重症アルコール性肝炎に対する薬物治療の有効性の比較検討:系統 的レビューとネットワークメタ解析#1 Comparative Effectiveness of Pharmacological Interventions for Severe Alcoholic Hepatitis: A Systematic Review and Network Meta‐analysis Gastroenterology. 2015;149:958‐970. 【研究の背景と目的】 重症のアルコール性肝炎の死亡率は高い.我々は、重症アルコール性肝炎に対する 薬物治療の有効性を,ネットワークメタ解析によって直接また間接的に比較評価し た. 【方法】 2015 年 2 月に系統的文献レビューを行い,discriminant function ≥32 and/or 肝性脳症 .. を認めた,重症の成人アルコール性肝炎患者を対象とした,ランダム化比較試験を抽 出した.これらの試験では,コルチコステロイド,ペントキシフィリン,および N‐ア セチルシステインを,単独,プラセボとの比較,或いは相互に併用して,薬物治療が 行われた.主要アウトカムは短期死亡率の低下,二次アウトカムは中期死亡率,急性 腎障害,感染症の減少に設定して,評価した.すべての治療法について,直接ネット ワークメタ解析とベイジアンネットワークメタ解析#2を行い,エビデンスの質#3も評価 した. 【結果】 5 種類の治療法,22 のランダム化比較試験(2621 名の患者)が検索された.直接メ タ解析では,短期死亡率を低下させたのはコルチコステロイドだけであった.ネット ワークメタ解析では,コルチコステロイド単独投与,コルチコステロイドとペントキ シフィリン,およびコルチコステロイドと N‐アセチルシステインの併用が,短期死亡 率を低下させる中等度レベルのエビデンスがあった(順に,相対リスク[RR] 0.54; 95% 信頼区間[CI] 0.39‐0.73,RR 0.53; 95%CI 0.36‐0.78,RR 0.15; 95%CI 0.05‐0.39) .ペントキ シフィリンは低エビデンスレベルで,短期死亡率を減少させた(RR 0.70,95%CI 0.50‐ 0.97) .N‐アセチルシステインとコルチコステロイドの併用は,コルチコステロイド単 独よりも短期死亡率の低下効果が優れていたが,N‐アセチルシステインとペントキシ フィリン,或いは N‐アセチルシステインとコルチコステロイドの併用ではこの効果は 見られなかった.中期死亡率を減少させた治療法は確認できなかった.不正確な統計 的推計や,直接比較試験のサンプル数が少なかったことで,比較の信頼性が低下する 場合が見られた. 【結論】 重症アルコール性肝炎の患者の短期死亡率は,ペントキシフィリン,コルチコステ ロイド(単独投与,ペントキシフィリンか N‐アセチルシステインとの併用)の投与 によって減少した.中期死亡率を減少させる治療法はなかった. #1 3 種類以上の複数の治療法を同時に比較するメタ解析.ネットワークとは重み付けグラフのこと. #2 複雑な因果関係の推論を有向非巡回グラフ構造により表すとともに、個々の変数の関係を条件つき確 率で表す確率推論のモデル. #3 Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation criteria を使用した. 1
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