午前1 解答・解説

平成 22 年度 春期
プロジェクトマネージャ
午前Ⅰ 解答と解説
□問 1
イ
□問 11
エ
□問 21
ア
□問 2
ア
□問 12
ウ
□問 22
ウ
□問 3
ア
□問 13
エ
□問 23
ア
□問 4
エ
□問 14
イ
□問 24
エ
□問 5
ウ
□問 15
ア
□問 25
エ
□問 6
エ
□問 16
ウ
□問 26
ア
□問 7
ア
□問 17
ア
□問 27
イ
□問 8
エ
□問 18
イ
□問 28
エ
□問 9
エ
□問 19
ウ
□問 29
イ
□問 10
イ
□問 20
ウ
□問 30
エ
©2010 Yasuyuki Miyoshi
1
PM-H22 午前Ⅰ解答・解説
問 1:正解(イ)
M/M/1(→用語集)の待ち行列理論(→用語集)に関する問題。選択肢を順番
にチェックしていく。
ア:LAN に接続されたプリンタに対しては待ち行列で管理するため,クライア
ント側では,印刷要求をするときにプリンタの空き具合を意識することはな
い。誤り。
イ:正しい。待ち行列は“先入れ先出し”なので先着順である。
ウ:M/M/1 の待ち行列モデルは,待ち行列の長さに制限を持たないモデルであ
る。したがって「バッファサイズを超える」ことも「一時的に受付を中断す
る」こともない。
エ:一つの印刷要求から印刷完了までの所要時間は,平均待ち時間と処理時間
(印刷量に比例する時間)になる。平均待ち時間は,印刷の準備に要する一
定時間ではない。誤り。
問 2:正解(ア)
アルゴリズムに関する問題。この手の問題を短時間で解くには,具体的な数字を
あてはめて考えると良い。
このアルゴリズムでやっていることといえば,単純な乗算なので,例えばこう考
える。
(例)
2 × 3 = 6 … 10 進数
これを 2 進数に直すとこうなる。ただし,便宜上下位 4 ビット=第 0 ビッ
ト〜第 3 ビットのみで考える。
X = 2 = 0010
Y = 3 = 0011
Z = 当初は 0000,これが最終的に 6 = 0110 になる。
この後,実際に選択肢ア〜エを流れ図に代入してみて,最終的に「Z = 0110」
になるものを正解とすれば良い。正解はアになる。
しかし,できれば2進数の計算ルールを覚えておいた方が良い。2進数の計算に
は次のようなルールがある。ここで2進数の計算ルールを確認しておこう。
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2
PM-H22 午前Ⅰ解答・解説
(1)加算
加算の場合は 10 進数と同様に筆算で行えば良い。10 進数と異なる点は“2”に
なったら桁を繰り上げるという点だけだ。2進数なので,その表記に“2”はない
ことから考えても当然だろう。2進数の計算に慣れていない人は,例1のように
“二つずつ”筆算していけば良い。逆に慣れている人は,例2のようにまとめて筆
算してしまっても良いだろう。
(例 1)2 + 3 = 5
(例 2)3 + 3 + 3 + 3 = 12
2 は,2 進数表記だと“0010”
3 は,2 進数表記だと“0011”
3 は,2 進数表記だと“0011”
12 は,2 進数表記だと“1100”
0010
+) 0011
0101
0011
0011
0011
+) 0011
1100
2 進数なので“2”で桁上がり
“合計 4”は,1×2 を桁上げする
“合計 6”なので,1×3 を桁上げする
“3”が桁上げされたため,
1×1 をさらに桁上げする
(2)乗算
一方,乗算の基本形は次のようになる。乗数が2のべき乗ならば,その分だけ左
にシフトして求めることになる。
(例 3)3 × 4 = 12
被乗数 乗数
4
0011
3 は,2 進数表記だと“0011”
4 は,2 進数表記だと“0100”
12 は,2 進数表記だと“1100”
22
被乗数を“べき乗”分左シフトする。
n ビットなら,n ビット左シフト。
今回は,2 ビットなので,左に 2 ビットシフトする。
0110
1100
1 ビット左シフト
さらに,もう 1 ビット左シフト
ただ,全ての数字が都合よく“2のべき乗”になるわけないので,これを応用し
て,次のような手順で乗算を行うことになる。
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3
PM-H22 午前Ⅰ解答・解説
(例 1)3 × 14 = 42
被乗数
乗数
3 は,2 進数表記だと “0011”
14 は,2 進数表記だと “1110”
