出 マルチパスリ ッチ環境を実現する 電波反射箱 - 唐沢研究室

マ ルチ パ ス リッチ環境 を実現す る電 波反射箱
マル チパ ス リッチ環境 を実現 す る
電波反射箱
論 文
―
電 波 吸 収 シ ー トを用 い た 環 境 制 御 ―
*大
佐 々木 克 守
**唐
島 一 郎
沢 好 男
中
広 帯域 無線 通信 シ ス テ ム で は, マ ル チ パ ス リッチ環境 での性 能評価 が 不可 欠 で
あ り, 簡 易 に マル チパ ス リッチ環 境 を実現 す る方 法 と して電 波反射 箱 が提案 され
てい るが, 従 来 の 電 波 反射 箱 内 にお ける伝 搬 環境 特性 の コ ン トロ ー ル は 困難 で
あ った。本 報告 で は, 反 射箱 内部 に設置 した電波 吸収 シ ー トの 大 き さを変 化 させ
る こ とで, 遅 延 プ 回 フ ァイル や 交差偏 波識別度 な どの伝 搬特性 が容易 に変更可 能
であ る こ とを明 らかにす る。
“
なお , 本 稿 は 佐 々木 克守, 大 島 一 郎 , 唐 沢好男 , マ ル チ パ ス リッチ環 境 を実現
す る電波反射 箱 [ 工 ] , 信 学技 報 A P 2 0 0 8 - 7 7 , P P . 1 3 - 1 8 , 2 0 0 8 . 9 " の 一 部 を改
008 1EICE)。
編 して転 載 した もの であ る ( c o p y r i g h t2⑥
が容易 に変更可能 である ことを示す。
は じめ に
近年 の 広帯域 無線 通信 システ ム にお い て は, マ ルチ パ
ス に よる通信 品質劣化対 策 が 不可 欠 とな って い る。そ の
一方 で
t p u t ) シ ス テ ムの よ
, M I M O ( M u l t i ―I n p u t M u l tOiu―
パ
マ
ル
ス
チ
を積 極 的 に利用 す る研 究 も進 め られてお
うに
2.電
波 反 射 箱 の概 要
電波反射箱 の外形寸法 と外観 を, 図 1 , 写 真 1 に 示す。
どで は実用化 されて い る。
これ らの伝 送特性 評価 には, 計 算機 や フェー ジ ン グ シ
り, 既 に, 無 線 L A N な
ミュ レー タに よ る シ ミュ レー シ ョ ン, 実 環 境 試験 な ど
様 々 な手段 が用 い られ て い るが , そ れぞ れ長 所 短所 が あ
る。計 算機 シ ミュ レー シ ョンは, 手 軽 で 再現性 が 良 い な
ど多 くの 利 点が あ る反面, 変 復 調 器 や ア ンプの 非線 形 ひ
ず み な ど も含 め た無線機 の特性 を完全 に モ デ ル化 す る こ
どが 難 しい 。一 方 で , フ ェ ー ジ ン グ シ ミュ レー タは, 無
線 機 の特性 評価 に好 適 で あ るが , 一 般 的 にた いへ ん 高価
で あ る。 当然, 実 環境 での 試験 が可 能 で あれ ば 申 し分 な
い が , 電 波免 許 の取 得 や再現性 の 点 で 困難 が 伴 う こ と も
出入 り回
図 1 電 波反射箱 の外形寸法
多 い。
そ こで, シ ミュレー ションと実環境試験 の 間を埋める
よ うな試験環境 として, 簡 単 な構造で マルチパ ス リッチ
( 1 )0∼
。 しか
環境 を実現する電波反射箱 が報告 されてい る
し,電 波反射箱 の伝搬環境特性 は, シ ー ル ドルー ムの大
きさや構造 に依存す るため, 伝 搬環境特性 のパ ラメー タ
の コン トロー ルが困難 であった。本報告 では, 電 波吸収
シー トを電波反射箱 内 の特 定 の場所 に設置す る こ とで,
遅延 プ ロファイルや交差偏波識別度な どの伝搬環境特性
* 機器統括 部 技 術 部
米* 技術 開発統括 部 電 気通信 開発部
ネ* * 電気通信大学教授
12
写真 1 電 波反射箱 の外観
電興技報 No.43,2009
マ ルチ パ ス リッチ環境 を実現す る電 波反射箱
製作 した電 波 反射 箱 は, 6 面 が ア ル ミニ ウ ムの パ ネ ル
で 岡 まれた, 高 さ 2 m × 幅 4 m × 奥行 き 2 m の 直方体 で あ
