---------- 1948 年 海外 ----------1 月 インド 独立の父ガンジーが暗殺される。 ガンジーといえば「非暴力・不服従」が合言葉だが、なかなかそれを貫 くのは難しい。インドは多数のヒンドゥー教徒と少数のイスラム教徒が 足並みを揃えることができないでいたから、一度、運動は下火になって いた。それは独立を阻止したいイギリスの計画でもあったが、また運動 を再燃させて、インドはなんとか独立を果たした。しかしイスラム教徒 とは両立できないと思っていたヒンドゥー教徒の人間に、ガンジーは暗 殺されたのである。彼が暗殺された場所は今、博物館になっている。彼 はヒンドゥー教徒だが、お墓もある。 1 月 ビルマ(現ミャンマー)がイギリスから独立する。 2月 インド近くのセイロン島がイギリス自治領として独立する。 5月 パレスチナにイスラエル建国宣言 その数時間後に、第 1 次中東戦争=パレスチナ戦争が起きる。 2000 年ほど前(!) 、 「パレスチナ=神がイスラエルの民に与えた約束の地」と呼 ばれている、地中海に面する現在のエルサレムとその周辺の土地には、ユダヤ 教を信じて、何とか王国を保っていたユダヤ人たちがいた(彼らは「ヘブライ人」とか 「イスラエル人」とも呼ばれる)。西暦 130 年ごろにユダヤ国はローマ帝国との戦争に 負けて国を失い、世界各国へ散らばっていった。他国で仕事がなかったユダヤ 人たちは「汚い仕事」と思われていた金融や情報収集を主に職業にして、次第 に熟達していき、富を蓄積した。しかし「オレたちに金が回ってこないのはユ ダヤ人のせいだ」と、迫害されては追放される、を繰り返していた。シェイク スピアの傑作劇「ベニスの商人」の中に出てくるシャイロックというユダヤ人 商人は「契約を守れなければ、あなたの体から肉を 1 ポンドいただく(1 ポンドは 約 200 グラム)」などと要求するような悪役に描かれているのが、その典型例だ。も っとも「体から肉を生きたまま切り取る」契約は、公序良俗に反して無効である。 とにかく約 2000 年間苦労して、「ヨーロッパにはもういたくない」と考えたユダ ヤ人たちは、1897 年(日本では日清戦争の 3 年後ぐらい)に「故郷に帰ろう=シオニズム運 動」を始めた。故郷とはやはり「パレスチナ」のことだ。ユダヤ人たちは、有力な 国に、献金をしたり、情報を集めて渡したりして、第 1 次世界大戦ではイギリス などの三国協商側に協力し、とうとう 1917 年に、イギリスの外務大臣から「パレ スチナ」にユダヤ国家建設の約束を取り付けた。イギリスもユダヤ人たちの協力は ありがたかったからだ。 1 中学生のための現代史…これを読めばわかるかもしれない ---------- 1948 年 海外 ----------さて 2000 年前にユダヤ人が去った土地には別の民族が順繰りに住み着き、 西暦 600 年ごろからはアラブ人が住み着き、彼らはイスラム教の信者にな っていた。今のサウジアラビア、イラク、シリアなどの「中東」のアラブ 人たちは、第 1 次世界大戦までは、オスマン・トルコ帝国の支配下にあっ た。オスマン・トルコ帝国はドイツ・ロシアの三国同盟側で戦ったから、 アラブ人たちは、大戦後はトルコ帝国から独立する約束で、やはりイギリ スなど三国協商の味方になって戦った。民族自決を避けたいイギリスは、 20 世紀最初の オスマン・トルコ帝国の領土 ひとまず「委任統治」の手段で、エルサレム周辺の「パレスチナ」も分け与え る約束を 1915 年にアラブ人たちとの間で交わした。これは完全な二重外交、 二枚舌、ダブルブッキングだった。第 1 次大戦後、領土を奪われ、オスマン・ トルコ帝国は 1922 年に帝政が滅亡し、色々な亡国の危機を切り抜けて、現在 のトルコ共和国の大きさになり、混乱を収めた。1920 年にはイラク、ヨルダン、 シリア、レバノンが委任統治ではあるが、独立を果たす。この時「パレスチナ」 に住むアラブ人たちも独立し「パレスチナ人」になった。エジプトはイギリス の保護国だったが 1952 年の「エジプト革命」で共和国として完全に独立した。 イラクは 1935 年、レバノンは 1941 年、シリアとヨルダンは 1946 年に完全独 立を果たす。さて、周囲は砂漠で、少しだけ農業ができる日本の四国ぐらいの 「パレスチナ」はいったいどちらのものか? 第 1 次大戦後はパレスチナに 入ってくるユダヤ人はまだ少なかった。しかし 1930 年代になるとナチス・ ドイツの勢力伸長によるユダヤ人迫害、また長引く恐慌でユダヤ人への経 済的圧迫が強まったことで、一気に人数は膨れ上がった。一番責任がある イギリスは調停から逃亡し、その後をアメリカが引き継いだが、ユダヤ人 の方が献金もするし、アメリカの公民権も持っている親族が多いから、選挙 のためにユダヤ人に有利な裁定をした。