分かる喜びを大切にする英語活動 − G D M 教 授 法 を 取 り 入 れ た “ No Japanese ! ”− 光ケ丘小学校 1 渡 邉 明 代 はじめに 2011年度から完全実施の新学習指導要領が提示された。最大の改訂点は、学力 の向上を図るための授業時数増加を明確にした点と、現指導要領の目玉であった「総 合的な学習の時間」の削減及び扱いの変化が挙げられる。とりわけ、小学校5・6年 の英語活動については、従来の「総合的な学習の時間」の枠からはずれ、年間35時 間の必修扱いとなるなど、スムーズな小中連携を見据えた英語教育の性格をより明確 に打ち出している。小牧市においては、10年以上の小学校英語活動の実践から、高 学年における英語活動の問題点①ゲームや歌を中心とした英語活動では発達段階に応 じた知的好奇心に応えることが難しい②時数の増加でALTだけで英語活動を実施し ていくことは無理であるというようなことがあげられている。以上のことから、英語 活動を見直す絶好の機会と捉えて積極的に取り組みたいと考えた。 2 児童の実態 本校の児童は、1年生からALT主導の英語活動を定期的に行っている。ALTに よる英語活動は、ゲームや遊びを介して楽しみながら英語に親しむことをねらいとし ているため、4年生ぐらいまでは効果的であり、子どもたちも楽しく活動している。 現在の6年生(3クラス96名)も4年生までは、大きな声で活発に英語活動に参加 し、楽しむ姿が見られた。しかし、5年生になると、数年経験した慣れから興味・関 心を持続できず、意欲が低下し、参加態度も良好とはいえなくなった。その理由とし て、その場限りのゲーム中心の活動で終わってしまい、英語が身についたと実感でき る習得感がないことが考えられる。 私は、このような児童の実態を踏まえた上で、彼らの知的好奇心を刺激して、達成 感 や 成 就 感 を 実 感 さ せ な が ら 、意 欲・関 心 が 高 く な る 英 語 活 動 を 行 わ せ た い と 考 え た 。 そのためには、ただ単にリピートして丸暗記させるような活動ではなく、子どもたち が 自 ら 考 え 、言 葉 の ル ー ル を 見 つ け て い く 過 程 で 、 「 英 語 が 楽 し い 」と 思 わ せ る こ と が できるような活動が大切である。また、日常生活の動作を「英語で言える」という英 1 語活動本来の楽しさを体感させ、自己表現の場面を持たせたいと考えた。そこで、日 本 語 を 使 わ ず 、い ろ い ろ な 感 覚 で 学 ぶ G D M( Graded Direct Method)と い う 教 授 法 を英語活動に取り入れることにした。 3 GDM(段階的直接教授法)の導入 GDMのような認知的言語学習では、自分の立場で目の前のことを相手に伝えるこ と が 基 本 と な る 。 例 え ば 、 教 師 が 自 分 の 本 を 持 っ て 、 “This is my book.”と 言 っ て 、 それを児童がリピートするようなことはない。それは、現実と違うからである。教師 の 前 に い る 児 童 は 、 “This is your book.”で あ り 、 そ の 後 方 に い る 児 童 は 、 “That is your book.”と い う の が 事 実 で あ る 。こ の よ う に 常 に 、自 分 の 立 場 で 目 の 前 の 場 面 を 英 語で表現したり、理解したりしていく。友達がやっている様子を見たり、聴いたりし て考えていく楽しさがある。次は、何が出てくるのだろうという期待感もあるという 点などから、子どもたちの知的好奇心を刺激するGDM教授法は、高学年児童を対象 とした英語活動により適した手法であると確信して、取り入れることにした。 4 研究の仮説 G D M ( Graded Direct Method) 教 授 法 を 取 り 入 れ 、「 英 語 が わ か り 、 言 い た く な る 気 持 ち を 大 切 に す る 」「 気 づ い た こ と や 分 か っ た こ と を 認 め 合 う 場 を 工 夫 す る 」「 英 語が読める楽しさ、書ける喜びを実感する」ことに焦点をあてた英語活動を実践して いけば、積極的に英語を使い、コミュニケーションを図りながら、学び合っていく児 童を育てることができるであろう。 5 研究の実践 現在6年生の児童(3クラス96名)が、5年生の2学期から6年生の1学期(平 成19年9月∼20年7月)までの1年間で取り組んだGDM教授法による英語学習 を紹介する。 ( 小 学 校 で は 、英 語 活 動 と い う べ き で あ る が 、彼 ら が 1 年 間 で 学 ん だ 内 容 か ら 、 英 語 学 習 と 呼 ぶ の が 適 切 で あ る と 考 え 、 こ こ で は 、 あ え て 英 語 学 習 と 呼 ぶ 。) 