る。ア ル ミニ ウ ム 製 フ レー ム に, ア ル ミニ ウ ムの シー ト
電波 反射 箱 は, 2 m 角 の立 方体 の 箱 を 2 つ 連結 させ
献( 1 ) の
て使 用 して い たが , 本 反射 箱 にお い て は一 体構 造 と して
口0]マや
眠ヽ
[
が コ ー テ ィ ン グ され た 樹 脂 製 の 板 を取 り付 け た 構 造 と
なってお り, 軽 量 か つ 十分 な強度 を持 って い る。 また, 文
い るため , 密 閉性 が増 して い る。
3.電
波 反 射 箱 内 の伝 搬 環 境 測 定
送信 ア ンテナ に ス リー ブア ンテナ (垂直偏波 ),受 信 ア
ンテナ に ダイポ ー ル ア ンテ ナ (垂直偏波 とな る よ う に 設
50
100
150
ア ンテナ位 置 d [ m m ]
200
(f=5 1GHz)
置 )を用 い,図 2に 示す位 置 に設 置す る。受 信 ア ンテナ を
電 動 ス ラ イ ダに取 り付 け,移 動 量 dを 0∼ 200mmま
2mmス
図 4 伝 送損失 の 空間特性
で
テ ップ (合計 101ポ イ ン ト)と し,各位 置 での伝搬
特性 を ネ ッ トワー クアナ ライザ を用 い て測 定 した。移動
lGHzに お い て約 3.4波長分 に本
量 200mmは ,5。
H当 す る。
2GHzと し,移 動量 d=Ommの
測 定周波 数 は 5.0∼ 5。
とき
図 4 に それぞれ示す。 これ らの 図か ら, 電 波反射箱 の 内
部 で, 周 波数的 にも空 間的 にも, マ ルチパ スによる激 し
い フェー ジングが発生 してい る こ とが よ くわかる。
の 送受信 ア ンテナ 間隔 は 2.4mと す る。 ‐
d=Ommの
測 定 ポ イ ン トにお け る受信 電 力 の 周波 数特
lGHzに お け る 受 信 電 力 の 空 間特 性 を
性 を図 3に ,f=5。
4.電
波 反 射 箱 内伝 搬 環 境 の 統 計 的 性 質
4口
1 受 信 レベルの累積確率分布
測定 した周波数 ・空 間特性 デ ー タ (周波数領域 1,601ポ
イ ン ト×空間領域 101ポイ ン トの合計 161,701ポ
イ ン ト)
24m
E O 十 E O r
か ら算 出 した伝搬損失 の累積確率分布 (CDF)を 図 5に
示す。受信電力分布 の 中央値 は -29.7dBであった。破線
は算出 した CDFと 同 じ中央値 を持 つ レイリー分布理論
値 の CDFで あ り,両者は よ く一致 してい る。この こ とか
ら,本 反射箱内 のマルチパ ス環境 は レイリー フェー ジ ン
グ環境 である と解釈 で きる。
4.2 遅延 プ ロフ ァイル と交差偏波識別度
図2 ア
次に,正 偏波成分 と交差偏波成分 の遅延 プ ロ ファイル
ンテナの 設置位置
冊 蝉裡 昧
∞0]貿一
賦や
い
105
一
MeaSured
一― ―― R a y l e g h
5050
5+00
周波数 [ M H z ]
5150
5200
10
(d=Omm)
-80
-70
-60
-50
-40
-30
-20
受信 レベル [ d B ]
図 5 受 信 レベ ルの 累積確率分布
図 3 電 搬損 失 の 周波数特性
電興技報 No.43.2009
13
マルチパス リッチ環境 を実現する電波反射箱
を求 め る。交 差偏 波 につ い て は, 受 信 ア ンテナ のみ を水
ル が上 昇 し, 遅 延 時 間が お よそ 0 。
2∼ 0。
3 μ
s に お い て, 正
平 偏 波 とな る よ う設 置 し, 垂 直 偏 波 の 測 定 時 と 同様 に
偏 波 成 分 とほぼ 同 じレベ ル に到達 して い る。図 7 に , 受
d = 0 ∼ 2 0 0 m m , ス テ ップ 2 m m の 各位 置 で伝 搬特性 を測
信 ア ンテナの 偏 波 を垂 直 お よび水平 に した ときの 累積確
定す る。
遅延 プ ロ フ ァイ ル は, 伝達 関数 T ( f ) の逆 フー リエ 変換
率 分 布 を 示 す。 垂 直 偏 波 の 受 信 電 力 分 布 中 央 値 が
