橈骨遠位端骨折術後患者における自主訓練量と患者特性・治療成績との関連性 ○田中楓 1 2 山﨑宏 小林勇矢 1 相澤病院運動器疾患リハセンター1 櫻井利康 1 相澤病院運動器疾患センター手外科センター2 【緒言】橈骨遠位端骨折の術後における自主訓練は有用との報告があるが,自主訓練量が 治療成績に与える影響については不明である. 【目的】橈骨遠位端骨折術後の自主訓練量が治療成績に影響を与えるか調査した. 【 対 象 】掌 側 ロ ッ キ ン グ プ レ ー ト 固 定 を 行 っ た 50 例 を 対 象 と し た .男 12,女 38,平 均 年 齢 64 歳 ,骨 折 型 は 関 節 外 10 例 ,関 節 内 40 例 ,利 き 手 受 傷 22 例 で あ っ た .自 主 訓 練 は 術 直後から 6 週まで行った.プロトコールは,指の自動・他動運動,肩関節の自動運動,前 腕の自動運動,手関節の自動・他動運動,ペットボトルを持って掌背屈・等尺屈運動 ,手 関節の等尺性運動を術後経過期間に応じて組み合わせたものを作成し,1 日の自主訓練量 は患者が記録した. 【 方 法 】 1)自 主 訓 練 量 に 関 連 す る 因 子 を 求 め る た め に , 重 回 帰 分 析 を 行 っ た . 説 明 変 数 は 患 者 因 子 (年 齢 , 性 別 , 利 き 手 , 骨 折 型 )と し た .2)治 療 成 績 に 自 主 訓 練 量 が 関 連 す る か 求 め る た め に ,重 回 帰 分 析 を 行 っ た .目 的 変 数 は 術 後 12 週 で の Disability of the Arm,Shoulder and Hand(DASH)と Patient-Rated Wrist Evaluation The Japanese Version(PRWE)と し , それぞれ,説明変数は上記患者因子と自主訓練量とした. 【 結 果 】1)自 主 訓 練 量 と 関 連 す る 因 子 は 利 き 手 受 傷( p=0.03),女 性 (p=0.09)で ,自 主 訓 練 量 と 正 の 相 関 を 認 め た .2) DASH は 年 齢 が 関 連 し (p=0.003),高 齢 ほ ど 成 績 は 悪 か っ た .自 主 訓 練 量 は 関 連 が な か っ た . PRWE は ,性 別 が 関 連 し (p=0.03),男 性 ほ ど 成 績 は 悪 か っ た .年 齢 (p=0.08), 利 き 手 受 傷 (p=0.06)が 関 連 す る 候 補 で あ っ た . 自 主 訓 練 量 は 関 連 が な か っ た . 【 考 察 】 1)自 主 訓 練 量 は 利 き 手 受 傷 , 女 性 で 多 か っ た . 運 動 量 の 増 加 に よ り 改 善 が 期 待 で きる浮腫や筋力の改善に関して,非利き手受傷,男性では成績不良となる可能性があ り, 十 分 な 指 導 が 必 要 と 思 わ れ る . 2)今 回 の プ ロ ト コ ー ル に よ る 自 主 訓 練 の 量 で は 治 療 成 績 に 影響を与えてはいなかった.最善な自主訓練のプロトコールを立案するために, 自主訓練 の量や質を再検討する必要がある.また,成績不良が予想される症例では,自主訓練以外 の介入が,より重要となると推測される.
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