42 は,2 進数表記だと“101010”
(1)乗数を 2 のべき乗に分解する
3
2
1
14 (1110)
2 2 + 2 + 2 (2)被乗数に,分解後の一つ一つの乗数に対して,n ビット左シフトする。
2 3・・・ 0011 11000 2 2・・・ 0011 01100
2 1・・・ 0011 00110
※3 ビット左シフト
※2 ビット左シフト
※1 ビット左シフト
(3)これらを全て加算する。
11000
01100
+) 00110
101010
①乗数を2のn乗に分解する(これで,2進数表記したときの各ビットが“1”
になっているかどうかがわかる)
。
②被乗数を,2のn乗倍するということは,被乗数をn桁繰り上げたことと同じ
なので,被乗数を左にnビットシフトする。
③ ②の結果を全て加算する。
これらの基本形は覚えておいた方が良い。そうすれば,このアルゴリズムも正攻
法で解くことができる。ポイントは,被乗数 X と乗数 Y のどちらを2のべき乗に
分解しているかという点になる。一応,前述の説明では「乗数を2のべき乗に分解
する」とは書いたものの「被乗数を2のべき乗に分解して,乗数を左シフト」して
も演算結果に影響はないので,念のためアルゴリズムの内容で判断しなければなら
ないからだ。ただ,それさえわかれば,2のべき乗に分解していない方を左シフト
していることがわかるだろう。
流れ図の中には,
「Z + X → Z」と「Z を出力する」というところがある。これは,
先の例でいうと③の加算に該当する。だとすれば,計算結果(Z )に加算している
(X )が左シフトした後の値になるはずだ。したがって,左シフトされるのは X に
なる(乗数と被乗数の区別でも,例と同じで X は被乗数だった)。…a
また,選択肢をみると,X を左シフトする時には Y は右シフトしている。Y は
2のべき乗に分解する乗数である。それを右シフトしているので,第0ビット(後
ろ)から比較していることがわかるだろう。第 15 ビット(先頭)から比較してい
たら,2回目からは全て“0”になってしまう。…b
以上,aとbより,正解はアになることがわかる。
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4
PM-H22 午前Ⅰ解答・解説
問 3:正解(ア)
「整形式(well-formed)の XML 文書」とは,形式が整えられている…すなわち
XML 文書としての形式が整っている,ルールや文法を守っている,間違っていな
い XML 文書だということを示している。XML 文書は,タグを自由に設定できる
という HTML にないメリットがあるのだが,その一方で,もちろん表記ルール(文
法)も存在する。その文法に従ってアプリケーションも XML を解釈するので当然
といえば当然だ。整形式の XML 文書でなければ致命的エラーになるので,そうい
う意味では,すべての XML 文書は,整形式の XML 文書だといえる。
しかし,それは,ある意味,最低限で表面的な形式が整えられただけだともいえ
る。そこで,必要に応じて,もう少し厳しいルールを課すことにした。それが“妥
当な XML 文書”だとイメージしておけば良いだろう。正確には,XML 文書の中
に DTD(Document Type Definition)が存在し,その DTD に適合しているもの
を“妥当な XML 文書”という(DTD が存在しないか,適合していないものは,
妥当な XML 文書ではなく,整形式の XML 文書になる。もちろん前述のとおり,
XML の最低限のルールを守っているものに限るが)
。
以上の知識をもとに選択肢を順番に見ていくと,選択肢ア以外は,どれもそれだ
けでは“妥当な XML 文書”かどうかは判断できない。したがって正解はアになる。
問 4:正解(エ)
誤り検出・訂正方式に関する問題。問題文の「2 ビットの誤りを検出し,1 ビッ
トの誤りを訂正するために用いるもの」は,選択肢の中でいうとハミング符号にな
る。したがって,エが正解になる。
ア:パリティチェック(→用語集)とは,元のデータ(2 進数)に“検査ビット
=パリティ”を付与することで,誤りがあるのかどうかをチェックする方法
である。このうち,偶数パリティは,個々のブロックの合計値が“偶数”に
なるようにパリティを付加する方法。奇数にしたものは奇数パリティとい
う。偶数パリティだけでは,1 ビットの誤りを検出できるだけで,2 ビット
の誤り検出も,1 ビットの誤り訂正機能もない。したがって誤り。
