認定看護管理者に学ぶ 現場を変えるマネジメント

認定看護管理者に学ぶ
現場を変えるマネジメント
28 人の実践リポートから、ヒントを得よう!
S P E C I A L
F E A T U R E
本号では、現在までに約 2700 人が誕生している認定看護
管理者の実践、その魅力を多くの看護職に伝えたいと総特集
を組みました。
序文では、認定看護管理者が担う役割・道筋を、日本看護
協会の大久保清子副会長が提示します。1章では、新人育成、
キャリア開発、時間外勤務、看護職配置、多施設間ネットワー
クの構築といった身近なテーマを、実際にどうマネジメント
してきたか、28 人の認定看護管理者が報告します。2 章では、
認定看護管理者を育てる教育機関の 3 人から認定看護管理者
教育の魅力を伝えてもらいます。3 章では、それぞれのお立
場から認定看護管理者へ期待を込めたメッセージをいただき
ました。
本特集は現場での取り組みの参考にしていただくことを意
図していますが、認定看護管理者たちの実践を知って、1人
でも多くの看護職が「私も認定看護管理者になろう!」と思っ
てくれることも願って編集しました。
目
臨時増刊号
次
2015 年 11 月 第 67 巻 第 14 号
日本看護協会機関誌
●
Journal of the Japanese Nursing Association November 2015 Volume 67 / Number 14
C
総特集
O
認定看護管理者に学ぶ
現場を変えるマネジメント
28 人の実践リポートから、ヒントを得よう!
N
T
序文 認定看護管理者ができること・すべきこと
E
N
1 章
S
大久保 清子
006
認定看護管理者の実践から学ぶ
魅力的な職場づくりの第一歩は
新人サポート体制の見直しから・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 西浦 聡子 010
1- 2
中小規模病院だからこそできる新人育成
1- 1
T
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 年未満離職率 30~50%から 0 %へ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 山越 かおり
1- 3
成長とやりがいを自分で獲得できる看護師の育成・・・・・・・・・・・・・ 東 めぐみ 019
1- 4
人間力を土台にしたキャリア開発支援・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 宮嵜 祐子 024
1- 5
グループ関連病院共通の教育システムを構築
015
ラダー制度を活用し共通認識を得る・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 松井 美穂
1- 6
中堅看護師育成をめざしたクリニカルラダーの導入・ ・・・・・・・・・ 金子 恵子 032
1- 7
アメーバ経営法を導入し管理者を育成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 大田 晴美 036
028
1- 8
コンピテンシー・モデルを活用した看護管理者の能力開発・ ・・ 髙井 亜希 041
1- 9
育児支援策の充実後に起きた新たな問題への対処と成果・・・・・・ 山崎 律子 045
1- 10
逆循環の三交代 8 時間から
変則二交代 12 時間夜勤への転換・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 吉原 喜代美 049
看護職者の能力を生かし合う
メンタルヘルス支援で定着率向上・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 吉越 光代 053
1- 12
管理者として重要なメンタルヘルスマネジメント力
1- 11
スタッフの SOS をいち早く見つけることが第一歩・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 岩永 文惠
1- 13
スタッフ看護職が主体となって実践できる
時間外勤務縮減の取り組みへの支援
レビンの変革プロセスを用いた業務改善・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 青柳 薫
1- 14
時間外勤務時間の削減に向け
固定チーム・デイパートナー方式導入・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 林 靖子 066
1- 15
連携強化と意識改革が生んだ病床稼働率向上・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 西 節代 071
1- 16
ベッドコントロールセンター設置で稼働率向上
全職員のマインドがもたらした成果・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 猪原 繁美
1- 17
退院調整による稼働率向上
057
062
075
退院支援・調整の取り組みと入退院マネジメント・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 佐々木 悦子
1- 18
糖尿病センター開設をマネジメント・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 田口 真由美 084
1- 19
ピンチをチャンスに!
080
夜間の病棟看護を充実し看護職員夜間配置加算を取得・・・・・・・・ 東田 裕子 088
1- 20
回復期リハビリテーション病棟
入院料Ⅰ取得に向けた取り組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 今井 緑 092
1- 21
看護職員数増加へ向けた取り組み
意識変化のプロセスが変えた職場環境・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 螻川内 亜也美 096
1- 22
採用増を実現した看護職確保・定着策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 信夫 松子 100
1- 23
中途採用者定着向上による採用コストの削減・ ・・・・・・・・・・・・・・ 高田 麻依子 105
1- 24
