世界に広がる日本の食文化

特集
世界に広がる日本の食文化
∼ 宝酒造の海外酒類事業と海外日本食材卸事業 ∼
近年、世界的な健康志向の高まりなどから、和食への注目が集まっています。
2013年には
「和食;日本人の
伝統的な食文化」
がユネスコ無形文化遺産に登録されたこともあり、国をあげて日本の食文化を広める取り組
みが積極的に行われています。
この和食人気に伴って、日本伝統の酒である清酒、焼酎といった
「和酒」
も和食をひきたて、日本の食文化に
彩を添えるものとして関心が高まっています。今回の特集では 世界に広がる日本の食文化 をテーマに、
宝酒造の海外事業の2本柱である和酒や洋酒の製造・販売を行う
「海外酒類事業」
と、日本の食材などを現地
のレストランや小売店などに販売する
「海外日本食材卸事業」
についてご紹介します。
高まる和食人気と清酒の需要
日本食レストランや清酒を取り扱う小売店等の広が
りとともに、清酒の輸出量はこの5年で約140%、当社
の海外販売数量も同等に伸長しており、今後もますま
す清酒の需要が拡大していくものと思われます。
また、伝統的な造りの清酒だけでなく、時流に合わ
せた新感覚の清酒、松竹梅白壁蔵
「澪」
スパークリング
清酒は海 外でも好評で、輸出国も20カ国以上に広
がっており、国内だけでなく海外への広がりにも期待
しています。
このような中、宝酒造の海外酒類事業は輸出のほか、
アメリカと中国では現地での清酒「松竹梅」やみりん
などの 製 造・販 売を行 い 、日本に勝るとも劣らない
「おいしさ」
と
「安全・安心」の両面で高品質の酒づくり
に取り組んでいます。
● 清酒の輸出量の推移(1∼12月)
(㎘)
20,000
(百万円)
12,000
数量
(左軸)
● 宝酒造の販売数量(輸出・海外生産量)の推移
(1∼12月)
(㎘)
8,000
金額
(右軸)
海外生産
7,000
15,000
9,000
輸出
6,000
5,000
10,000
6,000
4,000
3,000
5,000
3,000
2,000
1,000
0
09
2009 2010 2011 2012 2013 2014
0
(出所:財務省統計局)
CSR Report 2015
0
2009 2010 2011 2012 2013 2014
日本に負けない米国宝酒造の酒づくり
安全・安心と品質へのこだわり
全国新酒鑑評会で12年連続金賞受賞している宝酒造の
酒蔵「松竹梅白壁蔵」
( 神戸市灘区)。その「白壁蔵」
を長年
率いてきた仲 義博。米国宝酒造の社長としてアメリカに
おける清酒づくりの最前線に立つ現在、アメリカの清酒
市場や米国宝酒造の取り組みについて話を聞きました。
アメリカにおける清酒ファンは近年確実に増えていると
感じます。アメリカで清酒を提供する日本食レストランが
登場した当時は日本人相手が中心でしたが、今では多く
の アメリカ人 の 方 が 日 本 食レストランを 一 人 で 訪 れ、
食中酒として清酒を楽しんでいる姿を見かけます。また、
昔は温めて飲む ホット・サケ が中心でしたが、今では吟醸
酒が冷やして飲まれるほか、にごり酒やライチなどの香り
米国宝酒造株式会社 社長 仲 義博
をつけたフレーバー酒など、現地の食文化やニーズに合わ
せてさまざまな清酒が楽しまれるようになっており、人気
酒が生まれています。味と香りのバランスがとてもよく、
とともに飲まれるお客さま側の知識も深まってきている
どこに持っていっても、誰もが ワンダフル! おいしい!
と感じます。
と喜んでくれるのです。その人気には私も驚かされました。
そんな清酒を現地でつくることができた今、米国産の清酒
宝酒造はアメリカで30年以上にわたり清酒づくりに取
は今後もさらに評価される可能性を秘めていると感じて
り組んできました。基本的な製造工程はもちろん、設備や
います。
機械は日本から持ち込んでいるため、日本国内と大きな
違いはありませんが、米、米麹、水などの原料は現地のも
また、米国宝酒造で清酒づくりを紹介する展示スペース
のを使います。日本で培われた技術を用い、現地の原料に
「酒ミュージアム」
と
「テイスティングルーム」
は、年間約1万
適した条件を試行錯誤し日本と同じように厳しく品質管理
人の方にご来場いただいています。今後も日本の食文化
することによって、米国でも日本産の清酒と遜色ない品質
としての清酒の本質を知っていただく活動をすすめ、米、
に仕上げる努力を重ねています。
米麹、水のみで造る伝統の酒づくりに真摯に取り組むとと
清酒づくりや品質管理を丁寧に行ってきたことで、米国
もに、現地で製造しているからこそわかる、消費者のニーズ
宝酒造創立30周年
(2013年)
の折には、素晴らしい大吟醸
に応えたより良い商品づくりに取り組んでいきます。
テイスティングルーム
● 米国宝酒造の主な商品ラインアップ
左から松竹梅クラシック、松竹梅にごり酒、
フレーバー酒「HANA」
〈フジアップル〉、松竹梅純米大吟醸
酒ミュージアム
CSR Report 2015
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日本の食文化を世界に届けたい
日本の食文化を世界に届けたい
宝酒造では海外の日本食レストランや小売店に、日本の食材などを販売する
「海外日本食材卸事業」
に取り組んでいます。
ここでは伸長著しい、欧州での取り組みを中心にご紹介します。
おいしさとヘルシーさを兼ね備えた「和食」の人気が
店に販売する
「海外日本食材卸事業」を展開しています。