2007年9月から、週1回の英語学習が始まり、2008年7月までに35回の 授 業 を 行 っ た 。 子 ど も た ち は 、 9 月 の 時 に は 、 恐 る 恐 る “ I、 You ”と 口 を 開 い て い たが35回目の授業では、GDM教授法による学習の特徴である、発言の時に指し示 す も の を 手 で 指 し 示 す 動 き を 自 然 と つ け な が ら 、 自 信 を 持 っ て “He will come to the board.” と 黒 板 の 前 で 言 う 子 ど も 、 歩 き な が ら “I am going to the board.”と 言 う 子 ど も 。 ま た 、 “He went to the board.” “He came to the board.”な ど 笑 顔 で 言 い 合 う 子 ど 2 も た ち の 成 長 ぶ り に は 、驚 く ば か り で あ る 。1 年 間 の 学 習 内 容 は 、web 小 牧 市 教 育 セ ンター、教科リンク小学校英語活動(西中 松浦先生授業実践)によるものである。 (1) 言いたくなる気持ち 子どもたちに、その動作を日本語で考えて、それを英語に直させるのではなく、 ま た 、言 わ さ れ る と 思 う の で も な く 、自 ら が「 言 い た い ! 」 「 わ か っ た ! 」と い う 感 覚を持たせることが大切である。 子どもたちが目の前で起きている場面を英語で伝えたいと思ったときに、既習の 内 容 で は「 言 え な い ! 」 「 な ん と 言 え ば い い の だ ろ う ? 」と 思 っ た 瞬 間 に 、新 し い 語・ 文 の 導 入 を す る 。( 4 ペ ー ジ で 具 体 的 に 説 明 す る ) 言 え な い と 思 っ た 瞬 間 に 、 ス ト レスを感じているはずである。このストレスと意欲は、裏表の関係といえる。児童 には動作を日本語で説明することなく、その流れの中で、どのように使われている のか理解していく力を養い、わかったときの成就感を持たせたいと考えた。 ア 1時間目のGDMの授業実践 1回目の授業では、子どもたちになぜ日本語を話さないで英語の授業を行うの か を 十 分 理 解 さ せ る こ と が 、G D M 教 授 法 で は 重 要 で あ る 。 「 私 た ち は 、親 か ら 言 葉を教えてもらい話せるようになったわけではなく、生活の中で自然に言葉を覚 え、表現できるようになってきた。今日は、絶対に日本語を話さないで、先生や 友達がやっていること見たり、言っている英語を聴いたりして、英語で表現する こ と を 約 束 し よ う 。」 と 授 業 の ね ら い を 理 解 さ せ た 。 「 I」「 You」 の 導 入 を 始 め た と き の 子 ど も た ち は 、 何 が 始 ま っ た の だ ろ う と 戸 惑いや不安を見せていたが、友達や教師の様子を見て柔軟な姿勢からすぐにとけ 込 み を 見 せ は じ め た 。こ の と き の 子 ど も た ち の「 知 り た い ! 」 「 わ か り た い ! 」と いう気持ちの表れは、教師の動きに合わせて姿勢を変え、目で追う視線の鋭さに あった。教師と子ども、子ども同士の活動では、笑顔で楽しく取り組むことがで き、理解できたことに対する充実感が十分伝わってきた。授業の終わりには、子 ど も た ち か ら「 こ の 授 業 は 、“No Japanese!”だ ね 。」と い う 言 葉 が 出 て き て 、英 語 だけを言おうという学級の雰囲気に包まれたことに驚かされた。 「 次 は 、い つ や る の?」と言った声が自然と上がり、新しいことを理解できた満足感と次への期待 感が子どもたちに表れていた。そのことが、私の次回への挑戦のエネルギー源に なったことも事実である。 3 イ 11 時 間 目 “in on”の 使 い 方 の 授 業 実 践 こ れ は 、11 回 目 の 授 業 で 、“in on”を 導 入 す る と き の 授 業 の 一 部 で あ る 。透 明 の箱の上にボールを、中にペンを入れて見せる。まず箱 を 指 差 す と 児 童 は 、 That is your box. と 言 う 。 次 に ボ ー ル を 指 差 す と 、 That is a ball. It is there. 同じよう に ペ ン を 指 差 す と 、 That is a pen. It is there.児 童 が 習 って知っている範囲の英語では、このボールとペンは、 It is there.