その時の大統領は日本に原爆投下を 決めたトルーマンだ。そして 1948 年 5 月の「イスラエル建国宣言」となった が、不満に思っていたアラブ人たちは団結して、イスラエル建国宣言の数時 間後に始まったのが「第 1 次中東戦争=パレスチナ戦争」だ。 イスラエルにとっては、負けたらやっとこさ手に入れた国土を失って、地中海に追い落されてしまうか ら必死で、女性も軽いサブマシンガンを持って戦った。アラブ側の足並みもそろわなかったので、結果 はイスラエルの勝利。このようないきさつから、アメリカとイスラエル 対 アラブ世界は犬猿の仲にな ってしまった。この後、中東戦争は 3 回も勃発する。1973 年の「第 4 次中東戦争」は「石油戦略」とい うエネルギー問題を生み、日本にも「第 1 次オイル・ショック」が押し寄せる。問題が問題を生み、現 代でも火種をかかえている場所が、中東 middle east である。 2 中学生のための現代史…これを読めばわかるかもしれない ---------- 1948 年 海外 ----------5 月 パレスチナ難民問題が起きる。 第 1 次中東戦争でイスラエルによってパレスチナから追い出された約 100 万人の人々が行き場を失い 「難民」になる。これが後に「パレスチナ解放機構 PLO」の設立につながる。 6 月 ドイツで「ベルリン封鎖」が起きる。 通貨改革を無断で行ったことにソ連が腹を立て、ベルリンに入る陸 路を封鎖した。そのためアメリカが主体になって封鎖されている地 域に 1 日 250 機の飛行機を送って「ベルリン空輸」を行った。これ は 49 年 5 月まで続く。ドイツは国土の西側はアメリカ・イギリス・ フランスが、東側はソ連が 4 か国分割統治していた。ここから「西 側陣営=資本主義諸国」 「東側陣営=社会主義諸国」と呼ばれるように なった。首都 ベルリンはドイツ東部にあるので、ソ連が 統治するはずだったが、主要な統治機構、ナチス・ドイ ツ内部の公文書、大衆の扇動方法とヒトラーやその部下 たちについての記録、ユダヤ人に施した人体実験の医学 データ、ミサイルやテレビ技術のデータなど、研究する べきものが大量に残されている、などの理由からベルリ ンも 4 か国で分割統治することにポツダム協定で決まっ ていた。 8 月 大韓民国が建国 代表は李承晩(イ・スンマン 日本語読みではリショウバン)で、アメリカを中心に 海外で独立運動をしていた。日本敗戦ののち帰国して、アメリカの後押しで初代 大統領になった。日本嫌いでバランス感覚の良い政治家ではなく、民衆の生活を 圧迫する政治を行った。朝鮮戦争は乗り切ったが、1960 年に失脚した。 9 月 朝鮮民主主義人民共和国(いわゆる北朝鮮のこと)が建国 代表は金日成(キムイルソン日本語読みはキンニッセイ)で、ソ連の後押しで主席にな った。朝鮮で抗日の英雄とされているが、金日成を知っている者は「あれはソ連が 送り込んできたニセモノで、本物はソ連軍に謀殺された」という証言をよく聞く。 朝鮮は北と南に分かれてしまい、まだ統合されていない。もっとも統合されるのは 北朝鮮の体制が崩壊してからだろうが、それまで大韓民国の経済が持つか不安。 3 中学生のための現代史…これを読めばわかるかもしれない ---------- 1948 年 日本 ----------12 月 GHQ が日本に対して「経済安定 9 原則」を発表する 冷戦の激化によって、アメリカは日本の経済復興に強い希望と関心を持ち、1948 年 7 月、アメリカ国 家安全保障会議は、日本の経済政策について、経済復興を主要目標とすることを決定した。その原則は、 (1)予算の均衡=バランスよく国力を蓄えろ、(2)税金をキチンと取り立てる、(3)むやみに銀行は金を貸さ ない=金融引き締め策を取れ、(4)賃金を安定する、(5)物価の上昇を抑える、(6)外国為替管理を強化して 外貨流出を防ぐ、(7)輸出増加のための資材割当てを能率的にする、(8)重要国産原料、製品を増産する こと、(9)食糧計画の能率向上を図る、だった。日本の激しいインフレを収める目的でもあった。当時、 日本では、復興のために日本銀行が、国債引き受けを実行していて、通貨の増発が繰り返されていたた め、インフレが急激に進んでいた。そこでこの九原則の実施によって、経済の安定と、経済復興を求め たのである。この考え方は、翌 49 年にドッジ・ラインによって推進され、物価は急速に安定化の方向 をたどり、1 ドル=360 円の固定為替レートが設定される。 太宰治が「人間失格」 、大岡昇平が「浮虜記」を出す(~51 年まで) 4 中学生のための現代史…これを読めばわかるかもしれない
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