アプリケーションストーリー - FLIRmedia.com

アプリケーションストーリー
フリアーシステムズの赤外線サーモグラフィは
船舶建造工程の品質管理に活躍しています。
造船業では、建造工程の品質管理および船舶の信頼性確保のため、非破壊検査が使用
されています。アブダビに設立されたマスダール科学研究所では、船舶建造工程にサー
モグラフィを応用するための研究が行われています。研究者たちは、使いやすく信頼性
の高いサーマルイメージングテクノロジーに大きな期待を寄せています。
マスダール科学技術研究所は、持続可能性
(サステナビリティ)に関する諸問題に現
実的なソリューションを提供するために設
立された世界初の大学院です。この研究
所は、持続可能エネルギーに特化した世界
トップクラスの研究ベースの大学院となる
ことを目指しています。同研究所のエンジ
ニアリングシステム・マネジメント学部の
Mohammad Omar博士は、非破壊検査お
よび工程・製品のモニタリングを専門に研
究を行っています。
船舶の建設
「マスダール研究所に勤務する前は、オ
ンライン検査、オートメーション、工程管
理など多様なアプリケーション分野でサー
マルイメージングを利用していました」と
Omar博士は言います。「これらのアプリ
ケーションで、サーマルイメージングの信
頼性と導入の容易さについては経験済み
でした。 船舶建造工程のモニタリングで
もサーマルイメージングの利点は変わり
ません。」
過酷な環境で稼働する海洋船舶には、建
造工程の品質を確保するために、高度な
非破壊検査テクノロジーおよび厳密な検査
手順と方法が必要です。この品質が最終
的には、船舶の寿命、メンテナンスの頻度
および船舶の総費用及び信頼性を決定し
ます。赤外線ベースの画像検査は、欠陥
の検出可能性と定量化を改善するだけでな
く、安全かつ容易に信頼できる結果が得ら
れる非破壊検査ツールです。船舶の内装
および外装に使用でき、多様な海洋および
海軍でのアプリケーションに応用できます。
マスダール研究所では、スプレーガンに統合した赤外線
カメラと研究開発用のFLIR SCシリーズの2種類のフリ
アーシステムズのサーモグラフィを使用している。
溶接品質管理のための
サーマルイメージング
造船に関連するアプリケーションとして第
一に挙げられるのが溶接品質管理です。
ミグ溶接や摩擦攪拌溶接のようなスポット
溶接は、金属同士をつなぐ信頼できる方
法です。 船舶建設のような極めて重要な
アプリケーションでは、溶接の厳密な品質
管理が不可欠です。
寸法の定量化
溶接温度をモニタリングすることは溶接強度の指標になる。(1)
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TMMKカットのチェック
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従来は、溶接検査は2つの金属の端が適切
に融合しているかどうかを目視とハンマー
で叩くことで検査する方法が主流でした。
しかし、この方法は主観的検査です。
船舶建造でも、赤外線サーモグラフィを用
いてバラストタンクの非塗装部分を検出し
ています。このアプリケーションでは、サー
モグラフィが、放射特性および温度特性の
違いから、サイズの異なる非塗装面を検出
します。サーモグラフィは、紫外線光の下
で光る蛍光塗料を用いた蛍光イメージング
など他の画像検査と組み合わせて利用す
ることもできます。
一方、サーマルイメージングは客観的指標
です。 基本的に、金属が融解温度まで均
等に加熱されると溶接は成功します。その
ため、溶接温度のモニタリングは溶接強度
の指標となります。 溶接の赤外線画像を
撮影し、温度マップを作製すれば、溶接中 「他の方法にはないサーマルイメージング
の最大の利点は塗装工程中に温度モニタ
の金属全体の温度変化が確認できます。
リングを行えるという点です」とOmar博
士は言います。「私たちはフリアーシステ
塗装表面のサーマルイメージング検査
「 サ ー マ ル イメ ー ジ ング の 大 き な 利 点 ムズ製の赤外線コアを塗装用スプレーガン
は、表面積の大きな船舶全体の温度プロ に組み込んでいます。こうすれば、再塗装
フィールをすぐに提示できる点です。この が必要な表面や塗装済み表面をその場で
利点のおかげで、赤外線サーモグラフィは ただちに確認できます。これは塗装後にモ
船舶の塗装工程のモニタリングに最適なの ニタリングする超音波検査などよりもはる