と し か 言 え な く て 同 じ 文 で あ る 。 明 ら か に 箱 と の 関 係 は 同 じ で は な い の で「 お か し い な 、ど う 言 え ば い い ん だ ろ う ? 」と 思 っ た そ の 時 に 、This is a ball. It is on my box. This is a pen. It is in my box. と 、 今 ま で there と し か 言 え な か っ た 内 容 を in my box と on my box で 区 別 で き る こ と を 導 入 す る 。 児 童 は 、 以 前 A L T の 英 語 で 、 “in on by”等 を 使 っ た 活 動 を 行 っ て い た の で 、 私自身スムーズに授業が流れるという安心感をもっていた。児童は、自分の物を 使 っ て “in on”を 楽 し く 活 用 す る だ ろ う と い う 期 待 も あ っ た 。し か し 、 “in on” を導入したときの子どもたちの反応の悪さ、重さに驚いた。この現象こそが、今 ま で の A L T 主 導 の 英 語 活 動 の 中 で 、子 ど も た ち は 学 び を 行 っ て い る の で は な く 、 ただ単に示された絵を見て英語を言わされている状態であると言える。同じ絵を 示 せ ば 、子 ど も た ち は 、“in “in on”を 使 っ て 英 語 を 言 え る だ ろ う 。し か し 、こ れ は 、 on”が 身 に つ い て い る の で は な く 条 件 反 射 に よ る も の で し か な い と 考 え る 。 授 業 後 、 子 ど も た ち は 自 分 の 持 ち 物 を 使 っ て 次 か ら 次 へ と 、 “in on”を 言 い 合 う 姿が見られた。これこそが「学び」である。 ウ 自ら学び、発言する子どもの事例 私が一番驚いたことに、次のようなことがあった。3時制(未来・現在進行・ 過 去 ) の 学 習 を 終 え る 頃 ( 20 時 間 目 ) の こ と で あ る 。 図1 図のような黒板から地図をはずした後の動作は、 I took the picture off the board. と既習している。 し か し 、 I took the picture in my hand. と言った子 図2 もがいた。これは、間違いではなく、自分が行った動 作 を そ の ま ま 言 っ た か ら 当 然 の こ と で あ る 。丸 暗 記 さ せ 、 何回も練習して言わせる学習では、こうしたことは起こらない。彼らが無理なく 4 自 然 に 自 分 で い ろ い ろ な こ と に 気 づ き な が ら 学 べ る 一 つ に G D M の Graded の 素 晴らしさがある。驚いたのは、私だけでなく、参観していた先生も驚かれたのは 言 う ま で も な い 。 そ れ 以 上 に 、 in my hand”が 、 な ぜ い い の か そ の 場 で は 納 得 で きなかったと言われた。授業を受けていた子どもたちが、私の動作と英語で “I took the picture off the board.” と “I took the picture in my hand.”の ど ち ら も 正しいということに納得したことに更に驚かれていた。私の授業を参観された先 生 方 の 中 に は 、 一 度 で 理 解 で き な い 子 ど も を 「 か わ い そ う だ 。」「 わ か る よ う に 説 明 す る べ き だ 。」と い う 意 見 も あ る が 、子 ど も た ち の「 わ か り た い ! 」と い う 気 持 ちが勝る限り、時間がかかるように思えるが、繰り返しの授業の中で、彼らは理 解をして成就感を得ていくものであると確信し、指導をしていきたい。 (2) お互いの学びを認め合う場 子 ど も た ち に は 、 授 業 中 “No Japanese!”と い う ね ら い が 定 着 し て い る の で 、 自 由 に日本語で言い合うことができない。疑問に思ったことや感じたことを友達同士で 言い合える場を提供したりすることで、英語に対する興味・関心を深め、学習を自 分たちで創っていくことができると考えた。 校内にある掲示板を英語学習に学年で工夫し、活用 した 4 例を次に示す。 授 業 で 使 用 し た 絵 を 掲 示 し た 。( 写 真 1 ) そ の 絵 を 見て友達同士で放課に英語を言い合う姿が見られた。 写真1 子どもたちは、自分がつまずいていたところに気づいたり、友達に教えたりするこ とで自信をつけていった。 示された英文を子どもたちが絵 で 表 す コ ー ナ ー( 写 真 2 )を 設 け た 。 