「ろうそう、ですか?」 首をかしげて母さんが聞いた。診察台の上で伏せを

それって、小三として恥ずかしいことなのだろうか。
ありませんが、何かに引っかかったり巻き爪になったりし
です。めずらしいことじゃないし、とくに気にする必要は
「こうして、退化したはずの指が生えてくることがあるん
いる茶色い子犬は、不安そうにぼくを見上げる。
首をかしげて母さんが聞いた。診察台の上で伏せをして
「ろうそう、ですか?」
「そうです、狼の爪と書いてろうそう。犬はふつう前足に
波木先生が手をはなすと、子犬は毛糸玉みたいな体をブ
てケガをしやすいんで、気をつけてあげてください」
ルルッとふるわせた。それから先生は、大きな両手で子犬
五本、うしろ足に四本の指があるんですが、この子はうし
波木先生は、右手で子犬を抱きよせ、左手でうしろ足を
とって見せてくれた。先生のゴツゴツとした手にのせられ
「ほかは問題ないよ。かわいくて、ええ犬じゃね」
を包むように抱くと、ぼくの胸にわたしてくれた。
なみき
ろ足の指が一本ずつ多いでしょう? これが狼爪なんです」
た子犬の丸っこい足には、たしかに五本目の指がある。
腕の中で、五センチほどのしっぽがピコピコ動いた。く
ってきた。そこで飼われている、柴犬みたいな雑種が赤ちゃ
子犬は一週間ほど前に、近所のさんぱつ屋さんからもら
すぐったくて、じんわりとあったかかった。
健康診断で、指の数が多いと言われるなんて思っていなか
母さんに聞かれて、ぼくは首をふった。初めて飼う犬の
「あら、ほんとう。トモキは気づいとった?」
った。というか、犬の指が何本かなんて考えたこともない。
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