脳卒中地域連携パスを通し看護の質を向上・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ 塩田 美佐代 109
[認定看護管理者の実践から学ぶ] 1-1
魅力的な職場づくりの第一歩は
新人サポート体制の見直しから
西浦 聡子
Nishiura Satoko
奈良県立医科大学附属病院 集中治療部 看護師長 / 認定看護管理者
やる気を保ち続けられる職場風土
ります。
看護師の価値観が多様化して、今までの考え方や
日本看護協会の「2014年 病院における看護職員
マネジメントでは機能しません。看護師といっても、
需給状況調査」では、2013年度の新卒の離職率は
大卒看護師、病院附属の専門学校出身者、男性看護
7.5%であり、前年より減少しています。
師、新卒だけれどもママさんナースなどが、やる気
奈良県立医科大学附属病院(以下:当院)には、
を持って配属された病院で、ずっとやる気を保ちな
教育支援室があり、看護部の教育に関する企画・運
がら就業し続けるのには、職場風土が大切であると
営を行っています。その中でも、新人看護職研修か
考えています。
ら入職 6 カ月までは、
「ストレスマネジメント」
「BLS」など、段階に応じた教育プログラムを実施
しています。また、新人看護職が相談できる場所で
010
「空気を読んでよ」の一言がきっかけに
もあります。とはいっても、所属部署ではプリセプ
本稿で報告するのは、私の所属する「集中治療部
ターやサポーターが日々悩み、早く一人前にしなけ
での新人教育」の取り組みです。集中治療部には、
ればとの思いが強く、新人の技術習得度や気持ちを
先進医療を提供する医療技術に対応し、患者の生命
考えないで、押しつけた教育になっていることもあ
危機状態に対する看護ケアを提供できるため多くの
ります。教えてもなかなか成長しない ・ わかってく
配属希望があります。しかし、優れた臨床判断能力
れない新人に、自分の指導方法が悪いのではないか
や、複数の医療機器や点滴管理などを確認するなど
と責任を感じ、バーンアウトしてしまうプリセプ
の能力の獲得は、困難を極めます。
ターやサポーターもいます。
集中治療部に配属されてまず感じたことは、①新
そのような新人教育も、少し取り組みを変えるこ
人に居場所がないこと、②毎日のように「○○さん
とで、遠回りだけれども将来的に、臨床判断に大切
ができていません」
「夜勤に入れないでください」と
な、
「気づく」ことができる看護師の育成につなが
訴えてくる先輩看護師たちがいたこと、などでした。
看護 2015. 11 月臨時増刊号
魅力的な職場づくりの第一歩は
新人サポート体制の見直しから
「その所属で当たり前のことが、当たり前ではない
土を変えることです。
ことに気づいていないなあ」というのが、率直な感
実践ポイントは 4 つです。
想でした。
1.覚えることが多いので、先輩や病棟のスタッフ
先輩看護師たちは、早く一人前になるように所属
先での習慣・ルールを教えることに集中していて、
の空気を読むことはさせない
2.そこにいてもいいんだという環境をつくる。みん
根拠を新人看護師たちに教えることができていな
なの役に立っていると感じる仕事をしてもらう
かったのです。そのため、
「何も考えない人」
「仕事
3.看護の振り返り:自分が看護において大切にし
のできる人?」を育てがちになっていたのです。
ていることを常にリフレクションする機会をつ
そしてある日、新人看護師が先輩看護師に、
「電
くる
気毛布にシーツをかけるのを手伝ってほしい」と頼
んだときに、先輩看護師が「空気を読んでよ!」と
4.私たちが慣れっこになっていることが、新人に
は重い
放った一言を聞いて、
「これは、人づくりを考えな
いといけないな」と、強く気持ちが動かされました。
具体的に事例を交えて考えていきましょう。
今、忙しいのなら、
「後でもいい?」
「10分後でもい
1)
覚
えることが多いので、先輩や病棟のスタッ
い?」
「○○さんに頼めないかな? ごめんね」と答
フの空気を読むことはさせない
えてあげれば済むことです。その場で、対応したス
「あの子、私が、物品を片づけているのに、あり
タッフに話をしましたが、このようなことが毎日、
がとうございますというだけで『私がします!』と
あちらこちらで繰り返されているのではないかと思
言わない」
「報告するのはいいけど、今忙しいのに!
い、また、
「問題が表面化しにくく、新人が抱え込
考えてほしいわ」などといった話を聞くことが多く
むのではないか」と感じました。
あります。しかし、新人は患者さんのケアで一生懸
こうした場面に遭遇したことから、
「職場風土は、
命です。
「ありがとうございます」と言ってくれたの
そこにいる人が変化させていくものだから、何かを
なら、社会人として十分です。報告してくれたのな
教えることだけが教育ではなく、ともに学び・考え
ら、チームでケアをすることをよく理解しています。
ることに、視点を変化させるように導かないといけ
自分自身の思い込みの感情を変えて、チームワーク
ない」と気がつきました。そして、人によって価値
で連帯感を生みだす職場風土をつくることが大切で
観や看護観はさまざまであることに気がついてもら
す。そこにいるスタッフたちの考え方・かかわりを
えるよう、
「語る」ことから始めました。
変えることや、一言でもいい声かけが、新人の気持
師長の思いとスタッフの思いに相互理解のギャッ
ちを楽にさせていきます。
プが生じないように、
「直接の対話」で距離感を縮
2)そこにいてもいいんだという環境をつくる。
めることに力を注ぐようになっていったのです。
みんなの役に立っていると感じる仕事をし
てもらう
職場風土を変える 4 つのポイント
まず、私が取り組んだのは、新人を育てる職場風
配属されたら、業務を教え、教育し早く一人前に
なってほしいという思いが先に立ち、各病棟で教育
プランに沿った教育がなされています。しかし、新
Vol. 67 No. 14
011
発行・発売
2015 年 1 1 月 5 日
発 行 所 株式会社日本看護協会出版会
東京都渋谷区神宮前 5 - 8 - 2 日本看護協会ビル 4 階
Tel. 0436 - 23 - 3271(コールセンター:ご注文)
振替 00190 - 8 - 168557
東京都文京区関口 2 - 3 - 1
Tel. 03 - 5319 - 8017(編集直通)
発 行 人 井部俊子
編 集 工藤菜乃/濵田拓男
編集協力 株式会社自由工房
編集委員 井伊久美子/和田幸恵/長田晋一/伊藤雄介(日本看護協会)
表紙デザイン 新井田清輝
表紙イラスト 鈴木真実
印 刷 三報社印刷株式会社
定 価 本体 1,800 円+税