No.139 2015.11月号 Face to Face, Heart to Heart 地域医療支援病院 富山市民病院 れんけいと 支援 富山市今泉北部町2-1/Tel: 076(422)1112㈹ http://www.tch.toyama.toyama.jp/発行日 2015年11月 地域の医療・保健・介護・福祉の方とともに、皆様の健康をお守りします 腹部大動脈瘤に対する ステントグラフト内挿術 呼吸器・血管外科部長 瀬川 正孝 当科は、2015年3月に県内で3番目に、「腹 と「ステントグラフト内挿術」があります。人 部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術」 工血管置換術とは、大きく開腹して、出血しな の施行施設に認定されました。以後、地域の先 いように瘤の頭尾で大動脈を遮断した上で瘤を 生方から多くの症例をご紹介いただき、着実に 切断し、人工血管につなぎ換える手術です。こ 実績を積んできております。ステントグラフト の手術は歴史があり、確立された治療法です による治療は、1990年にアルゼンチンで初めて が、手術侵襲が大きいので、高齢者や大きな併 行われました。以後世界的に普及し、現在アメ 存疾患のある方、腹部手術後で再開腹手術が難 リカでは、破裂例も含め、腹部大動脈瘤の半数 しい方には、お勧めできませんでした。一方、 以上はステントグラフトにより治療されていま ステントグラフト内挿術では、両鼠径部に5㎝ほ す。一方、日本では、2006年7月に市販のステ どの小切開を加えるだけです。これより大腿動 ントグラフトの使用が認可されてから本格的に 脈を露出し、細く折り畳んだステントグラフト 普及し始めました。 というバネ付きの人工血管を大動脈瘤内に挿入 腹部大動脈の正常径は16~20㎜で、30㎜以 して開きます。動脈瘤に流れていた血液を、す 上に拡張した場合に腹部大動脈瘤と呼びます。 べてステントグラフト内に流し、もろくなった 腎動脈分岐部よりも末梢にできることが多く、 瘤壁が血圧にさらされないようにして、瘤の増 臍の周囲に拍動性腫瘤として触知します。腸骨 大や破裂を防ぐのです。大動脈を遮断する必要 動脈瘤を合併することも多く、動脈硬化が主な のない低侵襲な治療法で、リスクの高い患者さ 原因です。別名、silent killerと呼ばれ、破裂す まにも施行できます。翌日には歩行ができ食事 るまでは無症状です。年に5㎜ほどの速さで拡大 も摂れ、1週間で退院することができます。 し、瘤径が増大するにつれ破裂する危険性が高 今まで手術を諦めざるを得なかった患者さま まります。最大短径が50㎜を超えると3~ に、低侵襲な治療を提供することが使命である 10%、80㎜を超えると約50%の高率で自然破 と考えております。腹部大動脈瘤が疑われる患 裂します。待機手術での死亡率は1~2%である 者さまがおられましたら、遠慮なく御紹介いた のに対し、破裂例では約半数は救命できませ だければ幸甚です。 ん。破裂前に予防的に治療が必要となります。 治療としては、「開腹による人工血管置換術」 1 12月分 研修・講演・勉強会のご案内 1.地域連携・開放型病床症例検討会 ※12月開催の参加は申込が必要です。詳しくは、ふれあい地域医療センター(TEL076-422-1112 内線2989) へご連絡ください。 日 時:12月8日(火)19:00~21:00 場所:当院3階 講堂 12月 1)ミニレクチャー: (1)「神経障害性痛の病態と治療」 麻酔科 松浦 康荘 神経障害性痛は疼痛疾患の中ではその重症度が高く、罹 病期間が長いことが知られています。さらに著しい生活の 質(QOL)の低下をもたらします。先進国の神経障害性痛 の罹患率は1-7%と推定されており、わが国では数百万規 模の神経障害性痛患者が存在すると推測されていますが、 既存の鎮痛薬に対する反応性が不十分な疾患です。神経障 害性痛の病態と当科で行っている神経障害性痛治療につい てお話しします。 (2)「当院における腹腔鏡下手術の現況」 外科 藤村 隆 腹腔鏡下手術は手術の低侵襲化を目的に導入され、全国 的にも飛躍的に増加してきています。当初は腹腔鏡下手術 のメリットは創が小さいことと考えられていましたが、術 後の生体反応の低減や拡大視効果による精緻な手技の方が より重要であることが判明してきています。当院では胆嚢 摘出術に始まり、結腸・直腸・胃切除術へと適応を広げ、 現在はヘルニア根治術や腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS) にも取り組んでいます。 2)症例検討(2例) ①『重症虚血肢に対してバイパス術後に右大腿切断術を施行した2型糖尿病患者の1例』 紹介医:温泉リハビリテーションいま泉病院 大西 仙泰先生 内分泌内科 高櫻 明子 ②『片側内腸骨動脈瘤に対するEVAR』 呼吸器・血管外科 関 功二 ※1月の地域連携開放型症例検討会の開催はありません。次回は2月の開催を予定しております。ご参加いた 予告 だきますようよろしくお願いいたします。 日時:平成28年2月9日(火)19:00~20:15 場所:当院3階 講堂 内容:1)ミニレクチャー(1題) (担当)歯科口腔外科 2)症例検討(2例) 呼吸器内科・皮膚科の2例を予定しています。 2.内科CPC 日時:12月8日(火)17:30∼ 場所:医局カンファレンス室 3.緩和医療委員会 学習会 日時:12月1日(火)17:45∼18:45 場所:地域医療研修センター ○テーマ 「テレビ会議システムを利用したがん看護 事例検討」 4.