2015年7月度 第 77 回 認知症(3) その他の認知症と 今後の新薬について 1 認知症の種類 3大認知症 1.アルツハイマー型 認知症 2.脳血管型 認知症 3.レビー小体型 認知症 その他 4.前頭側頭型 認知症 5.正常圧水頭症 6.慢性硬膜下血腫 7.甲状腺機能低下症 8.アルコール性認知症 2 認知症; 発症の原因による分類 1.変性性 認知症(全体の70%) 脳の神経細胞の変性・減少が原因となる認知症 アルツハイマー型、レビー小体型、前頭側頭型 2.脳血管性 認知症(全体の20%) 脳血管障害が原因となって発症する認知症 3.その他の認知症(全体の10%) 脳外傷や脳腫瘍、脳炎、脳感染症などが原因 3 アルツハイマー型 認知症 ・新しいことが記憶できない、思い出せない 時間や場所がわからない。 (認知機能障害) ・無関心、物盗られ妄想、徘徊、等々 (BPSD) レビー小体型 認知症 ・実際にはいない人が見える (幻視) ・眠っている時に突然怒鳴ったり、奇声をあげる (睡眠時の異常言動)(レム睡眠行動障害) ・手足が震える、小刻みに歩く (パーキンソン症状) ・時間帯によって、正常な時と、ボーっとして理解・判断 できない状態が入れ替わりに起こる (認知機能の変動) 4 脳血管型 認知症 ・言葉が出てこず、あれやこれといった表現が 多くなる。 ・はっきりしている時と、全く理解できない時が 出る「まだら認知」 になる特徴がある。 ・ 泣いたり笑ったり怒ったりなどの感情が不安定に なり、集中力がなくなる。 ・ アルツハイマー型が徐々に進行していくのに対し、 良くなったり悪くなったりを繰り返しながら進行。 5 認知症の原因 1.アルツハイマー型 認知症 ;アミロイドβという蛋白が 脳に蓄積して神経細胞が減少 2.レビー小体型 認知症 ;レビー小体という蛋白の塊りが 脳に蓄積して神経細胞が減少 3. 脳血管性 認知症 ; 脳梗塞・脳出血の後遺症 血管障害の部位によって症状に差が出る 6 3大認知症以外の認知症 ・前頭側頭型 認知症 (ピック病など) ・正常圧水頭症 ・慢性硬膜下血腫 ・甲状腺機能低下症 ・アルコール性認知症 認知症の種類ではないが、 若年性認知症 まだら認知症 7 前頭側頭型 認知症(FTD) ( ピック病などを含む ) ・頭の前にある前頭葉と横にある側頭葉の委縮 前頭葉;意欲・創造・実行の司令塔 側頭葉;言葉の理解、記憶、聴覚・嗅覚 ・若年性認知症など若い人の発症が多い 症状 もの忘れは少ないが、異常な行動をする 同じ言葉・同じ行動を繰り返す 異常な食行動 集中力が突然なくなる 反社会的 8 正常圧水頭症(NPH) 隋液が脳の中心にある脳室に溜まり、周りの 脳を圧迫する。 ・歩行障害(がに股、チャップリン歩行) ・記憶障害よりも集中力・注意力・意欲の低下 ・尿失禁(我慢できる時間が短い) 脳腫瘍や くも膜下出血でも発症する。 手術で治療可能 9 アルコール性認知症 多量のアルコールを飲み続けたことにより、 脳梗塞などの脳血管障害や、ビタミンB1欠乏に よる栄養障害を起こして 認知症を惹起。 また、肝硬変となって血中アンモニアが増え、脳を 破壊して認知症をおこす。 アルツハイマー型やレビー小体型の認知症を 合併する場合がある。 アルコール依存症の高齢者に多い。 ・記憶障害 ・見当識障害 ・作話 ・歩行不安定(アルコール依存症と同じ) 10 若年性認知症 1.65歳未満の認知症 正しくは 18~44歳に発症;若年期認知症 45~64歳に発症;初老期認知症 2.脳血管性とアルツハイマーが圧倒的に多い。 脳血管型は「まだら」が多い。 3.脳の委縮スピードは高齢者より2倍以上速い。 4.プレセニリン遺伝子(家族性アルツハイマー病) の原因遺伝子 ・うつ病や更年期障害と誤診されやすい。 ・男性の方が多い。 11 現在のアルツハイマー型 認知症治療薬 1.コリンエステラーゼ 阻害剤 (アリセプト、レミニール、イクセロンパッチ) 2.NMDA受容体アンタゴニスト(グルタミン酸仮説) (メマリー) アセチルコリンやグルタミン酸などの情報伝達物質の制御 アルツハイマーの原因と考えられるアミロイドβ やタウの生成や 凝集を抑えるものではない。→ 根本的な 治療薬 ではない。 それでは、原因はわかっているのに、何故その原因を 解決する治療薬が出てこないのでしょうか? その理由と今後の新薬の開発状況を、次回お話しします。 12
© Copyright 2024 ExpyDoc