イ:垂直パリティは,1 文字を一つの単位としてパリティを付与していく方法。
偶数パリティ同様,2 ビットの誤り検出も,1 ビットの誤り訂正機能もない。
したがって誤り。
ウ:チェックサムとは,その名のとおり,
(一定のブロックごとに)合計値(Sum)
をとって,どのブロックに誤りがないかどうかをチェックする方法。合計値
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5
PM-H22 午前Ⅰ解答・解説
で判断するため,誤りがない場合はそれを確認できるが,誤りがあった場合
は,どのビットが誤りなのかはわからない(当然,訂正もできない)。した
がって誤り。
前
後
100010101110001111000001…
1 文字(パリティ 1 ビットを含む 8 ビット)ごとに区切って取り出す
文字ごとに付与
1 文字目 : 1 0 0 0 1 0 1 0
→ 垂直パリティ
2 文字目 : 1 1 1 0 0 0 1 1
→ 垂直パリティ
3 文字目 : 1 1 0 0 0 0 0 1
→ 垂直パリティ
…
7 文字目 : 1 0 0 0 0 1 0 1
→ 垂直パリティ
8 文字目 : 1 1 0 1 0 0 1 0
↓↓↓↓↓↓↓↓
水平パリティ
各ビットごとに付与
問 5:正解(ウ)
稼働率を計算させる問題。MTBF と MTTR が問題文で提示されているため,そ
れを元に稼働率を計算すれば良い。ただし,この問題文の表現だと,MTBF +
MTTR を合わせて 100 時間だと解釈するのが妥当だろう。その場合,機器交換前
の MTBF は 96 時間(100 時間− MTTR 4時間)
,機器交換後 99 時間(100 時間
− MTTR 1時間)になるだろう。したがって次のように計算できる。この問題に
限っては MTBF を 100 で計算しても答えは同じ(小数第3桁を四捨五入)になる
ので問題はないが,どちらともとれる曖昧な表現のときには注意しよう。
【機器交換前の稼働率】
稼働率 =
100 時間−(2 時間 ×2 回)
96
= …① 100
100 時間
【機器交換後の稼働率】
稼働率 =
99
100 時間−(1 時間 ×1 回)
= …② 100
100 時間
【稼働率の向上分】
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②−① =
99
96
6
−
= 0.03
100
100
PM-H22 午前Ⅰ解答・解説
稼働率 =
99
100 時間−(1 時間 ×1 回)
= …② 100
100 時間
【稼働率の向上分】
②−① =
99
96
−
= 0.03
100
100
正解はウになる。
問 6:正解(エ)
ファイル領域の割り当てに関する問題。問題文にある条件のとおりに媒体 A,B,
C に順番に割り当てていけば良いだけ。
① 90MB のファイル → 条件
(4)
より,媒体 A に割り当て A = 90,B = 0,C = 0
② 30MB のファイル→ 条件
(1)
(4)
より,媒体 B に割り当て A = 90,B = 30,C = 0
③ 40MB のファイル → 条件
(1)
より,媒体 C に割り当て A = 90,B = 30,C = 40
④ 40MB のファイル → 条件
(1)
より,媒体 B に割り当て A = 90,B = 70,C = 40
⑤ 70MB のファイル → 条件
(1)
より,媒体 C に割り当て A = 90,B = 70,C = 110
⑥ 30MB のファイル→ 条件
(1)
より,媒体 B に割り当て A = 90,B = 100,C = 110
割り当てた領域の総量が大きい順に並べると「C,B,A」になるので,正解はエ
になる。
問 7:正解(ア)
プログラミングツールの機能に関する基本的な問題。選択肢を順番に見ていく。
ア:プログラミングツールのインスペクタ(→用語集)は,データ内容を表示さ
せる機能のことをいう。したがって,これが正解。
イ:
「実行経路を表示する」のはトレーサ(→用語集)の説明であり,シミュレ
ータ(→用語集)ではない。
ウ:この説明に該当するのはトレーサでないことは容易にわかるが,この説明が
何を指すのかが難しい。開発プラットフォームの基本機能のようにも思える
からだ。他には,選択肢(エ)の「ブラウザ」機能だとも考えられる。
エ:この説明はエディタである。したがって誤り。