地域医療部 講演会 日時:12月4日 (金)17:30∼19:00 場所:講堂 ○テーマ 「地域と医療介護が連携する新しい地域づ くりのデザイン」 ○講 師 NPO法人ミラツク代表理事 西村 勇也氏 5.糖尿病研究会定例学習会 日時:12月10日(木)17:45∼18:30 場所:集団指導室 ○テーマ 「運動療法 肥満でも継続できる運動」 ○講 師 理学療法士 下村 歩美 7.NST学習会 日時:12月21日 (月)18:00∼19:00 場所:講堂 ○テーマ 「①摂食嚥下評価について」 「②摂食・嚥下リハビリテーション」 ○講 師 ①脳卒中リハビリテーションエキスパートナース 高橋 けい子 ②言語聴覚士 山本 久美子 8.看護研修 《衛星研修S-QUE Eナース》 日時:12月2日 (水)17:40∼18:40 場所:集団指導室 ○テーマ:「認知症とせん妄をアセスメントする」 日時:12月16日 (水)17:40∼18:40 場所:集団指導室 ○テーマ:「食べる力の支援~摂食嚥下リハビリ テーション最前線」 6.乳腺術後症例検討会 乳腺エコーに携わる検査技師・放射線技師、乳腺外科医師、病理医 師、放射線科医師、院外参加希望の方のご参加お待ちしています。 日時:12月10日(木)16:00∼17:00 場所:2階 病理検査室 ○内容 前々月の手術症例の病理組織結果、エコー 所見、マンモグラフィー所見の比較検討 ※日時が変更になる場合がありますので、参加希望の方は 事前に病理検査室にご連絡ください。 (富山市民病院TEL076-422-1112㈹ 内線2248) 病院ボランティア 篠崎 佳子 3 研修医のひとりごと 臨床研修医 高 将司 研修医の髙 将司と申します。金沢大学とのたすきがけ研修にて、1 年間研修させていただいており ます。地域の先生方には平素よりたくさんの患者さんをご紹介頂いており,感謝申し上げます。 私はがんに興味があります。きっかけは、あるひとりの患者さんの言葉でした。 「先生、いいお医者さんになってがんやっつけてね。」 私が医者になる前に、口腔外科医として担当した口腔がん患者さんが私に言った最後の言葉でした。 その時の私は,現代医学の無力さに心から悔しく思いました。あれから 10 年程が経ち、以前と比べ ると画像をはじめとする診断法の進歩や検診の普及により、がんの早期診断が可能となってきました。 また内視鏡治療や放射線治療,分子標的治療薬を含めた化学療法の進歩により、高齢者や全身状態 不良の患者さんでも根治を望める症例が多くなってきました。しかし、死亡原因の第一位はいまだ悪 性腫瘍であり、その増加は留まることを知りません。 私は将来、がんに関わる診療科で仕事がしたいと考えております。がん撲滅が私の夢です.壮大な 夢ですが、いつかがんで死ななくてすむ時代を迎えられるよう、その患者さんの言葉を心に刻みなが ら日々勉強しようと思っています。 12月分 医師不在のお知らせ ※外来担当日の休診のみ掲載 科 名 医 師 名 内 科 蓑 内 1 日 寺 靖 打 越 水 野 町 谷 山 内 向 井 小 川 不 在 日 14 日 17 日 科 名 医 師 名 整形外科・関節再建外科 外科・消化器外科・ 乳 腺 外 科 澤 口 4 日、8 日、11 日 藤 村 10 日 16 日、28 日 泉 北 川 22 日 28 日 麻 16 日 小 4 日、7 日∼ 11 日 酔 児 科 科 泌 尿 器 科 寺 田 高 木 金 田 児 玉 不 在 日 10 日、17 日 21 日 11 日 11 日、25 日 7 日、16 日 9 日 PM ∼ 11 日 ※その他、急に不在となることがありますので、ふれあい地域医療センターまでお問い合わせください。 ふれあい地域医療センターからのお知らせ 日頃より大変お世話になり、ありがとうございます。 年末年始のふれあい地域医療センターの業務については以下のとおりとなっておりますので、よろしくお願いいたします。 12 月 28 日(月) 通常どおり 12 月 29 日(火)∼ 1 月 3 日(日) 休み 1 月 4 日(月)から 通常どおり ※なお、救急患者さんの対応に関しては、救急センターへご連絡ください。 編集後記 今年で24回目となる富山市民病院 市民公開講座“ふれあいセミナー”は、「おうちで介護 準 備はいいですか?」―自宅でも安心できる医療と介護―のテーマのもと、当院の各部署が協力し て介護にかかわる講演や「らくらく介護のちょっとしたコツ」で食事や内服薬の管理、ベッドか ら車いすへの移動などの紹介と実演がありました。参加していただいた地域の方々からは、質問 も多くあり、自宅での介護に興味を少しでも持っていただけたことと感じています。今後も市民 の方々のご意見やふれあいを大切にして地域医療に携わっていけたらと感じているところです。 ふれあい地域医療センター 石崎 華代 「れんけいと支援」に関するお問い合わせは、ふれあい地域医療センターまでご連絡ください。 送付を希望されない方はお申し出ください。 TEL 076(422)1114 / FAX 076(422)1154 メールアドレス [email protected] ホームページ http://www.tch.toyama.toyama.jp/ がん・なんでも相談室:メールアドレス [email protected] 4
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