はじめに 継続的契約関係の解消というの は、実務上問題になることの多い テーマである。 ﹁継続的契約関係﹂ と一口にいっても、継続的売買契 約、フ ラ ン チ ャ イ ズ 契 約、代 理 店 ︵特約店︶契約、業務委託契約など 更新しない旨の書面による通知 がされた場合の期間満了による 終了。 ② 期間の定めがない場合 一 定 期 間 の 事 前 通 知 を 行 い、 その通知期間が満了したときの 終了。 ③ 相手方に契約違反がある場合 一定の期間を設けた是正催告 を書面によって行ったにもかか 多岐にわたるものが含まれ、それ ずしも適当とは考えられない。本 わらず、違反状態が解消されな らを一括りにして論ずることは必 稿では継続的契約関係の解消につ い場合の解除。 等の申立てがされた場合等 ④ 相手方に対して破産宣告がさ れ、ま た は 民 事 再 生、会 社 更 生 いてその典型例の一つである代理 店契約のサプライヤー側からの解 消の場合を取り上げ、その基本的 な考え方と実務上の留意点につい て論ずることとする。 信用状況に重大な問題が認め られる場合の解除。 しかし、実際にサプライヤーか ら契約の文言どおりの手順で契約 を終了させようとすると、代理店 から﹁この契約は継続的な取引の 約の終了に関する規定が含まれて 代理店契約において、書面で契 約が締結されている場合には、契 終了させることはできない、よっ 係の破壊等の正当事由がなければ に定められた要件に加えて信頼関 一般的な 契約解除条項について いるのが通常である。典型的なも て、解 除︵ 更 新 し な い 旨 の ︶通 知 基本となる契約であり、契約条項 のは以下のようなものであろう。 しば︵ほとんどの場合で︶される。 からスタートしている借地・借家 は無効である﹂という主張がしば ① 期間の定めがある場合 期間の満了前一定期間︵三カ 月または六カ月という例が多い ように思われる︶までに契約を る︵注2︶ 。 の関係性とは異なり、双方プロ同 ずることになるわけで、サプライ されていない金銭のやり取りも生 強く働く。それに伴い契約に規定 が必須となり、紛争回避の要請が るような場合には、円滑な引継ぎ ではなく、後任の代理店を指名す ヤーが市場から完全撤退する場合 る を 得 な く な る。特 に、サ プ ラ イ は、代理店と合意解約を目指さざ ーとしては紛争を回避するために れにくい︶ 。その結果、サプライヤ についてのコンセンサスが共有さ にくい ︵つまり、 当事者間で ﹁相場﹂ 裁判になった場合の帰趨を予測し ・ケースの判断が要求されるため、 や正当事由などという、契約上規 ﹁損得﹂の世界に、信頼関係の破壊 る。対等なビジネスパートナーの ばしば持ちつ持たれつの関係であ プライヤーと代理店の関係は、し る 場 合 が 多 い。こ れ に 対 し て、サ れ た 場 合 に は 相 対 的﹁ 弱 者 ﹂で あ らず、契約終了を盾にして交渉さ 去し、次の物件を探さなくてはな 終了時に建物や内装を撤去して退 合はあるが、賃借人は賃貸借契約 が必ずしも経済的弱者ではない場 借地・借家関係においても賃借人 することの妥当性には疑問がある。 頼関係破壊理論﹂をそのまま流用 地・借家関係でいわれるような﹁信 士 で あ る こ と が 多 い。よ っ て、借 の利益補償が要求され、そのよう ヤーとしては、代理店の解約に対 しかし、この法理は抽象的で実 際の適用に際してはケース・バイ に十分な予告期間のない解除は無 間の予見可能性を損ね、社会全体 定されていない抽象的な要素を持 賃貸借契約関係における﹁信頼 関係破壊理論﹂︵注1︶ を援用して、 の経済合理性に合致しない結論を する同意を得るために契約上は想 く と さ れ る。典 型 的 な も の は、① 当事者間の信頼関係が破壊される 効であり損害賠償責任が発生する、 軽微な違反では解除できず信頼関 などの契約を継続し難いやむを得 ち込んで契約解釈を曖昧化させる 係を破壊するような重度の違反︵そ ない事情がなければ解約できない 定外の負担を強いられることにな の 他 の 正 当 事 由 ︶が 必 要 で あ る、 というような議論を展開する、い というような議論である。 ②︵たとえ契約上定めのない場合 わ ゆ る﹁ 信 頼 関 係 破 壊 理 論 ﹂を 継 ことは、取引関係にある両当事者 で も、ま た、契 約 上 定 め が あ っ た 続的契約関係全体に及ぶものとし サプライヤーと代理店は、社会 的 な 強 者︵ 持 っ て い る 者 ︶と 弱 者 ︵ 持 た ざ る 者 ︶の 関 係 と い う 発 想 期待を持たせ、新たな事業への切 何とかなるかもしれない﹂という される側の代理店にも ﹁ゴネれば、 イヤーにとってはもちろん、解除 店契約を解除しようとするサプラ 導く可能性もある。この点は代理 としてもそれよりも長い︶予告期 て論ずる教科書はいまだに存在す ﹁信頼関係破壊理論﹂の 問題点 間または予告期間に相当する期間 る。 (注1)最三小判昭和39年7月28日民集18巻6号1220頁。 14 後々紛争も を巡る 消 解 問題点 ⁉ 信頼関係破壊の理論 継続的契約の 継続的契約関係の解消には、単 発的な契約解消と異なる法理が働 宮野 勉 弁護士 (注2)例えば『民法 5 契約総論(第4版)』 (有斐閣双書)31頁では「継 続的契約関係の存続や解約・解除などについて問題が生じ たときには、信義則を援用して、それが信頼関係を破壊する かどうかによって判断される」と記載されている。 会社法務A2Z 2015.8 会社法務A2Z 2015.8 15 契約解除の仕方によっては 特集 いざというとき役立つ 契約実務
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