群馬県立聾学校聴覚障害支援センター 平成25年度.№6 平成25年6月に、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が国会 で成立、公布されました。この法律では、①障害があるということだけで、正当な理由なく、サービスの 提供を拒否したり、制限したり、条件を付けたりするような行為を禁止しています。また、②障害のある 方などから、何らかの配慮を求める意思の表明があった場合には、負担になりすぎない範囲で、社会的障 壁を取り除くために必要で合理的な配慮を行うことが求められます。 ②について、配慮を求められた場合、相手側は、過度な負担なく配慮ができるのであれば、 それをしなければならないということが法律によって定められたのです。 聴覚障害のある児童生徒が通う学校で行われることが期待される配慮や工夫 ◎教科指導における配慮 ◎通級指導におけ ◎個々や場面に合わせた配慮 る配慮 ・補聴援助システム(FMなど)の 使用 ・教師の話が聞き取りやすい座席の 位置、話者の音量調節、防音など に配慮した教室環境の提供 ・板書および視覚的教材を多くする ・新出語句の聞き ・雑音を軽減するために、テニスボールを 取り状況の確認 ・用語の意味理解 机や椅子の脚に装着する ・ノートテイク(授業の流れがわかかるワ の確認 ークシートの用意) ・補聴器の聞き取 ・リスニング等において、音量の調整、学 り状況の確認 習室の変更など 配慮(発言を文字に残す、文字カ ・障害理解のための校内研修の実施 ードなどの教材の活用) ・周囲の児童生徒の理解啓発を促すための ・音による合図を視覚的に表示する 指導、聴覚に障害のある児童生徒同士の などの工夫 交流の場や機会の確保 なお、この法律は平成28年4月から施行されます。それまでに具体的な取り組みの例が挙げられたガ イドラインが作成される計画になっています。より詳しい内容につきましては、文部科学省ホームページ 「資料3 障害種別の学校における『合理的配慮』の観点(案)」をご覧ください。 1月下旬から、地域支援部に加わりました。 谷津 怜史(たにつ さとし)です。 特技は バドミントンです! これから色々覚えつつ、実際に、皆さんの役に立てるよう 力をつけていきたいと思います。よろしくお願いします! FM が進化 デジタルで音がよい 混信しない Q1、補聴援助システムとは? A1、送信機から、話し手の声を電波などで補聴器や人工内耳に取り付けた受信機へ送り、言葉の聞 き取りを改善するシステムです。 Q2、FMとの違いは? A2、一番の特徴は音声がクリアなことです。また、騒音下での聞き取りがFMよりも良くなってい ます。チャンネル設定の必要もなく、FMで起きていた混信が、ロジャーではなくなりました。 Q3、どんな場面で必要なの? A3、補聴器や人工内耳が周囲の騒音を拾ってしまう騒がしい場所や、 反響の多い場所、話し手との距離が離れている場所で効果があります。 Q4、補助の対象なの? A4、現在、障害者総合支援法による補助の対象にはなっていません。金額はFMシステムと ほぼ同程度です。特別に補助の対象とするか、県や市町村によって検討が行われています。 Q5、試聴はできる? A5、聾学校に、アヅマ補聴器センターからお借りしている試聴機があります。通級や教育相談を利 用している方へも貸し出せます。ご希望の時期や期間についてはご相談ください。 きつおん 通級指導教室のエピソード 吃音とは・・・ことばがつっかえたり、出なかったりすることを言います。人口の約1% の人に吃音があると言われています。症状に波(変動性)があり、調子が良いときもあれ ば、悪いときもあります。ある特定のことばや場面が極端に苦手ということもあります。 Z軸:X軸とY軸に対する 吃音のある児童生徒にとって自己認識(障害認識)の指導は重要です。自分の吃 音について知り、考え、適切な自己像を形成して、安心して学習や生活に取り組め るようにしたいと考えます。 指導のひとつとして、ウェンデル・ジョンソンの「言語関係図」(図1)を使って います。これは、吃音の問題を立方体のモデルで表したものです。X軸は吃音の程 度、Y軸は聞き手の反応、Z軸は本人がどう受け止めるかを表します。各軸につい て、問題の大きさを5段階で考え、ブロックを組み立てます。 吃音がある人の反応 Y 軸 : X 軸 に 対 す る 聞 き 手 の 反 応 X軸:本人の吃音症状の問題 図1 言語関係図 ここでは、「今の自分」と「これからなりたい自分」を設定し、作成しました(図2)。 このことに取り組んだ児童生徒は、「友だちが自分の話し方を“ちょっと変”と思 ってるかもしれない。」、「言葉が出ないときに、友だちが私の言おうとしたことを 言ってしまうことがある。そうすると話す気持ちが小さくなる。」、「私の話し方に (左が今の自分、 ついて、先生が学級に説明や注意をしてくれた。だから、今は大丈夫。」、「自分に 右がこれからなりたい自分)合った話し方が分かって、少し楽に話せるようになった。それでX軸がひとつ小さく 図2 作成例 なった。」、「吃音を気にしないでたくさん話したことで、友だちが慣れてきて、 自分を分かってくれたと思う。」などと話すようになりました。このように、この立方体モデルは、本人が 吃音と向き合い、周囲の反応や自分の気持ちを見つめるきっかけとなりました。 また、この「言語関係図」について、吃音を聴覚障害と読み替えることで、難聴のある児童生徒の 自己認識の指導にも活用しています。
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