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PM-H22 午前Ⅰ解答・解説
問 8:正解(エ)
メモリに関する問題。DRAM と SRAM の違いについて問われている。
ア:高速なアクセスができるのは SRAM の方なので誤り。
イ:リフレッシュ動作が不要なのは SRAM の方なので誤り。DRAM にはリフレ
ッシュ動作が必要。
ウ:内部構成が複雑なのも,ビット当たりの単価が高いのも SRAM の方なので
誤り。
エ:高集積化に適しているのは DRAM。これが正解。
問 9:正解(エ)
ユーザインタフェース設計時に行うユーザビリティ評価に関する問題。
“専門家”
が実施する評価方法は,選択肢ウの認知的ウォークスルー法と,選択肢エのヒュー
リスティック評価法になる。このうち“経験則”を基にするのは,選択肢エのヒュ
ーリスティック評価法になる。
ア:回顧法(→用語集)
イ:思考発話法(→用語集)
ウ:認知的ウォークスルー法(→用語集)
エ:ヒューリスティック評価法(→用語集)
問 10:正解(イ)
PCM(→用語集)に関する問題。PCM そのものは符号化の一手法であるが,そ
の中の性質の一つで問題文のように「音の信号を一定の周期でアナログ値のまま切
り出す処理」に限定すると,それは選択肢イの標本化という。これが正解。
ア:暗号化は PCM とは無関係。
ウ:符号化は PCM 全体のこと。
エ:PCM では,標本化の後にアナログ値を数値データに変換するが,その処理
を量子化という。
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8
PM-H22 午前Ⅰ解答・解説
問 11:正解(エ)
E-R 図に関する問題。選択肢を順番に見ていく。
ア:
“銀行”表から“口座”表へのカーディナリティは,多対 1 ではなく,1 対多。
イ:“銀行”表と“口座”表との関係は 1 対多なので,
“銀行”表の中には外部キー
は存在しない。
“口座”表の中に,
“銀行”表を参照する外部キーが存在する。
ウ:
“口座”表から“顧客”表へのカーディナリティは,1 対多ではなく,多対 1。
エ:
“口座”表から見た“銀行”表,
“顧客”表は,ともに多対 1。したがって“口
座”表には,
“銀行”表と“顧客”表を参照する外部キーがそれぞれ必要に
なる。正解。
問 12:正解(ウ)
データベースに関する問題。ロールフォワード(→用語集)に関する記述を選択
肢から探す。
ア:ロールフォワードは,更新後のログ情報によって回復する。誤り。
イ:プログラムを再実行することで回復を図るのはロールバック。誤り。
ウ:正しい。
エ:全く関係ない記述。誤り。
問 13:正解(エ)
ネットワーク機器に関する総合問題。この記述は,選択肢エのプロキシの説明で
ある。
ア:DMZ(→用語集)
イ:IP マスカレード(NAPT)
(→用語集)
ウ:ファイアウォール(→用語集)
エ:プロキシ(→用語集)
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9
PM-H22 午前Ⅰ解答・解説
問 14:正解(イ)
LAN アナライザに関する問題。ミラーポート(→用語集)に接続するという前
提条件も大きなポイントになる。選択肢を順番に見ていく。
ア:LAN アナライザで測定中にパケットを破棄することはないので,測定対象
外のコンピュータの利用を制限しておく必要はない。誤り。
イ:正しい。
ウ:LAN アナライザを悪用すると盗聴に使うことができる。そのため,誰もが
自由に利用できるようにしておくのは問題である。保管場所や使用方法も,
必要最小限の人にだけにしか周知しない方が良い。
エ:LAN ケーブルを切断して接続する運用もあるかもしれないが,普通はそん
なことはしない。特に今回は“ミラーポート”を用意するという記述がある。
それに,確かに LAN ケーブルを切断するなら利用者に対して測定日を事前
に知らせておく必要もあるが,そうでなければ知らせる必要さえもない。
問 15:正解(ア)
攻撃手法の一つ SQL インジェクションに関する問題。選択肢を順番に見ていく。
ア:これが SQL インジェクション(→用語集)の説明。正解。
イ:この攻撃は,クロスサイトスクリプティング(→用語集)の説明。誤り。
ウ:ワームやウイルスの説明。誤り。
エ:この攻撃は,クロスサイトスクリプティング(→用語集)の説明。誤り。
問 16:正解(ウ)
UML2.0 に関する問題。この説明は,選択肢ウのシーケンス図のこと。
