腰椎分離症(ようついぶんりしょう)

腰椎分離症
(ようついぶんりしょう)
腰 椎 分 離 症とは?
スポーツを愛 好する発 育 期の 青 少 年に起こる腰 椎
( 腰 の骨 )
の 疲 労骨 折です。野 球 、
サッカー、
バスケットボ ール、
陸上
などの 選 手に多く見られます。学 童 期
( 6 -12 歳 )
の 腰 痛 症 の50%が 腰 椎 の 疲 労骨 折であると言われています。
[なぜ 分 離 症になるの?]
スポーツ活 動中の 腰をそらす動きや腰をひねる動きなど、
腰 椎に繰り返しストレスを加えることが 原因です。
[ 分 離した腰 椎はもとに戻らないの?]
以 前は
“ 腰 椎 分 離 症は先 天 性であるため、
治らない”
と言われていました。
しかし研 究 が 進むにつれ、
“ 腰 椎 の 疲 労骨 折で
ある”
ということがわかり、
適 切な治 療により治 癒することが 証 明されました。
神経
腰椎
腰椎
神経
椎間板
分離(骨折)
横から見た図
上から見た図
早期発見・早期治療がカギ
分離 ( 骨折 )
腰 椎 分 離 症 が 疑われた場 合は速やかに医 療 機 関を受 診し、
早 期 発 見・早 期 治 療を行うこと
で良 好な経 過 が 得られると言われています。
また、
骨の 成 長 が 未 熟な時 期に分 離 症になると、
腰 椎すべり症になる危 険 性 が あるため、
骨 癒 合 が 期 待できる時 期であれば 、
積 極 的に骨を癒 合させる治 療 が 必 要になります。
[ 小 学 生 ]骨 の 成 長 が 未 熟
→ [ 中 学 生 ]一 部 成 熟
→ [ 高 校 生 ]骨 の 成 長 が 完 了
[ 腰 椎すべり症とは?]
腰 椎 が 前にすべってしまう病 態で、
腰 椎 が 分 離してしまうことで発 症することが あります。
腰椎すべり症
脊 髄 神 経を圧 迫し、
しび れ・足 の 痛みなどの 神 経 症 状を引き起こすことが あります。
※学 童 期
( 6 -12 歳 )
に発 症した腰 椎 分 離 症 が 進 行すると、
すべり症に移 行する場 合もあると言われています。
分離症を調べるには
症 状により、
レントゲン検 査 、
M R I検 査 、
C T 検 査などの 検 査を行う場 合 が あります。
定 期的に検 査を行い、
現 状を確 認しながら治 療をすすめていきます。
[ M R I検 査でわかること]
分 離 症 の 進 行 程 度 がわかります。
分 離 症 初 期では、
左 の図のように白く写ります。
この 変 化 が あれば 骨 癒 合 が 期 待できるとされています。
[ M R I検 査 ]
[ CT検 査 ]
[ C T 検 査でわかること]
腰 椎 の 状 態 がわかるため、
数回
(最小限)
の 検 査を行います。
骨の 状 態によって初 期、
進 行 期、
終 末 期に分 類できます。
また、
C T 検 査により下 の図のように骨 癒 合 が 確 認 出 来ます。
(例)
[ 初 診日]
骨の 部 分 が 薄くなり
分 離 が 確 認 出 来ます。
[1.5カ月後 ]
時間差で分 離がはっきりします。
※骨吸 収 期といいます。
早期発見・早期治療し完治した一例
初 期、
進 行 期では骨 癒 合 が 期 待できますが 、
終 末 期では骨 癒 合 が 困難とされています。
また、
早 期 発 見・早 期 治 療した場 合は3ヶ月で治 癒するけれど、
進 行 期の 場 合は6ヶ月かかる、
とも言われています。
そのため、
分 離 症は早 期 発 見・早 期 治 療 がとても大 切です。
[ 初診 ]
[ 2ヶ月経 過 ]
[ 3ヶ月経 過 ]
[ 4ヶ月経 過 ]
YONEDAの取り組み① ー放射線被ばくの低減ー
CT検査の工夫
C T 検 査はレントゲン検 査と比 べ 放 射 線 被ばく量 が 多いといわれていますが 、
当院は患 者さんの 安 全を考え放 射 線
被ばくの 低 減に努めています。C T 検 査は分 離 部 のみ 撮 影するため、
比較的少量
( 腰 椎 全 体 撮 影と比 較し1/ 4 以 下 )
に抑えて検 査しています。 ※多くの 一 般 的な病 院では腰 椎 全 体 撮 影を行っています。
C T 検 査による被ばく量
その 他 の 被ばく量
[ 当院 の 撮 影 方 法
( 分 離 部 のみ )]
1.5mS v ※実 効 線 量
[ 一 般 的な撮 影 方 法
( 腰 椎 全 体 )] 6.4mS v ※実 効 線 量
[自然 放 射 線 量 ]
1.