- 2 9 . 7 d B に 対 して , 水平偏 波 での 中央値 は - 3 1 . 2 d B で あ
に よって 得 られた イ ンパ ルス応答 h ( τ) に よ り, 文 献( 4 ) の
り, 本 反射 箱 の 交差偏 波 識 別度 は 1 . 5 d B であ る こ とが わ
よ う に定 義 され る。伝 達 関数 は測 定 に よ り周
式 (3.22)の
か った。
波 数特性 と して得 られて い るので , 測 定周 波 数範 囲 を積
分 区 間 と して 各測 定 ポ イ ン トの イ ンパ ル ス応 答 を算 出 し
4 . 3 空 間相 関
て電 力平均 す る こ とで , 遅 延 プ ロ フ ァイル を得 る こ とが
d=Ommの
測 定 ポ イ ン トで の 伝 達 関数 を基 準 と して ,
各測 定 ポ イ ン トの 受信 電力変動 の相 関係 数 を算 出 した グ
で きる。
算 出 した遅延 プ ロ フ ァイ ル を図 6 に 示 す。τ< 5 μs の
ラ フ を 図 8に 示 す。 横 軸 は 測 定 ポ イ ン トの 位 置 を
区 間 で ほぼ 直線 と見 なす こ とが で き, 指 数 関数 で近 似 で
きる こ とが わか る。正 偏 波 成分 の 遅延 スプ レ ッ ドは, 文
f=5.lGHzで の 波 長 (=58.8mm)で 正 規化 して い る。 また ,
破 線 は,レ イ リー フェ ー ジ ン グ環境 にお い て マ ル チ パ ス
献( 4 ) の
式 ( 3 . 2 4 ) より算 出す る こ とが で き, 積 分 区 間 を 0
波 が 角 度的 に一 様 に到 来す る場合 の 空 間相 関特性 の 理論
≦ τ≦ 5 μ
s と して計算 した結果 0 . 6 1 sμと な り, 屋 外 に
値 で あ り,文 献(4)の
式 (4.31)より算 出 した もの であ る。
匹敵 す る大 きな遅延 スプ レッ ドが 得 られ て い る。
理 論値 と測 定値 は類 似 してお り,本 反射 箱 内 の 到 来角
度分布 は,統 計 的 に周 囲 一 様 分布 で あ る こ とが 推 定 で き
同 じ寸法 で あ るが , よ り大 き
本電波 反射 箱 は文 献( 1 ) と
な遅 延 ス プ レッ ドが 得 られ て い る。 これ は, 本 反射 箱 の
る。
密 閉度が 高 ぐ, よ り電波 が漏 れ に くい構 造 で あ るため と
4.4 反 射 箱 内伝 搬環境 の位 置特性
考 え られ る。
交差偏 波成 分 につ い て は, 反 射 を繰 り返す こ とで レベ
次 に,電 波 反射 箱 内 の 受信 ア ンテナ 設置位 置 に よる伝
搬 環境特性 の 変化 につ い て 検討す る。測 定 開始位 置 dを
ず ら し,0∼ 300mmま
H偏 波
V偏 波
で 100mm刻 みで 変化 させ ,同 様
の 測 定 を行 った。図 9に ,そ れぞ れ の 測 定 開始位 置 の場
0
6
・
0
7
・ 現 で きて い る こ とが 確 認 で きる。
0
8
・ また,各 測 定 開始位 置 にお け る正 偏 波成 分 の 遅 延 ス プ
6D R慨孜 翠
合 の 累積確 率 分布 を示 す。 い ず れ の 測 定 開始位 置 にお い
て もほ とん ど変化 は無 く,レ イ リー 分布 の伝 搬 環境 が実
0
9
・
レ ッ ドを図 10に 示す。い ず れの測 定 開始位 置 にお い て も
0
0
︲
0.61 sμ
と な った 。 また,交 差偏波識 別 度 を図 11に 示 す。
0
︲
︲
遅 延時間 (μs)
遅
交 差 偏 波 識 別 度 もほ とん ど変 化 せ ず,約 1.4∼1.5dBと
延 時間 (μs)
な った。
図6 遅 延プロファイル
さ らに,図 12に 空 間相 関特性 を示す。い ず れ の測 定 開
黙 雄 駆翠
10
-80
-70
-60
-50
-40
-30
-20
受信 レベル [ d B ]
図 7 V/H偏
14
1
15
2
25
受信 ア ンテナ移動量 ( 九)
波受信 レベ ルの 累積確率分布
図 8 空 間相関特性
電興技報 No.43,2009
マ ルチ パ ス リッチ環境 を実現す る電 波反射箱
