1 <「校長室便り」48> いい光景 来週、7月6日(月)から期末テストが

<「校長室便り」48>
いい光景
来週、7月6日(月)から期末テストが始まる。1学期も
いよいよ追い込みにかかった。
試験前1週間は、大会等を控える部は除き、原則的に練習
禁止である。私は1日1回、時に2回、校内を回って授業の
様子その他を見ることにしているが、この期間は放課後にも
回る。
ある日、先ず1階のラーニングセンターに行ってみた。ホールも一杯だ。こっちは特
に中学生が多い。皆、元気な声で挨拶してくれる。が、私としては、もう既に勉強に集
中している生徒も多いので、大きな声で挨拶を返すのは躊躇される。
中に入ってみると、こっちも自習席は満員だ。髪の毛を短くした運動部の生徒たちも
3人、4人と一緒になって勉強している。
2階の中学教室で、放課後なのに授業をやっているような
ので、そっと後ろのドアを開けてみた。すると、確かに教室
一杯の生徒がいる。近くの生徒にそっと聞いてみると、試験
に向けての自由参加の授業なのだと言う。なるほど、と感心
して、またそっとドアを閉めた。先生は気づかぬまま一生懸
命板書していた。
2階は職員室側、つまり西側から東側に向かって歩いて
行ったのだが、東側の廊下に何人か人がいる。近づいてみ
ると、女子生徒4人と先生が机を囲んで勉強をしている。
いい光景だ。純粋にいいなと思う。ちょっと大げさに言え
ば感動を覚えた。教師と生徒がこのように、教え、教わる。
これは教育の原点だろう。また、既に自分が生徒を直接教
えることがなくなったため、よりそのように感じるのかも知れない。
3階、4階、5階と回っても、多くの教室で生徒たちが
自習していたり、先生が教えていたりする光景が見られる。
教室だけでなく、それぞれのフロアの面談室でも、やはり
同じ光景が見られた。職員室に戻ってくると入り口の椅子
に師弟仲良く座って質問し、質問に答えている姿がある。
また中に入ると、生徒の質問や相談に答えるスペースで何
人もの先生が生徒の質問に答えている。これも、いい光景
だ。
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唯、校長としては気になることもある。それは、先生方の
労働時間の問題だ。
一般の方々はまだ、教員には夏休みや春休みがあっていい
なと思っている方も少なくないと思われるが、教員の労働時
間はかなり長い。先日面白い新聞記事があったので、切り抜
いておいた。それは、横浜市教育委員会が保護者に教員の長
時間労働解消への協力を求める文書を出していた、というも
のだ(「読売新聞」6月22日朝刊)。
これによると、横浜市の教員の平均月残業時間は約90時間、中学に限れば102時
間になるとのことだ。因みに国による過労死ラインは月平均80時間である。この記事
には広島県教育委員会の調査結果も出ていて、それによれば広島県の小学校教員の月平
均残業時間が90時間、中学校教員は84時間とのことだった。
今、本校に限らず私立学校では土曜日授業を実施している
ところが多くなっている。ある程度進学に力を入れている学
校はほとんど実施しているのではないかと思う。公立でも名
目はともかく、実質的に土曜講座を開講しているところが少
なくないだろう。
また夏休み等の長期休業中も授業や行事は多い。本校では
夏休み、様々な内容、レベルの講座が開講されているが、この講座は芸術や体育を除き、
ほぼ全教員が開講する。今年は全部で62講座である。教員は少ない者でも5日か6日、
多い者は、なんと20日も実施する。1回は50分だが、当然ながら講義の下調べや資
料準備を入れれば1回に3時間くらいはかかるだろう。
言うまでもなくこの他にも、部活の指導、合宿、大会など
がある。昨年も、ある女性教諭は子供が2人いながらインタ
ーハイの引率で1週間も家を空けた。本当に申し訳ないよう
な、ありがたいような気持ちであった。
勿論部活ばかりではなく、林間学校やら自分の研修として
の出張、その他諸々ある。夏休みに入る前にはいつも教職員
に少しでもリフレッシュしてくれるよう言うのだが、どのくらいできているか?
話を元に戻すと、試験前くらいゆっくりしてもらいたいと
思うのだが、前述のような状況で、7時頃職員室に行っても
かなりの職員が残っている。
師弟同行の光景に感激しつつも一方では心配もある。唯、
救いはこれがいい意味での生徒指導であり、教育に関わる者
の喜びを味わえる仕事であることだ。そんなふうに思って、
これでお茶を濁すことにする。
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(2015.7.4)
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