授業で扱うワークシートに自分が描 いている絵と友達のものとを比べて、 写真2 友達のいいところを真似するように なり、ワークシートに描く絵が上達した。子どもたちが描く絵に広がりが出て、日 常生活を英語で表現できることを楽しんでいた。子どもたちからは、先生が書いて くれるコメントが楽しいという声があり、放課になると多くの子どもが描き込むよ うになった。 5 単語コーナー(写真3)を設けた。子どもの間から、授業で出てきた単語を読め るようになりたい、書けるようになりたいという声が上がった。新しく出てきた単 語の絵を子どもたちが描き、めくりながら確認をす る。お互いに幾つ覚えたかを競っている様子もあっ た。子どもたちが1年間で習得した単語は、40個 弱である。これだけで、日常生活のいろいろな場面 写真3 を表現できるのである。 ワークシ−トに書かれた感想を紹介した。自分と同じ気持ちの仲間がいることに 気づいたり、安心したりするようである。友達同士の言葉が励ましになり、学習意 欲を高めることにつながった。感想の内容も豊富になっていった。 (3) ア 読めた喜び、書ける楽しさ 英語が書ける楽しさとは 小学生に英語を書かせることは負担が大きいとも言われている。しかし、音声 で捉えた言語を書くことができるということは、子どもたちにとってこの上ない 喜びであると考える。 G D M 教 授 法 で 扱 う 基 本 的 な 絵 の 例 が 図 の よ う で あ る 。 ① は “You” であり、 ⑪ は “He”と な る 。児 童 は 、こ の 違 い を 1 時 間 目 の 授 業 で しっかりと理解している。子どもたちがプリントに描く 絵にも違いがはっきりとしている。基本となることが押 さえられていれば、子どもたちは戸惑うことなく柔軟な発想で日常生活の様子を 描き、英文を書くことができる。子どもたちは、まず絵を描き、それから英語を 書く。それ故に、絵と英語が合わないこともしばしばあるが、表現しようとする 意 欲 を ほ め て い く こ と で 、「 英 語 を 書 き た い 」「 英 語 が 書 け る 」 と い う 気 持 ち を 高 めていくことができると推測する。学習が進むにつれ、児童が家庭学習で行うワ ークシートを見ていても、本時の学習内容を物事の流れ、時間の流れとして捉え て、絵と英語を書くようになってきた。児童は、漫画のようになってきて楽しい と言い、知らない単語を辞書で調べる姿が見られるようになった。 イ 絵本作りと読める喜び 子どもたちは、絵を描くことが好きである。そこで、自由な発想を大いに発揮 さ せ よ う と 、既 習 事 項 を 使 い 絵 本 作 り を 考 え た 。1 年 間 学 習 し た 内 容 で 、 「絵本を 6 作ろう」という課題を出した。B5サイズで6ページの絵本である。多くの児童 は 、 日 常 生 活 を 取 り 上 げ 、 “take put give go ”を 活 用 し て 絵 本 作 り に 取 り 組んだ。 子どもたちに課題を提示したときは、 「どうしよ う」 「 何 を か こ う 」と 悩 ん で い た が 、か き た い こ と を見つけると楽しそうに作業する様子がうかがわ れた。わからない単語が出てくると辞書を使い、 絶対に英語を書いてやるという意欲が伝わってき た。作業の途中で、友達が見せてと言っても出来上がるまでは嫌だと言い、自分 の作品を秘密にして、友達を驚かそうとする仕草も見られるほど、自分の作品を 大切にしていた。出来上がった作品を学年の廊下に並べた。放課になると友達の 作 品 を 見 て は 友 達 同 士 で 「 あ い つ の お も し ろ い 。」 「 楽 し い ね 。」「 私 も こ ん な ふ う に か け ば よ か っ た 。」「 こ の 英 語 、 ち ょ っ と 違 っ て い る ね 。 教 え て あ げ よ 。」な ど と 、言 い 合 う 声 が 聞 こ え 、英 語 を 読 み、絵と合わせて楽しんでいた。児童のアンケー ト結果からは、80%以上の子どもが楽しい、またやりたいと答えた。 ALTの先生からは、 「 小 学 校 6 年 生 の 児 童 が 、こ れ だ け の 英 語 を 書 け る こ と に 驚いた。とっても楽しい作 児童の作品 品ができていて、すばらし い 。」 と い う 感 想 を い た だ いた。 子どもたちは、絵本いう 一つの作品を作ることで、 人に伝えることができる 英語が書けた喜びを体感した。