Apex-AN10 パワー・オペアンプの出力インピーダンス

AN10
APEX – AN10
AN10
パワー・アンプ
Product Innovation From
の出力インピーダンス
パワー・オペアンプの出力インピーダンス
概要
パワー・アンプ回路の設計では、特定の出力インピーダン
スを持つパワー・アンプ・モデルが必要になることが多々あり
ます。ほとんどの場合、この要件を満たすには、パワー・ア
ンプ回路の位相性能を正確に予想する必要があります。
すべてのオペアンプの出力インピーダンスは、デバイス周
辺に存在する帰還ネットワークによって変わります。電圧ソー
ス・タイプの回路の場合、このネットワークによって、開ループ・
ゲインと閉ループ・ゲインの比率と等しい係数で出力インピー
ダンスが低下します。パワー・アンプの場合、1kHz 未満の
周波数では、有効出力インピーダンスは最終的にミリΩレベ
ルになります。相互接続された配線では、多くの場合、閉ルー
プのパワー・アンプの出力インピーダンスより大きなインピー
ダンスが生成されます。そのため、周波数が低い場合、出力
インピーダンスは位相性能ではそれほど重要な役割を果たし
ません。周波数が高い場合、リアクティブ負荷に関しては、多
くのパワー・アンプに提供されている容量性負荷仕様ですで
に対処されています。
電流制御回路、つまり電流ソースには、負荷電流に比例す
る電圧を生成するセンス抵抗を備えた帰還ループ内に直列要
素として負荷が含まれています。図 1 は、まさにそうした回
路の一般化された例を示しています。この負荷は多くの場合、
高周波で最大 90 度の位相シフトを有することができる偏向
ヨークといった誘導成分で構成されています。帰還ループ内
の位相を完全で正確に予測するためには、一見して、出力お
よびヨークの等価直列インピーダンスの関わり合いを見れば
良いように思えるかもしれません。しかし、実際には、オペア
ンプの帰還が無限大に近いインピーダンスを持つ本当の電流
ソースとして動作していることが原因です。回路を安定させる
ための現実的な手法は、ヨークの帰還とアンプの位相の組み
合わせが 180 度に近づくまで動作を支配する補助的な帰還
が必要なだけです。出力インピーダンスは、安定性の決定に
は不要です。
パワー・オペアンプの出力インピーダンスが電力供給能力
や内部損失にはまったく関係していないことも重要な点です。
出力と直列な出力抵抗を持つパワー・アンプのモデルでは大
量の損失が生じますが、その損失は現実のオペアンプでは観
測されません。
出力インピーダンスは、周波数、負荷および出力レベル
といった様々な変数によって決まります。 多くの場合、この
インピーダンスは周波数が高くなると上昇します。PA51 や
PA61 などのクラス C アンプの場合、バルク・エミッタの抵
抗がエミッタ・フォロワの出力に影響を与えるため、レベルが
低いときにインピーダンスが高くなります。
LOAD
VC
RS
図1.
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一般化された電流制御回路
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出力インピーダンスの測定
出力インピーダンスはいくつかの方法で測定できます。最
も簡単なのは、負荷をかけた状態および負荷をかけない状態
で開ループ・ゲインを測定する方法です。この方法では、完
璧な電圧ソースと直列な動的インピーダンスが測定されます。
負荷をかけた状態での出力の変化はこのインピーダンスによ
るものです。
より直接的な方法は、開ループ状態で動作しているアンプ
の出力に印加される信号を生成することです。電流を測定す
ると、この信号に適した有効インピーダンスを判別できます。
実際のインピーダンス値
負荷を加える方法によるゲイン変動を使用して、いくつか
の Apex Precision Power パワー・アンプを測定しました。
図 2 のテスト回路には 10 Ωの負荷がかけられています。測
定の一貫性を保つため、10Hz 時の最も小さな振幅を使用し
ました。値の範囲が表示されている場合、いくつかのデバイ
スで観測される範囲を表しています。
PA02: 10 ~ 15 Ω
PA07: 1.5 ~ 3 Ω
PA08: 1500 ~ 1900 Ω(高電圧アンプ)
PA09: 15 ~ 19 Ω
PA10: 2.5 ~ 8 Ω
PA12: 2.5 ~ 8 Ω
PA19: 30 ~ 40 Ω
PA51: 1.5 ~ 8 Ω
PA61: 1.5 ~ 8 Ω
PA84: 1400 ~ 1800 Ω(高電圧アンプ)
VIN
56.2K
AO =
VOUT
VIN
A O = IS UNLOADED
562
VOUT
10
10Ω
RL
A'O = IS 10Ω LOADED
AO
RO = (
–1) R L
A'O
図2. 出力インピーダンス測定回路
高電圧アンプは、大電流アンプに比べ、電流容量が大幅に
低下します。そのため、高インピーダンスとなることが予想
されます。
PA19 に示す高インピーダンスは、出力段に局所帰還を備
えていないドレイン出力 MOSFET 回路によるものです。こ
れは、このパラメータによって間違った方向に導かれる可能性
があることを示した例です。30 ~ 40 Ωの抵抗が出力と直
列に存在していた場合、PA19 は、1A を超える出力電流を
生成することはできません。閉ループ状態では、出力インピー
ダンスは、他の任意のパワー・アンプと同様、ミリΩレベル
まで低下します。出力電圧と電流容量に関する限り、出力イ
ンピーダンスは抽象的な言葉である点に留意してください。
モデル化する際に出力インピーダンスの影響を示すには、
最高および最低の期待値を使用してください。その結果から、
出力インピーダンスがパワー・アンプの性能に重大な役割を
果たしていることが実証されます。
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2009年5月
AN10U
APEX − AN10UREVC