09
08
07
慈 雑駆理
冊 翠裡 昧
06
05
04
03
/:!│
02
/1//
考■│ │
10
01
106[
-80
-70
-60
-50
-40
-30
0
-20
0
05
受信 レベル [dB]
1
15
2
25
3
3
受信 ア ンテナ移動量 ( 九)
図 9 測 定開始位置をずらした場合の累積確率分布
図1 2 測 定開始位置をずらした場合の空間相関特性
始位 置 にお い て も, 空 間相 関特性 の 変化 が小 さい こ とを
確 認 で きる。
09
以上 よ り, 本 反射 箱 にお い て は, ス ライ ドレー ルの 移
動 方 向 にお い て, ± 5 0 0 m m の 範 囲 内 で レ イ リー 分 布 が
08
″
▲卜 ヽ思卿
行主と 、
保 たれ , ま た, 到 来角 度分布 が 一 様 分布 であ る と推 測 す
る こ とが で きる。
波 吸 収 シ ー トに よ る 伝 搬 環 境 制 御
5,電
1 電 波吸収 シ ー ト設置 時 の伝 搬環境
5。
電波 反射 箱 内 にお け る遅延 ス プ レ ッ ドは,電 波 反射 箱
0
50
100
150
200
250
測定 開始位 置 d ( m m )
図1 0 測 定開始位置をず らした場合の遅延スプ レッド
の 大 きさや密 閉度 に依存 す る。そ の ため ,電 波 反射 箱 内
300
の伝搬 環境 を変 更す るため には,電 波 反射箱 の 寸 法 や形
状 ,壁 面 の材 質 な どを変 更す る必 要 が あ り,コ ン トロ ー
ルが難 しい。
そ こで , 電 波 吸収 シー トに よる伝搬 環境 の 制御 につ い
て検 討 を行 った。図 1 3 に 示 す よ うに, 電波 反射 箱床面 の
中央 に電 波 吸収 シー トを置 き, 伝搬 環境 特性 を確 認す る。
電 波 吸収 シー トは, 厚 み が 約 1 9 m m で , 5 G H z 帝 にお け
衝 D 理 試縦 終 暉 根 枢
る 電 波 吸 収 量 ( 垂直 入 射 時 ) が 約 2 0 d B の もの を使 用 し
た。電波吸収 シー トの 大 きさは, 一 辺 a を 0 . 2 ∼0 . 6 m ま
98帆 1
24m
︱
︱
▼
一
d
I
0
50
100
150
200
250
300
測 定 開始位 置 d(mm)
T
0
・︱
05
EO r
Eo r
1
図1 1 測定開始位置をずらした場合の交差偏波識別度
図 13 電 波吸収 シ ー トの 設置位置
電興子
支報 No.43,2009
15
マ ルチ パ ス リッチ環境 を実現す る電 波反射箱
V偏 波
′
▲卜 К赳 卿
行主と 、
R
H偏 波
R
嬰如
0
甥屯
s)
遅延時間 ( μ
遅
s)
延時間 ( μ
02
(a=02m)
01
図 1 4 電 波吸収 シ ー ト設置時 の 遅延 プ ロフ ァイル
0
0
01
02
03
04
05
06
電波吸収 シー トの 一 辺 の長 さ a ( m )
衝E R慨按 翠
遅
H偏 波
図 1 7 電 波吸収 シ ー トの 大 きさ特性 ( 遅延 ス プ レ ッド)
s)
s)
遅 延時間 (μ
(μ
(a=04m)
衝E 盟 誤縦巣暉搬侶
s)
遅延時 間 ( μ
。
。
0
0
0
4
1
・
5
・ 6
・ ﹃ 8
・ 判 m ︲
衝O R限萩翠
0
0
0
0
0
0
0
4
︲
0
7
8
,
・
・
﹃ 6
9
・ ︲
︲
V偏 波
図 1 5 電 波吸収 シ ー ト設置時 の遅延 プ ロフ ァイル
1
衝O R概玖 翠
0
0
0
0
0
0
4
︲
・ m 6
・ 知 3
・ 9
・ 0
︲ ︲
V偏 波
05
H偏 波
0
0
01
02
03
04
05
06
電波吸収 シー トの 一 辺 の長 さ a ( m )
図 1 8 電 波吸収 シ ー トの 大 きさ特性 ( 交差偏 波識別度)
R
甥6 0
る。
遅 延時間 (μs)
また, 交 差偏波 成 分 は, 吸 収 シー トを設置 しな い場 合
と同様 に, 反射 を繰 り返す こ とで レベ ルが上 昇 してお り,
s)
遅 延時間 ( μ
(a=06m)
図 1 6 電 波吸収 シ ー ト設置時の遅延プ ロフ ァイル
で 0。