各国で高まり、海外での日本食レストラン数は約10年前
2010年にフランスのフーデックス社の株式を取得して
に比べると2倍以上に増加しています。中でも欧州には
海外日本食材卸事業に本格参入し、その後イギリスの
日本食レストランが約5,500店舗あると言われており
タザキフーズ社とスペインのコミンポート社をパートナー
(2013年度:農林水産省推計)
、寿司や天ぷらなどの手軽
に加え、欧州で最大規模となる海外日本食材卸グループ
に食べられる和食を取り扱うレストランを中心に、店舗
となりました。宝酒造では今後もそれぞれの国や地域の
数が増加しています。
市場特性に合わせた活動を展開し、
「 海外酒類事業」と
こうした世界的な和食人気の中、宝酒造では和食を
「海外日本食材卸事業」の 両事業を拡大するとともに
つくるために必要な米、のり、
しょう油、お酢などのさま
さらなる日本の食文化の普及に取り組んでいきます。
ざまな和の食材や周辺商材を現地のレストランや小売
● 海外における日本食レストランの数の推移
● 宝酒造グループ海外連結売上高・日本食材卸売上高推移
(店)
60,000
(百万円)
30,000
50,000
25,000
40,000
20,000
30,000
15,000
20,000
10,000
10,000
5,000
0
宝酒造グループ全体
日本食材卸事業
0
2006
2010
2013
(年度)
(出所:農林水産省推計)
2009
2010
2011
2012
2013
2014
(年度)
宝酒造グループのヨーロッパにおける海外日本食材卸事業の拠点
タザキフーズ
(イギリス)
コミンポート
(ポーランド)
フーデックス
(ベルギー)
フーデックス
フーデックス
(スイス)
(フランス)
フーデックス
(イタリア)
フーデックス
(南仏)
コミンポート
(スペイン)
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CSR Report 2015
世界に広がる日本の食文化
特集
∼ 宝酒造の海外酒類事業と海外日本食材卸事業 ∼
ここでは、日本食材卸会社のそれぞれの取り組みについてご紹介します。
フーデックス(フランス)
タザキフーズ社が所有する日本食材のプライベートブラ
1992年にパリで創業以来、スイス、イタリア、フランス
ンド Yutaka はイギリスの大手スーパーチェーン店で
南部、ベルギーへと拠点を拡大し、現在はフランス最大規
取り扱いが進んでおり、現地の方が手軽に入手できる日本
模の日本食材卸会社として各国の日本食レストランを中
食材として、和食がイギリスの家庭に浸透するきっかけと
心に食材を届け、欧州における日本食市場の着実な成長
なっています。
を支えています。
また現地の大学や在英大使館で行われる日本食イベン
食の都パリでも和食は浸透してきており、
近年では、
寿司
トに参加するなど、日本の食文化の普及活動にも積極的
や天ぷらといった従来からの人気メニューに加え、焼き鳥、
に取り組んでいます。
ラーメン、
うどんなどの専門店も増え、
幅広い和食の人気が
高まっています。また飲食店だけでなく、おしゃれなテイク
コミンポート(スペイン)
アウト寿司のチェーン店が街角や現地大手スーパーにも
スペインのマドリードに本拠を置き、バルセロナと地中海
目立ち、
和食がより身近な食として広がりを見せています。
沿いの都市アリカンテにも支店を持つスペイン最大規模の
今後も欧州各国に拠点を持つ幅広い販売網を活かし、
日本食材卸会社です。
さらなる日本食市場の拡大をめざします。
豊かな食文化で知られるスペインでも和食人気は高まっ
ており、マドリードにはミシュランでも高く評価されている
タザキフーズ(イギリス)
日本食レストランもあります。他にも高級店から大衆店ま
ロンドンに本拠を置くイギリス最大規模の日本食材卸
で多くの日本食レストランがあり、
コミンポート社が日本や
会社で、
1978年の創業以来、
30年以上にわたりイギリスの
世界各国から調達した食材を供給しています。
日本食市場を牽引してきました。2013年に宝グループに
また2011年にはポーランドにも拠点を開設し、さらなる
加わり、フーデックス社やコミンポート社とも連携し、欧州
和食の普及・拡大に貢献しています。
における和食の普及・拡大の一翼を担っています。
人気のテイクアウト寿司チェーン店
大手スーパー内に並ぶ「Yutaka」ブランド
商談の様子
VOICE
「お米20㎏1袋、てんぷら粉1袋、西京味噌3㎏、白ごま1袋、わかめ2袋、たこやき2袋、刻みゆず
2袋、生わさび2本、澪6本、以上でご注文はよろしいでしょうか」このような注文のやり取りが、
英語、日本語、時には中国語で日々繰り返されています。
私の主な業務は、
レストランや小売店向けに日本食材や清酒などを販売
することで、在英国日本大使館や英国の大学で行われる日本食イベントに
も参加し、日本食の普及活動に取り組んでいます。タザキフーズでは
1,000種類以上の食材と150種類以上のお酒を販売しており、最近ロン
ドンでは現地有名レストランやスーパーで「ゆず」が注目されています。
ゆずが YUZU として現地の方に認知されているのは日本人として嬉しい
タザキフーズ社
限りです。今後も日本食材はより広がる可能性を秘めており、ゆず以外の
安東 政文
さまざまな日本食材が英国で活躍できると期待しています。
YUZUソース
CSR Report 2015
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