あすか製薬の価値創造 特集 2 甲状腺領域への挑戦 ～主力製品チラーヂンにより270万人の潜在市場を開拓～ 甲状腺の機能と代表的な 疾病について教えてください。 甲状腺は、身体の新陳代謝を盛んに ここ10年でチラーヂンの 適応事例が広がっているというのは どういうことですか。 するホルモンを作る臓器です。甲状腺の 甲 状 腺ホル モンが 発 見 された の は 疾病には、バセドウ病や橋本病などがあ 1912年。当社のチラーヂンが発売され りますが、甲状腺ホルモンをつくる働き たのは1922年で、会社と同じく、長い歴 が異常を起こし、甲状腺ホルモンが過剰 史を持っています。これまで甲状腺機能 になったり不足したりすることで、さまざ 低下症など多くの患者さんの治療に貢 まな身体症状を引き起こします。バセド 献をしてきましたが、最近では新たな知 ウ病の大きな特徴は「突眼」 「頻脈」 「喉の 見が次々と見つかっています。たとえば、 があることがわかってきました。現在チ 腫れ」です。逆に、橋本病の発症によって 2011年の国際ガイドラインでは、軽い甲 ラーヂンは90万人の患者さんが服用さ ホルモンが不足することで症状が現れま 状腺機能低下状態が流・早産につながる れていますが、見逃されている患者さん す。甲状腺機能低下症の治療には「甲状 ということが報告されています。しかも、 はその3倍の270万人に上ると考えてい 腺ホルモン補充療法」しか方法がありま 甲状腺機能低下状態にあると、流・早産 ます。甲状腺の専門医だけでなく、甲状 せん。ここで用いられているのが甲状腺 のリスクは通常の2倍になると言われて 腺異常に関係する産婦人科医や内科医 ホルモン剤「チラーヂン」です。また、甲 います。現在国内では100万人中15万 をはじめ、全国の先生方に対して、国際ガ 状腺ホルモン剤にはT4製剤、T3製剤と 人が流・早産しており、そのうちの約7％ イドラインや新知見に関する情報を発信 ありますが、チラーヂン（T4製剤）の市場 に甲状腺異常があると言われています。 し、疑わしい場合には甲状腺の血液検査 に出ている全体量は、これら製剤すべて その数は約1万人ということになりますか を行っていただくように啓発活動を進め の97％を占めています。 ら、チラーヂンが投与されていれば、そ ていくためにマーケティング本部に新設 れだけの子どもが生まれる可能性があっ されたのが甲状腺薬事業推進室です。 たわけです。 甲状腺領域の今後の市場性を どう捉えていますか？ 甲状腺機能低下状態が流・早産の場 合、チラーヂンを内服することで流・早 産の予防につながります。この他にも「認 甲状腺 知症」 「骨粗しょう症」 「高脂血症」 「心血管 イベント」なども甲状腺ホルモンに関係 国内の流産数と甲状腺異常の関係 ● 17 流・早産 15万人 出産数 100 万人 ASKA REPORT 2015 流・早産した15万人中、 甲状腺異常があった人 （推計） 7％ マーケティング本部 甲状腺薬事業推進室長 友松 盛浩 あすか製薬は甲状腺薬において97％の市場シェアを持つトップ企業です。 現在、甲状腺機能については、その機能低下が流・早産につながるといったことをはじめ、 「認知症」 「骨粗しょう症」 「高脂血症」 「心血管イベント」に関係するなど、 さまざまな知見が報告されており、その潜在市場に大きな広がりが期待されています。 マーケティング本部の組織図 ● まだ診断されていない潜在市場 マーケティング本部 プロダクトマネジメント部 甲状腺薬事業推進室 マーケティング企画部 学術部 チラーヂン 服用患者数 ライセンス部 甲状腺薬事業推進室では どのような活動を 進めているのですか？ 270万人 90万人 認知症 2015年以降の 経営への影響については どのように予測されていますか？ 骨粗しょう症 高脂血症 心血管イベント ル®、プロパジール®を承継し、販売を開 始します。甲状腺の血液検査の啓発活 動に関しても、検査機器メーカーや試薬 メーカーなど10社あまりと協力し、甲状 甲状腺薬事業推進室では、超音波セミ 2014年度、チラーヂンの市場シェア 腺薬のトップメーカーとしての社会的な ナーや頸動脈・甲状腺エコー講演会など は97％で、約60億円の売上があり、毎年 貢献を果たしていきます。 を全国で開催していますし、今後、医師会 着実に伸びています。今後は残り3％の こうした活動を進め、2020年のあすか と共催で 「甲状腺診療 医療安全」 講演会 市場を取るというよりは、啓発活動によ 製薬創立100周年には、甲状腺領域で売 などを実施します。また、全国で市民公開 りチラーヂンをはじめ、甲状腺薬そのも 上100億円を目指し、企業の持続的な成 講座を開催し、甲状腺啓発に向けた啓発 のの市場を広げていきたいと考えていま 長の柱としていきたいと考えています。 活動を進めています。さらに、甲状腺の病 す。そのために、当社が持っていなかった 気を知っていただくために、甲状腺疾患 抗甲状腺薬である中外製薬のメルカゾー の啓発マーク「バタフライリボン」をつけ ていただき、周りの方に病気のことを伝え てもらう活動なども予定しています。 全国の先生方に対して「正しい医療の 推進」を行うことが製薬会社としての使 命であり、甲状腺の啓発はスペシャリティ ファーマとしてのあすか製薬の役割でも あります。ひいてはそのことが広く社会 他社との共同啓発セミナー への貢献につながり、収益の拡大にもつ ながっていくのです。 市民公開講座 甲状腺領域資材 ウェブサイト 「THYROID ISLAND （サイロイドアイランド） 」 （医療従事者向け甲状腺情報提供サイト） ASKA REPORT 2015 18
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