2 m 間 隔 で 変化 させ て測 定 を行 った。
図 1 4 ∼ 1 6 に , 電 波 吸収 シー トの 一 辺 が 0 . 2 m , 0 . 4 m ,
0 . 6 m の場 合 の 遅 延 プ ロ フ ァイル を示す。電 波吸収 シー ト
が大 き くな るにつ れ , 正 偏 波 ・交差偏 波 と もに減表 す る
速 度が増 して い る こ とが わか る。
図 1 7 に , 電 波 吸収 シー トの 大 きさに対 す る遅 延 ス プ
レ ッ ドの 変 化 を示 す。吸 収 シ ー トを 設 置 しな い 場 合 に
3 μ
s に お い て, 正 偏 波 成 分 と
遅 延 時 間が お よそ 0 . 2 ∼ 0 。
ベ
ほぼ 同 じ レ ル に到達 して い る。図 1 8 に , 電波 吸収 シー
トの 大 きさに対す る交差 偏 波識 別 度 の 変化 を示 す。吸収
シー トを設 置 しな い場 合 の 交差 偏波 識 別度 は 1 . 5 d B 程度
で あ るが , 0 . 6 m 角 の 吸収 シー トを設置 した場 合 は, 2 . 6 d B
まで増加 して い る。
5 . 2 電 波吸収 シ ー ト設置 時 の 位 置特 性
電波 吸収 シー ト設置 時 の , 伝 搬 環境 特性 の 位 置特性 に
つ い て検 討す る。測 定 開始位置 d を ず らし, 0 ∼ 3 0 0 m m
0 . 6 1 sμ
で あ った遅 延 ス プ レ ッ ドは, 一 辺 が 0 . 6 m の 吸収
まで 1 0 0 m m 亥 けみ で 変化 させ 測 定 を行 った と きの 累積確
率 分布 ・遅延 スプ レッ ド ・交差偏波 識 別度 ・空 間相 関 に
体 を設置す る こ とで , 0 . 2 7 sμま で低 下 して い る。比 較 的
小 さな電 波 吸収 シー トを床面 に設 置す るだ けで, 遅 延 プ
つ い て 考 察 す る。a = 0 . 6 m の 吸収 シ ー トを設 置 した 際 の
デ ー タを示す 。
ロ フ ァイル ・遅 延 スプ レ ッ ドを大 き く変 え る こ とが で き
図 1 9 に 累積確 率分 布 を示 す①い ず れの 測 定 開始位 置 に
16
電興技報 NO.43,2009
マルチ パ ス リッチ環境 を実現す る電 波反射箱
冊翌 樫 昧
02
01
10
-80
-70
-60
-50
-40
-30
-20
0
-10
0
05
1
15
2
25
3
35
受信アンテナ移動量( 九
)
受信 レベ ル [ d B ]
図 22 空 間相関特性 (電波吸収 シー トa〓0.6m設 置時)
図 1 9 受 信 ア ンテナの測定 開始位置 をず ら した場合 の
累積確率分布 ( 電波吸収 シー トa = 0 日6 m 設 置時)
お い て も変化 が少 な く,レ イ リー 分布 の伝搬 環境 で あ る
こ と が 確 認 で き る。 受 信 電 力 の 中 央 値 は, - 3 2 . 1 ∼
- 3 2 . 4 d B とな り, 偏 差 は小 さい 。
また, 各 測 定 開始位 置 にお け る正 偏 波 成分 の 遅 延 スプ
″
▲卜 ヽ思卿
行主と 、
レッ ドを図 2 0 に 示す。い ず れ の測 定 開始位 置 にお い て も
0 . 2 7 sμ
と な った。 また, 交 差 偏 波 識 別 度 も, 図 2 1 に 示
す よ うに, 変 化 は小 さ く, 約 2 . 6 ∼2 . 8 d B となって い る。
さらに, 図 2 2 に , 空 間相関特性 を示す。吸収体 を設置
す る前 と比べ , 測 定開始位置に よる変化が大 きくなって
い る。吸収体 の影響 によ り, 到 来波 の角度分布 に影響が
出始 めて い ると考 え られる。
01
0
50
100
150
200
250
測定 開始位 置 d ( m m )
以 L よ り, 吸 収体 を設置 した場合, ス ライ ドレー ルの
移動方向にお い て, ± 5 0 0 m m の 範囲内で レイリー分布
が保たれて い る ことが確認 で きる。また, 到 来角度分布
については, 吸 収体 の影響 が出始めてい る ことが確認 で
きる。
