「尊い命を大切に生きよう」

「尊い命を大切に生きよう」
秋田県 洞雲寺住職 柴田康裕
四月八日はお釈迦様の誕生日・花まつりの日です。別の言い伝えでは、五月の満月
の日が誕生日だという説もございますが、日本ではだいたい四月八日となっているよ
うです。
地方によっては旧暦の四月八日に合わせて行われているところもございますが、各
地で花祭りの行事が厳かに、また華やかに営まれております。
お釈迦様はお生まれになるとすぐに七歩歩まれ、一方の手で天を指さし、一方の手
で地を指さしながら、「天上天下唯我独尊」とおっしゃったと言われています。これ
は「天にも地にも命は一つ」という、尊い命の宣言に他なりません。
私たちの命は、それがどんなに小さなものであっても、天にも地にもたった一つし
かない、かけがえのない尊い命であり、その尊い命をお互いに大切にしていくことが、
お釈迦様の誕生のお言葉に込められた願いでもあるのです。
このような尊い命を大切に生きるためにも、日々精進を重ねながら、より良い方向
へと進んでいく努力を怠ってはなりません。それは単に財産を増やすとか、名誉栄達
を得るということだけではなく、むしろ自分自身の内なる心の向上に努めるというこ
とです。
「玉は琢磨によりて器となる。人は練磨によりて仁となる。」
という言葉がございますが、どんなに素晴らしい原石であったとしても、磨かなけれ
ば光を放つことはありません。それと同じように、人は日々精進を重ねることによっ
て、はじめて人となるのです。
『法句経』の中に、
しょう
ひとの生を
うくるはかたく
やがて死すべきものの
いのち
いま生命あるはありがたし
みのり
正法を
耳にするはかたく
みほとけ
諸仏の
世に出づるも
ありがたし
という言葉がございます。
私たちは、そのありがたい命・受けがたい命を幸いにして受けることができました。
その上、正しいみ教えに出会うこともできました。
そのことに喜びと感謝の心を抱きながら、お釈迦様、道元禅師・瑩山禅師の両祖様
のみ教えにしたがい、尊い命をよりよいものにしていく努力をお互いに続けて参りま
しょう。