4mSv/ 年(日本 平 均 )
[ 臨 床 症 状 が 確 認されない放 射 線 量 ]
100mSv/ 年
[ 一 般 的な撮 影 方 法
( 腰 椎 全 体 )]
およそ
6.4
mSv
[ 当院 の 撮 影 方 法
( 分 離 部 のみ )]
およそ
1.5
mSv
一 般 的な撮 影 方 法 の 場 合 、
情 報 量 が 多い 分
被ばく量も多くなってしまいます。当院では
最 小 限 の 被ばく量で充 分な 情 報 が 得られる
よう工 夫しています。また、
腰 椎だけでなく
卵 巣など大 切な器 官も被ばくしてしまうため、
被ばく量を最 小 限に抑えるよう努めています。
M R Iの 活 用
M R I検 査は、
磁 気を利 用した検 査であり放 射 線 の 被ばくが ないため、
安 心・安 全に検 査を受けていただくことが 可 能です。
また、
C T 検 査だけでなくM R I検 査を行うことにより、
さらに詳 細に分 離 部 の 経 過を確 認することができます。
どうやって治すの?
症 状や経 過にもよりますが 、
スポ ーツ復 帰には3−6か月ほどかかるといわれています。
「 出 来 ないこと」
もありますが
「 今しか出 来 ないこと」
もあります。 レベ ルアップして復 帰するため、
しっかり自己 管 理をしていきましょう。
[ 体 幹トレーニング ]
インナーマッスルのトレーニングで体 幹
(胴体)
の 安 定 性を向上させます。
腰 の 安 静は必 要ですが 、
できるトレーニングもたくさんあります。
[ジャックナイフストレッチ]
股 関節、
脊柱
(背骨)
、
肩甲骨の 動きの 悪さは腰 へ のストレスが 増 加します。
体 が 硬いままでは、
骨が 癒 合しても再 発してしまう可 能 性 が あります。
復 帰に向けて、
柔 軟 性を向上させましょう。
[日常 生 活 の 注 意 点 ]
腰 椎 のストレスを減らすには装 具だけに頼らず 安 静にする努 力も必 要です。
スポーツ、
日常 生 活での 急 激な運 動、
腰に負 担 のかかる格 好は、
意 識して控えるようにしましょう。
[コルセット]
装 具で腰 の 安 静を保ち、
腰 椎 へ のストレスを減らします。
症 状や経 過により、
お風呂、
就 寝 時 以 外は装 着していただくこともあります。
YONEDAの取り組み② ー医接連携ー
初めて当院を受 診された方 の 約15%は、
接 骨院を開業されている柔 道 整 復 師 の 皆 様からご 紹 介いただいた患 者さん
です。
ご 紹 介いただいた腰 痛 症 状 のある学 童 期
( 6 -12 歳 )
の 患 者さんの中には、
当院でM R ・
I C Tを用いて腰 椎 分 離 症を
早 期 発 見し早 期 治 療を行うことができた方も多くいらっしゃいます。
腰 椎 分 離 症 の 患 者さんの 治 療は、
コルセットの 装 用やストレッチなど日常 生 活に密 着した管 理が 必 要になりますが 、
良 好な医 接 連 携
( 医 療 機 関と接 骨院 の 先 生 方との 連 携 )
により、
さらに患 者さんの 生 活に即した管 理 指 導を行うことが
できます。
接 骨院 の 先 生 方から当院 へ 患 者さんをご 紹 介いただく際には、
情報提供書
( 患 者さんの 情 報や施 術内容 )
をいただき、
診 察 の 結 果や今 後 の 療 方 針について当院からもご 返 答するなど、
良 好な医 接 連 携をはかっています。
はじめての受診からスポーツ復帰までの流れ ーおおよそのめやすー
下 記は基 本 的な治 療スケジュールですが 、
治 癒には個 人 差が あります。
M R IやC T 検 査 、
また痛みなどの 症 状から、
医師 の 判断によりスケジュールを変 更することが あります。
はじめての 受 診
レントゲンやM R I、
C Tなどの 検 査を行い、