図2 0 測 定 開始位 置 と遅延 ス プ レ ッ ド
( 電波吸収 シー トa = 0 . 6 m 設 置時)
6.む
す び
電波 反射箱 内 に電 波 吸収 シー トを設 置 し, 大 きさを変
衝E 理試縦 巣暉搬枢
化 させ る こ とで , 電 波 反射箱 内 の 遅 延 プ ロ フ ァイ ルが 容
易 に制御 で きる こ とを示 した。一 辺 が 0 . 6 m 以 下 の小 さな
2 7 ∼ 0 . 6 1 sμ
の
電波 吸J 又シー トで も, 遅延 スプ レッ ドが 0 。
間 で 変更可 能 で あ る こ とを示 した。 また , 遅 延 ス プ レ ッ
ドの 変化 とと もに, 交 差偏波 識 別度 も変化 す る こ とを確
認 した。遅 延 ス プ レ ッ ドの 減 少 に伴 い, 交 差偏 波 識 別 度
が増加 し, 約 1 . 5 ∼2 . 6 d B の 間 で 変化 した。
本提 案 方式 で は, 遅 延 ス プ レ ッ ドが電 波 吸収体 の 大 き
さに対 し単調 に変 化 す るため , 制 御 が 容 易 で あ る とい え
る。 また , 吸 収 体 の 設 置位 置 ・吸収 量 に よって は到 来波
0
50
100
150
200
測定 開始位 置 d ( m m )
図21 測 定 開始位置 と交差偏 波識別度
(電波吸収 シー トa=0日6m設 置時)
250
の 角 度分布 や 反射 箱 内 の位 置特性 に影響 を及 ぼ す と考 え
られ るため , 吸 収体 の 大 きさ ・吸収量 ・設置位置 が 到 来
波 の 角 度分布 や反射 箱 内 の位 置特性 に与 え る影響 につ い
て , 今 後詳細 に検 討 して い く。
電興技報 No.43,2009
17
マルチパ スリッチ環境を実現す る電波反射箱
さらに, 現 状 では, 遅 延 スプレッドと交差偏波識別度
が同時 に変化 してしまうため, 今 後 は, 独 立に制御す る
方法 についても検討 してい く。
文 側
献
マ ルチ
篠 沢政 宏, 柏 崎 大輔 , 谷 回哲樹 , 唐 沢好 男 ; “
パ ス リ ッチ 環 境 を実 現 す る電 波 反射 箱 , " 信 学技 報
P2006-125,pp.89-94,2007-01.
MI。2へ
ndersson,C.Orlenius,A/1.Franzen;“ MIeasuring
the lmpact of A/1ultiple Ternlina1 2生
ntennas on the
Bit Rate of単
狂
oblle Broadband Systems Using
Reverberation Chamber," Smali and Smart
2へ
ntenna A/1etamaterials and 2生
pplications,IW2へT'
「
07 1nternationalヽ
ヽ
orkshop,MIarch 2007.
P―
S.Kildal,C.Orlenius;“
Characterization of A/1obile
Terrninals in Rayleigh Fading by Using
Reverberation Chamber," ICECom 2005.18th
lnternational Conference on,October 2005.
唐 沢 好 男 ; デ イ ジ タ ル移 動 通 信 の 電 波 伝 搬 基 礎 , コ
ロ ナ社 , 2 0 0 3
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
佐 々木克守
平成 10年 入社
機器統括 部 技 術 部
移動体通信 ア ンテナお よび 関連機器 の 開
発
電子情報通信学 会
大島 一 郎
平成 7年 入社
技術 開発統括部 電 気通信 開発部
移動体 通信 ア ンテナお よび マ イク ロ波 ・
ミリ波 ア ンテナの 開発
電子情報通信学 会
唐沢 好 男
電気通信大学教授
電波伝 送 ・ア ンテナ ・デ イジ タル伝送方
式 の研 究。工 学博 士
IEEEフ ェ ロー ・電子情 報通信学 会 フェ
ロ ー
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電興技報 No.43,2009