ア:アクティビティ図(→用語集)
イ:コミュニケーション図(→用語集)
ウ:シーケンス図(→用語集)
エ:ユースケース図(→用語集)
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PM-H22 午前Ⅰ解答・解説
問 17:正解(ア)
CMMI(→用語集)に関する問題。この説明は,CMMI である。したがって,ア
が正解になる。
イ:COBIT(→用語集)
ウ:ITIL(→重要キーワード)
エ:ITSS(→用語集)
問 18:正解(イ)
プロジェクトライフサイクルに関する問題。選択肢を順番に見ていく。
ア:ステークホルダがプロジェクト完成時のコストに対して及ぼす影響度合い
は,プロジェクトの期間で変わるものではない。一概に,終盤が最も高いと
はいえない。したがって誤り。
イ:
「プロジェクト目標を達成できないリスク」は,プロジェクトの開始時であ
り不確実性の度合いが最も高い。したがって,この記述は正しい。
ウ:要員の必要人数が最大になるのは,通常は,プロジェクト中盤のプログラミ
ング工程になる。開始時,終盤はそれよりも少なく,山のような形になる。
したがって,
「開始時点」ではないので誤り。
エ:変更やエラー訂正のコストは,プロジェクトの初期段階が最も高いのではな
く,初期段階が最も低く,プロジェクトが進行するにつれ高くなっていく。
誤り。
©2010 Yasuyuki Miyoshi
11
PM-H22 午前Ⅰ解答・解説
問 19:正解(ウ)
PERT 図,アローダイアグラムに関する問題。作業 E の最遅開始日を求めるに
は,①全経路の日数を算出しその中で最長の経路(クリティカルパス)を明確にす
る。その後,②作業 E をいつまでに終了すれば良いのかを考えて,③そこから作業
E の最遅開始日を求める。
この図のクリティカルパスは,以下のように求める。経路は全部で三つ。
経路 1:A → B → E → G(16 日)
経路 2:A → B → D → F → G(20 日)……最長なので,これがクリティカルパス
経路 3:A → C → F → G(16 日)
続いて,クリティカルパスの値をもとに,後工程から順に最遅開始日を求めてい
く。この問題では,基点を 0 日にするのか 1 日にするのかの記載がないため,厳密
に言うと,両方の可能性を視野に入れて計算する必要がある。まずは,基点を 0 日
とする。作業 G の最遅開始日は 17 日になる。遅くとも 17 日には着手しなければ
ならないというわけだ。作業 E は 4 日間なので,少なくとも 17 日には完了してい
なければならないとすると,着手は 13 日で良い。一方,基点日を 1 日目とする場
合,下の図のように 1 日増える。しかし,選択肢には 14 日はないので,基点日は
0 日なのだろう。したがって正解はウになる。
(A)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
(B)
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
作業 A:3 日間
作業 B:6 日間
作業 E:4 日間
再早開始日
20
作業 G:3 日間
再遅開始日
※(A)の場合,基点を‘1 日目’として,1 日目の朝に作業が始まり,夜に終了する。後続作業は原則朝から
実施するようなケースになる。
※(B)の場合,基点を‘0 日目’として,1 日分の作業が完了したことを持って 1 日をカウントする。後続作業は,
作業直後その日から始まるようなイメージに近い。
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12
PM-H22 午前Ⅰ解答・解説
問 20:正解(ウ)
ITIL(→重要キーワード)に関する問題。問題管理プロセスの目標が問われて
いる。選択肢を順番に見ていく。
ア:変更管理の説明。誤り。
イ:インシデント管理の説明。誤り。
ウ:これが問題管理プロセスの目標。正解。
エ:サービスデスクの説明。誤り。
問 21:正解(ア)
バックアップに関する問題。具体的なイメージを描いて考えれば良い。例えば,
これまで 1 週間に 1 回のフルバックアップを,2 週間に 1 回のフルバックアップに
変更したとしよう。データベースの中に存在するデータそのものの量は,問題文の
記述だと大きく変わらない。しかし,ジャーナル情報は追加・変更・削除のいずれ
においても作成される。そのため,バックアップ期間に比例して量が増える可能性
