆる効きす
ぎの状態をもたらします。さらに摂取した飲食物によっては、医薬品の主作用には変化をもたらさないのですが、副
作用に強く影響することがあり、思わぬ副作用の出現や副作用そのものの増強や減弱といった影響が出ることが
あります。
第二の視点は、医薬品が栄養素の利用や代謝に与える影響で、医薬品の主作用や副作用が栄養素の消化吸
収ならびに体内代謝に影響を与えるというもので、例えば抗がん剤のように味覚や食欲に影響を与えたり、嚥下咀
嚼に対し影響を与える場合もあります。
第一の視点については、効果的な薬物療法も確立し、副作用を軽減する観点から、多くの事例について検証され、
様々なことがわかってきていますが、近年、さまざまな健康食品の利用が拡大されていくにつれ、これら健康食品と
医薬品との相互作用が注目されてきています。一方、第二の視点については、これまであまり検証されてきません
でした。今後、傷病者の QOL 向上の観点ならびチーム医療による患者の回復支援の必要性とその経済効果が大
きく取り扱われている現在、その実証的解明が急務となってします。
食物と薬の相互作用、二つの作用機序
食物と医薬品の相互作用については、その作用機序の違いから二つのカテゴリーに分けられています。一つは、
薬物動態学的相互作用と呼ばれるもので、薬を経口的に服用した後の薬効成分の吸収、分布、代謝、排泄過程で
起こる相互作用です。(1)食事の有無や特定の食事によって、薬物の吸収量や吸収パターンに変化が生じた結果、
薬物血中濃度が変化してしまったり、(2)食品中の特定成分が薬物の代謝に影響を与えたり、(3)栄養状態の変化
によって薬の体内分布が変化してしまったりする場合などがこれに該当します。もう一つは、薬理学的相互作用と
呼ばれているもので、薬の効き方や効き目が発現する過程で起こる相互作用です。薬物と食品成分のそれぞれが
有する生理作用によってもたらされる相互作用で、食品成分の生理作用と同じ作用を持つ薬を投与することにより、
薬の作用が増強(協力作用)したり、食品成分と相反する作用を持つ薬を投与することにより薬の作用が減弱(拮
抗作用)したりすることです。
和田政裕
参考文献
城西大学薬学部医療栄養学科・編著 「やさしくわかりやすい食品と薬の相互作用 基礎と活用」,p6-11,カザン(2007)
山田和彦、村松康弘・編著 「健康・栄養食品アドバイザリースタッフ・テキストブック」,p92-111,第一出版(2006)
食物と薬の相互作用(理論編)
食物と薬の相互作用において、薬物動態学的相互作用としては、(1)食事の有無や特定の食事によって薬物の吸
収量や吸収パターンが変化してしまう(食物中の脂質とグリセオフルビン)、(2)食品中の特定成分が薬物の代謝に
影響を与える(グレープフルーツジュースとカルシウム拮抗薬)、(3)栄養状態の変化によって薬の体内分布が変化
する(低栄養状態と血中薬物濃度上昇、肝臓薬物代謝活性低下)場合に分類できます。薬理学的相互作用では、
薬物と食品成分の拮抗作用によってもたらされる相互作用が多く見られます(ビタミンKとワルファリン、アルコール
と薬物)。
薬物動態学的相互作用
薬物動態学的相互作用を大別すると、(1)食事の有無や特定の食事によって薬物の吸収量や吸収パターンが変
化してしまう、(2)食品中の特定成分が薬物の代謝に影響を与える、(3)栄養状態の変化によって薬の体内分布が
変化する場合に分類できます。
例としては、(1)皮膚真菌症治療薬であるグリセオフルビンの場合、脂質の多い食事や食品(牛乳やバターなど)摂
取後の服用で生物効力(AUC:薬物血中濃度下面積)が 2 倍以上に上昇することや、(2)グレープフルーツジュース
の同時摂取により、血圧降下薬であるジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の血中濃度が上昇して、薬の効きすぎ
状態になり低血圧症状を呈してしまう事例がそれに該当します。この場合は、小腸粘膜上の薬物代謝酵素
(CYP3A4)の活性をグレープフルーツジュースに含まれる苦味成分であるフラノクマリン誘導体(ベルガモチン、ジ
ヒドロベルガモチン)が不可逆的かつ強力に阻害してしまうことによるものであることがわかっています。(3)の事例
では、病中の栄養不良や高齢者などで起こりやすい低栄養状態では、血中たんぱく質濃度が低下することによる
遊離薬物濃度の上昇と、肝薬物解毒代謝活性の低下により、薬の効きすぎ状態を招きやすいということなどが挙
げられます。
薬理学的相互作用
薬理学的相互作用では、薬物と食品成分の拮抗作用によってもたらされる相互作用が多く見られます。
例としては、ビタミン K あるいはビタミン K を多く含む食品(納豆やブロッコリー、モロヘイヤなどの緑色野菜、クロレ
ラなどの健康食品など)の摂取による抗血栓薬ワルファリンの効果の減弱例が有名です。ワルファリンの抗血栓効
果は、一連の血液凝固反応において、ビタミン K の働きを阻害することによってもたらされており、食物からビタミン
K が供給されることによって拮抗的に効力が減弱することに起因する現象です。その他、甘草(グリチルリチン酸)