分 離 の 進 行 の 程 度や腰 椎 の 状 態を分 類し、
治 療スケジュールをたてます。
体 幹 装 具 着 用での 生 活を開 始します。
腰を反る、
回すなどの 動 作や、
早 歩き、
自転 車、
走 行、
スポーツなどを中止します。
LIPU (
S 骨 治 療 用超 音 波 装 置 )
で骨 癒 合を促します。
太ももの 筋肉や肩甲骨まわりの 筋肉のストレッチやトレーニング 、
体 幹 のコアトレーニングを指 導していきます。
1.5ヶ月後
M R IやC T の 検 査を行い、
分 離 の 進 行 の 程 度や腰 椎 の 状 態を確 認します。
状 態 がよければ 、
早 歩きが 許 可されます。
3ヶ月後
M R IやC T の 検 査を行い、
分 離 の 進 行 の 程 度や腰 椎 の 状 態を確 認します。
状 態 がよければ 、
自転 車や走 行 が 許 可され、
ストレッチやトレーニング がステップアップします。
骨 治 療 用超 音 波 装 置 の 使 用を終 了します。
4.
5か月後
M R IやC T の 検 査を行い、
分 離 の 進 行 の 程 度や腰 椎 の 状 態を確 認します。
状 態 がよければ 、
日常 生 活での 体 幹 装 具 着 用を終 了し、
運 動時 のみ 着 用します。
医師 の 判断により、
体 育 の 授 業や競 技 へ の 参 加が 可 能になります。
競 技 の 特 性に合わせたリハビリを行っていきます。
YONEDAの取り組み③ ー研究ー
当院は腰 椎 分 離 症 の 治 療に注 力しており、
毎 年 複 数 の 全 国的な学 会に参 加し、
発 表 活 動を行うなど日々研 鑽しています。
[ 文 献 −最 新 の 見 解− ]
■ 腰 椎 分 離 症 の 診 断および 治 療 上、
C T の 応 用は確 実な診 断、
分 離 部 形 態 の 把 握と予 後 判定 上に有 用
[ 小 林 良 充 : C T 像による成 長 期 腰 椎 分 離 の 分 類とその 有 用性. 整・災 害,
32:16 25 -1634,1989 ]
■ 椎 弓部 の 高ストレスと高 信 号 の間の 相関が あることは、
M R Iにおける信 号 変 化 が 分 離 症 の 早 期診 断に
有 効となり得ることを示唆 。
[ 西 良 浩 一 : M R I sig nal chang e s o f t he p e dicl e a s an indic a t or f or e arl y dia g no sis o f
sp ond y l ol y sis in chil dr en and A dol e s c en t s - a cl inic al and biome chanic al s t ud y .
Spine 31:206 - 211,2006 ]
■ ・ 腰 痛を主 訴とする18 歳 以 下 の 受 診 者 の26.2%に急 性 期 腰 椎 分 離 症 の 所 見 が 得られた。
・ 好 発 年 齢は13 -16 歳で80%以 上を占めた。
・ 早 期診 断、
早 期 治 療 のためには、
本 人または家 族 へ の 十 分な説 明が 必 要。
・ スポーツ整 形 へ の 早 期受 診 、
早 期診 断により治 療 期間を短 縮し、
早 期スポーツ復 帰を目指すことが 求められる。
[ 大 場 俊 二 : 腰 椎 疲 労骨 折 治 療 期間の 短 縮.
日本 整 形 外 科スポーツ医 学 会 誌 Vo
l.
31 No 2 2011 ]
[ 当院 の 発 表 活 動 ]
■ 岡田章 平 : 成 長 期 腰 椎 分 離 症 の臨 床 症 状からみた早 期 発 見 へ の 指 標 −当院での 患 者 調 査から−
[ 日本 柔 道 整 復 接 骨医 学 会 ]
■ 伊 藤 芳 恵 : 腰 椎 分 離 症 の 保 存 療 法における骨 癒 合 期間の 比 較
[ 日本 柔 道 整 復 接 骨医 学 会 ]