が高い。そうした考えを基に,選択肢を順番に見ていく。
ア:例えば,1 週間に 1 回フルバックアップを実施しているのであれば,ジャー
ナルは 1 週間分になるが,これが 2 週間に 1 回のフルバックアップになる
と,2 週間分のジャーナルになる。したがって,平均すると約 2 倍になるの
で,これが正しい。
イ:問題文に「追加・変更・削除が一定の頻度で行われている」ので,データ量
そのものは変わらない。少なくとも,2 倍にはならないだろう。そうなると
磁気テープ使用量も 2 倍にはならない。誤り。
ウ:上記同様,データ量が半分になることはなさそうなので,磁気テープ使用量
が半分になることはない。誤り。
エ:上記同様,データ量が 2 倍になることもないので平均実行時間が 2 倍になる
こともない。
問 22:正解(ウ)
システム監査に関する問題。受入テストの適切性について問われている。平成
16 年策定のシステム管理基準では,
「Ⅲ.開発業務の 5. システムテスト・ユーザ受
入れテスト」で,次のように 13 項目が定められている。
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13
PM-H22 午前Ⅰ解答・解説
5. システムテスト・ユーザ受入れテスト
(1)
システムテスト計画は,開発及びテストの責任者が承認すること。
(2)
ユーザ受入れテスト計画は,ユーザ及び開発の責任者が承認すること。
(3)
システムテストに当たっては,システム要求事項を網羅してテストケ
ースを設定して行うこと。
(4)
テストデータの作成及びシステムテストは,テスト計画に基づいて行
うこと。
(5)
システムテストは,本番環境と隔離された環境で行うこと。
(6)
システムテストは,開発当事者以外の者が参画すること。
(7)
システムテストは,適切なテスト手法及び標準を使用すること。
(8)
ユーザ受入れテストは,本番同様の環境を設定すること。
(9)ユーザ受入れテストは,ユーザマニュアルに従い,本番運用を想定し
たテストケースを設定して実施すること。
(10)
ユーザ受入れテストは,ユーザ及び運用の担当者もテストに参画して
確認すること。
(11)
システムテスト及びユーザ受入れテストの結果は,ユーザ,開発,運
用及び保守の責任者が承認すること。
(12)
システムテスト及びユーザ受入れテストの経過及び結果を記録及び保
管すること。
(13)
パッケージソフトウェアを調達する場合,開発元が品質テストを実施
したことを確認すること。
本来ならば,これらを頭に入れて解答すべきだが,それもなかなか難しいと思う
ので,受入テストはユーザ側主導のテストで,開発者側の最終確認であるシステム
テストの後に行われるものだと大きくとらえ,上記の下線部を中心に覚えておく程
度で良いだろう。それを念頭に選択肢を順番に見ていく。
ア:ユーザ受入テストは,その名称どおりユーザ(委託者)が行うテストである。
したがって誤り。
イ:受入テスト計画書は,ユーザ側(委託者)が作成する。誤り。
ウ:正しい。
エ:受入テストにおいて,監査人が直接テスト計画を作成することはない。誤り。
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14
PM-H22 午前Ⅰ解答・解説
問 23:正解(ア)
SaaS(→用語集)に関する問題。選択肢を順番に見ていく。
ア:これが SaaS の説明である。正解。
イ:ERP パッケージ(→重要キーワード)の説明。
ウ:BPR(→用語集)の説明。
エ:SLA(→重要キーワード⑪)の説明。
問 24:正解(エ)
投資対効果の評価指標に関する問題。この問題の説明は ROI(→用語集)になる。
したがって,エが正解になる。
ア:EVA(→用語集)。
イ:IRR(→用語集)。
ウ:NPV(→用語集)
。
問 25:正解(エ)
RFP(→第 7 章参照)に関する問題。選択肢を順番にチェックしていく。
ア:工程ごとの各種作業の完了時期は,ベンダに一任する必要はない。
,自分た
ちの都合に合わせる必要があるところは,その旨を RFP に記述しておけば
良い。誤り。
イ:特にそういう決まりはない。誤り。
ウ:絶対にないとはいえないかもしれないが,通常は,プログラム仕様書を
RFP に添付することはない。機密管理上からも問題だし,RFP を提示する
段階でプログラム仕様書が完成しているケースは,ごくごく限られていると
思う。誤り。
エ:RFP を提示する段階で決まっている要件に関しては,それを機能要件と非