による降圧薬作用の減弱やチアジド系・ループ系利尿薬の副作用増強、アルコール摂取による睡眠薬や向神経薬
の作用増強や N-メチルテトラゾールチオール基を持つセファロスポリン系抗生物質やトルブタミドなどの経口糖尿
病薬によるジスルフィラム様作用(アセトアルデヒド代謝阻害による悪心、二日酔い様症状)なども薬理学的相互作
用の具体例です。
和田政裕
参考文献
城西大学薬学部医療栄養学科・編著 「やさしくわかりやすい食品と薬の相互作用 基礎と活用」、p12~62、127~138、カザン
(2007)
城西大学薬学部医療栄養学科・編著 「生活習慣病治療薬 基礎と活用」、p142~147、カザン(2008)
城西大学薬学部医療栄養学科・訳 「食品-医薬品相互作用ハンドブック」、丸善(2005)
食物アレルギー
食物アレルギー(しょくもつアレルギー)は、原因食物を摂取した後に免疫学的機序を介して生体にとって不利益な
症状(皮膚、粘膜、消化器、呼吸器、アナフィラキシー反応など)と定義されている。
食品によっては、アナフィラキシーショックを発生して命にかかわることもある(そばが有名)。
乳幼児から幼児期にかけては食物アレルギーの主要な原因として鶏卵と牛乳がその半数以上を占める。青年期
になるにつれて甲殻類が原因の事例が増え、牛乳が減る。成人期以降では、甲殻類、小麦、果物、魚介類といっ
たものが主要なアレルギーの原因食品となる。
日本では食品衛生法第 19 条に基づき「食品衛生法第十九条第一項の規定に基づく表示の基準に関する内閣府
令」別表第四で「特定原材料」として指定する品目について表示の義務づけがなされており、また、その他の一定
の品目について「特定原材料に準ずるもの」として通知により表示することが奨励されている。
診断と治療
診断
食べた後にアレルギー反応と思われる症状があるだけでは、食物アレルギーとは診断することはできない。実際に
食物アレルギーは酵素不全による不耐症や食品に含まれる物質の薬理作用による反応と混同されることが多い。
食物アレルギーには摂取後すぐに発症するⅠ型アレルギーによるものと数時間以上経ってから症状が出現する非
Ⅰ型アレルギーによるものが存在する。
RAST、ブリックテストといった検査はⅠ型アレルギーと考えられる症例に対してのみ使用する。これらの検査は偽
陽性が多いので病歴から判断し、必要なもののみを検査する。また RAST の結果は食物抗原や患者の年齢によっ
て、同じ値であっても臨床的な意義が異なる。例えば、乳児においては小麦で RAST 陽性がでることは多いので、
卵白低値陽性は小麦中程度陽性よりも臨床的な意義が高いと考えられる。
花粉症の季節に悪化する場合は口腔アレルギー症候群の可能性がある。特に成人の場合は可能性が高い。
治療
アナフィラキシーショックを起こした場合はアナフィラキシーショックの治療を行う。魚介類、ナッツ、ピーナッツ、ソバ
は重篤なアナフィラキシーを起こすことが多いことが知られている。また喘息の既往がある患者も重篤なアナフィラ
キシーを起こす可能性が高いといわれている。
治療は原因食物の除去が原則であるが、食物アレルギーの患者は小児に多く、厳しい除去食は栄養に悪影響を
及ぼす恐れがある。原因が特定できなければアレルギー専門医の受診が望ましい。
近年ではアレルギー反応を起こさない量の原因食物を摂取することによって体を慣れさせる経口免疫療法も行わ
れている。
原因食物
1.特定原材料
「食品衛生法第十九条第一項の規定に基づく表示の基準に関する内閣府令」別表第四により特定原材料とし
て定義される。現在は 7 品目。【 】内は認められる代替表記等の例。
1.卵【玉子、たまご、鶏卵、うずら卵、マヨネーズ、オムレツ、目玉焼、かに玉、オムライス、親子丼など】
2.小麦【コムギ、小麦粉、パン、うどん、焼きうどんなど】
3.えび【海老、エビ、海老フライ、えび天ぷら、サクラエビなど】
4.かに【カニ、蟹、上海がに、マツバガニ、カニシューマイなど】
5.そば【ソバ、そばがきなど】
6.落花生【ピーナッツ、ピーナッツバター、ピーナッツクリームなど】
7.乳【牛乳、加工乳、乳飲料など】
2.特定原材料に準ずるもの
通知により特定原材料に準ずるものとして表示が推奨されるもの(任意表示)で、現在、18 品目が定められて
いる。
【 】内は認められる代替表記等の例。
1.あわび【アワビなど】
2.いか【イカ、スルメなど】
3.いくら【イクラ、すじこなど】
4.オレンジ【オレンジジュースなど】
5.キウイフルーツ【キウイなど】
6.牛肉【ビーフなど】
7.くるみ【クルミなど】
8.さけ【サーモン、しゃけなど】
9.さば【サバなど】
10.大豆【ダイズ、豆腐、豆腐ハンバーグなど】
11.鶏肉【チキン、焼き鳥など】
12.バナナ【バナナジュースなど】
13.豚肉【ポーク、豚生姜焼など】
14.まつたけ【松茸など】
15.もも【桃、ピーチ、ピーチペーストなど】
16.やまいも【ヤマイモ、とろろなど】
17.りんご【リンゴ、アップル、アップルパイ、りんご飴など】
18.ゼラチン【板ゼラチン、粉ゼラチンなど】