です」とOmar博士。
かに効率がいいのです。」
塗装表面検査へのサーマルイメージング
応用はすでに自動車業界で実証済みです。
自動車業界では、赤外線サーモグラフィで、
自動車用燃料タンクを厚さ500ミクロンの
水性保護フィルムでコーティングするロボッ
ト自動塗装工程を監視しています。この
アプリケーションでは、各タンクの塗料が
乾燥していくリアルタイムの赤外線映像か
ら塗膜の厚みマップを作成します。これに
より、コート済みタンクの修理の必要性を
チェックするとともに、赤外線サーモグラ
フィからのフィードバックに基づきロボット
工程のフロー設定の調整を行うことが可能
になります。
サーマルイメージングによる
塗膜下の腐食検査
赤外線サーモグラフィを塗装面検査に使用
することには、もうひとつ利点があります。
赤外線波長域である2~5μmで透明である
塗料を使えば、塗装をはがさずに塗膜下の
損傷や腐食をスキャンできるという点です。
「たとえば、私たちはフリアーシステムズ
の赤外線サーモグラフィをバラストタンク
の保守点検に使用しています。」とOmar
博士。「タンカーは中東からの帰途にはバ
ラストタンクにいっぱいの原油を積載して
います。しかし、逆に中東に向かうときは
タンクには海水を充填し、往復の船舶のバ
ランスをとっています。問題は、海水は腐
食性が高く、塗装面の損傷につながるとい
う点です。赤外線サーモグラフィを使えば、
塗装をはがすことなく腐食部分を確認でき
るのです。」
各タンクの塗料が乾燥していくリアルタイムの赤外線映
像から塗膜の厚みマップを作成する。(2)
サーマルイメージングは非接触で検査で
き、手の届かない場所や構造の検査が効
率よくできるため、こうした検査に最適で
す。 巨大な船体や構造の検査には二次元
検査ができる点が極めて有用です。さらに、
赤外線サーモグラフィ検査にはサンプル採
取が不要であり、各種材料および塗料に
利用できるため、電磁波透過性などのバル
ク材の特性による制限もありません。
サーモグラフィには、別の利点もあります。
レンズや検出素子の空間次元を変えること
で解像度を管理できるため、各種検査に
合わせたカメラソリューションを選べる点
です。
「マスダール研究所では、スプレーガンに
組み込んだ赤外線カメラコアから、研究開
発用のFLIR SCシリーズまで多種多様なフ
リアーシステムズ製カメラを使用していま
す」
とOmar博士。
「フリアーシステムズは、
多様なアプリケーションや用途に合うモデ
手の届かない場所の検査
ルが揃っている点に特に満足しています。
造船所では、照明がない暗い場所や手の また、カメラの校正からソフトウェア更新
届かない場所での検査が必要となります。 まで各種サポートが受けられる点もありが
たいです。」
詳しい情報は
弊社のウェブサイトをご覧ください
海洋グレードの保護膜でコーティングしたサンプル。人工的にピンホール(上)(下)をつけた。このピンホールの
赤外線サーモグラフィ画像と補正画像。(3)
引用文献: (1) [M. Omar, R. Parvataneni, Y. Zhou, A Combined Approach of Self-Referencing and Principle Component Thermography for Transient,
Steady and Selective Heating Scenarios, J. Infrared Physics and Technology, 53, (2010) 358-362]. (2) [M. Omar, V. Viti, K. Saito, J. Liu, Selfadjusting Robotic Painting System, J. of Industrial Robot, 33, (2006), 50-55]. (3) M. Omar, B. Gharaibeh, A. Salazar, et al, Infrared Thermography
and Ultraviolet Fluorescence for the Nondestructive Evaluation of Ballast Tanks Coated Surfaces , Intl. J. NDT&E, 40, (2007), 62-70]
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掲載画像は実際のカメラの解像度と異なる場合が
あります。画像は説明目的で使用されています。