1年間で、こ んなにたくさんの英語を学んだという成就 Thank you! The feet of his bird are on his finger. The window of Ken s house is open. It is going to the outside. He It He It will go to the window. went to the outside. went to the window. is going to the grasslands. It It It It went to the grasslands. is taking the flower off the floor. took it off the floor. will go to …… It It It It went to his house. will give the flower to Ken. gave it to Ken. was in bird mouth. 感も同時に得ることができた。子どもたち自身から「こんなにできるようになっ た ん だ 。す ご い な 。」と い う 声 が 出 た こ と か ら 、自 分 が で き た と い う 自 信 に つ な が ったと考える。児童は、目に見えるもの、体で感じるものがあってこそ、達成感 7 を得ることができる。そのためには、教師が何を教材として取り上げていくかが 大切なポイントとなるだろう。 6 (1) 研究の成果 児童の変容 ア 児童のアンケート結果から 1年間の英語学習を終え、6年の7月にアンケートを実施した。授業のまとめ で扱うワークシートが難しいと答えている児童が多いが、それと同時に、がんば って取り組ん 1年間学習した子どもたちのアンケート結果 だと答えてい 英語に興味を持つことができた る児童の割合 先生や友達がやっていることがわかる もほぼ同じで ある。これは、 与えられた課 英語の学習が楽しい 1年間、学習した内容がわかる ワークシートは難しい 授業で行うワークシートをがんばった 毎日行う英読をがんばった 0% すごく思う 20% 40% 思う 60% 少し思う 80% 100% 思わない 題 に 対 し て 、 「 自 分 の 力 で で き る よ う に し た い 」「 わ か り た い 」 と い う 気 持 ち が 、 学 習 の 中 に あるからだと考える。教師が与える学習課題をどの程度のものにするかが、学び の授業の本質を変えると言われている。簡単にわかってしまうものであれば、児 童は、考えなくてもいいわけであるし、難しすぎても学習する意欲を欠いてしま う。児童が課題に取り組むときに、学習意欲を持続できることが、最も大切であ る。アンケートの結果から、児童が「がんばろう」とする気持ちが80%以上も あ る と い う こ と は 、 ワ ー ク シ ー ト の 内 容 が 適 切 で あ る と 考 え る 。「 友 達 や 先 生 が や っ て い る こ と が わ か る 」「 1 年 間 学 習 し た 内 容 が わ か る 」 と 答 え た 児 童 が 、 約 80%いるということの一つの要因として、毎日の家庭学習で行う英読(授業で 行ったワークシートに描かれている絵を見て英語を言う)の成果だと考える。家 庭で、保護者の方々に児童が言う英語を毎日聞いてもらうことで、子どもたちは 新しい英語が言えるようになったことを保護者に伝えることができ、保護者にほ めてもらえることの喜びと同時に、自信につながっている。毎日の単純な繰り返 し学習の積み重ねが、学習の定着につながり、児童に達成感を持たせ、新しいこ とを身につけたいという意欲に発展しているものと考える。 イ 児童の感想から 8 子どもたちは、授業の内容が難しくなっていく中で、壁にぶつかり苦労してい る姿を幾度となく見せてきたが、わかったときの喜びを知っているからこそ、互 いに学び合う学びができるようになったといえる。1年間、英語の学習を行った 児童が、英語学習について感じたこと、思ったことを書いた内容からも学びの成 果が現れている。 児童は1時間の授 業の中で、新しいこ とを説明され、ただ それをリピートとし て暗記するという学 習ではなく、目の前 で起きている場面を 英語で伝えようとす (資料3) 児童の感想 ・ 最初に It They で困っていたことがうそみたいに、今はたくさんの英 語がしゃべれて楽しい。「英語は難しい」と思ったことがあったけど、今で は楽しいと思えるから、「1年間続けてきてよかったな」と思う。 ・ 英語がわかるときはすごく楽しいけど、わからないときは「もうイヤだ」 と思ってしまうときもある。先生にあてられたときや隣の子と絵を見て言う ときわからなくて戸惑ってしまうこともあるから、もっと、授業に集中して 勉強しなきゃと思う。 ・ ワークシートの宿題で、自分で絵を描いて文も書くことは難しかったけ ど、何を書こうか考えるのが楽しかった。 ・ 5年生の時よりも、6年生になってからは、手をたくさん挙げて自分から 言えたことがよかった。 ・ 初めての単語を覚えるときは、難しいし、集中して聴いていないとわから ないけど、わかったときや言えたときは、スッキリしてうれしいし、達成感 があって、とても楽しい。 ・ 最初の方は、おもしろくなくてあんまりだったけど、6年生になってから なぜかものすごくではないけど、楽しくなってきたし、よくわかるように なったので、もっと英語の授業をがんばっていきたいと思う。 ・ テレビのニュースで日産のゴーン社長が This is my car. と言っている 意味がわかって,うれしかった。 る 中 で 、「 な ん て 言 う の だ ろ う 」 と 思 い 、 考 え な が ら 新 し い こ と を 身 に つ け た 。 自 分 で 考 え て い て わ か ら な い と き に 、友 達 が 言 っ て い る こ と を 聴 い て 、 「あっ!そ うか!!」と理解したときに、子どもたちが自然とつぶやく言葉が学びであり、 GDM教授法による英語学習の成果であると考える。1時間の授業の中で、学習 したことがわからなかった子どももいる。しかし、次の時間、また次の時間にな ってやっと「わかった!」といい、うれしそうに私に伝え、授業に参加する児童 の姿に私自身がうれしくなった。 児 童 は 、こ の 英 語 学 習 が 難 し い と 思 い な が ら 、 「 考 え る 、気 づ く 、学 ぶ 」と い う 楽しさを体感しているからこそ、1年間という継続した英語学習に対して、真剣 な眼差しで取り組むことができただろう。GDMによる学習が、高学年の発達段 階に応じた知的好奇心を呼び起こす英語学習となっていることがよくわかる。 (2) 私自身の変容 英語に抵抗のある私にとって、子どもたちに英語を教えるということは、考え られないことであった。しかし2011年度から小学校の英語活動が5、6年生 で必修となることから、昨年度の夏休みにGDM教授法による英語活動の研修を 受講する機会を得た。このときが初めての体験である私には、ただ丸暗記する英 語学習を受けてきたこともあり、抵抗感が大きかった。しかし、研修を受講した 9 こ と で 、G D M の 楽 し さ を 知 り 、子 ど も た ち と 学 習 し た い と い う 気 持 ち に な っ た 。 この1年間の英語学習は、私の学びの場でもあった。毎授業を全てVTR録画 して、その日の授業後に振り返りを行い、次の授業に生かすことを繰り返した。 VTRを返り見することで、児童の学びの姿勢、理解度、集中力などがよくわか るようになった。また、私自身の教室内の移動の仕方、子どもの発言の順序、ラ イブのときの物の提示の仕方などの善し悪しを、小牧西中学校の松浦先生に継続 的に指導してもらうことで、GDMの良さを上手に授業に生かすことができた。 何より、英語に抵抗感のあった私自身が、子どもたちと英語を学ぶことが楽し いと思えるようになったことは、GDM教授法のおかげである。 7 今後の課題 英語学習が進むにつれ、内容が更に難しくなっていくと子どもたちは、日本語の説 明がないので、教師が何を要求しているかわからず、困惑することがある。また、間 違 い を 恐 れ て 、発 言 す る 機 会 を 逃 し て い る 子 ど も も 少 な く な い 。我 々 教 師 は 、 「間違え てもいいから、どんどん発表しよう」と声かけをする。子どもにとって、自分で考え たことが正しいのかどうかわからないときに、発言することほど勇気が要ることはな いであろう。こうした場面で、子どもたちが「言ってみよう」と思える学習の雰囲気 を作ったり、友達の発言を聴いて考えを深めることができる時間を与えたりしていく ことが大切となる。 8 おわりに これまで行ってきたALTを中心とした英語活動には、担任がほとんど関わってい ない、そして高学年になるとゲームや歌のような活動には限界があり、児童の意欲が 大きく減退するという問題点が挙げられる。また、小中連携の観点からも、中1ギャ ップの解消に効果がないどころか、それを助長している面も指摘されている。これら の問題点は何か一つのことで簡単に解消できるわけではないが、GDM教授法にはそ れを解決する多くのヒントが含まれていることをこの1年間の実践で確信することが できた。その証拠として、自分で分かるところまで考える習慣や、あきらめずに追求 する根気が児童に形成されたことが挙げられる。これは英語学習だけでなく、他の教 科の学習にも良い影響を及ぼし、また学校生活全般にも生かされるものである。この ことからGDM教授法を英語活動に取り入れることを、いろいろな面からすすめてい くことが必要だと思われる。 10
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