機能要件にまとめて提示することが望ましい。したがって,これが正解。
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15
PM-H22 午前Ⅰ解答・解説
問 26:正解(ア)
企業の競争戦略に関する問題。チャレンジャ戦略は,コトラーが提唱する競争戦
略の一つ。コトラーは,マーケットにおける自社のポジションによって採るべき戦
略(競争戦略)を決めるように提唱している。
業界トップ :リーダ戦略(シェアの維持に加えて市場拡大を狙う。全方位戦略)
業界 2・3 番手:チャレンジャ戦略(積極的にトップのシェアを狙う。差別化戦略)
フォロワ戦略(消極的。トップのシェアを狙わない。戦略を模倣
する)
ニッチャー :ニッチ戦略(すきま市場を狙う。専門化)
したがって,正解はアになる。
イ:ニッチ戦略の説明。
ウ:フォロワ戦略の説明。
エ:リーダ戦略の説明。
問 27:正解(イ)
技術の S カーブとは,技術の進歩の過程を表すものである。立ち上がり当初は進
歩は緩やかだが,やがて急激に進歩し,その後成熟期を迎えて停滞してくる。その
様子が“S 字”になっているためそう呼ばれている。技術の S カーブというと聞き
慣れないかもしれないが,バグの成長曲線と同様に考えれば難しくもないだろう。
解答に当たっては,選択肢を順番に見ていく。
ア:“技術の期待感の推移”ではない。誤り。
イ:正しい。
ウ:“生産量と生産性の関係を表すもの”ではない。誤り。
エ:“故障発生の傾向を表すもの”ではない。故障発生を表すのは故障率曲線と
いいバスタブ型になる。誤り。
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問 28:正解(エ)
IC タグに関する問題。選択肢を順番に見ていく。
ア:GPS 受信機の説明。IC タグに GPS を受信する機能はない。誤り。
イ:大量の情報は無理だが,IC チップの中に入る程度の情報は IC タグに持たせ
ることが可能。誤り。
ウ:専用の読取り装置に“挿入”しなくても,非接触で読み取ることが可能。誤
り。
エ:正しい。
問 29:正解(イ)
財務会計に関する問題。営業利益は,売上高,売上原価,販売費及び一般管理費
から計算する。
1,500 − 1,000 − 200 = 300
したがって,正解はイになる。
問 30:正解(エ)
著作権法に関する問題。
“適法”の行為が問われている点に注意。選択肢を順番
に見ていく。
ア:著作権法第 113 条で「プログラムの著作物の著作権を侵害する行為によつて
作成された複製物を業務上電子計算機において使用する行為は,これらの複
製物を使用する権原を取得した時に情を知つていた場合に限り,当該著作権
を侵害する行為とみなす。
」とある。したがって「事前に知りながら入手」
したので違法である。
イ:複製に関しては,私的利用やバックアップ目的等のみ可能で,社内教育用で
あっても業務利用には変わりないため,違法である。
ウ:著作権法第 15 条で「法人その他使用者(以下この条において「法人等」と
いう。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著
作物(プログラムの著作物を除く。
)で,その法人等が自己の著作の名義の
下に公表するものの著作者は,その作成の時における契約,勤務規則その他
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に別段の定めがない限り,その法人等とする。」とされている。つまり,職
務著作は,別途契約をしない限り法人に帰属し,作成した担当者に著作権は
ない。そのため,独断で複製し協力会社に貸与すると違法になる。
エ:著作権法第 47 条の 3 で「プログラムの著作物の複製物の所有者は,自ら当
該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度におい
て,当該著作物の複製又は翻案(これにより創作した二次的著作物の複製を
含む。)をすることができる。ただし,当該利用に係る複製物の使用につき,
第百十三条第二項の規定が適用される場合は,この限りでない。
」とある。
具体的には,バックアップや効果的に利用できるようにする改造(チューニ
ング)である。これは著作権法で認められている改変。適法である。
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