復元楽器揩鼓の最初の試奏 復元楽器揩鼓の最初の演奏は、2014 年 3 月 7 日(金)17 時、第 1 回 東洋音楽史研究国際シンポジウム“唐代音楽の研究と再現”第 2 日 のレクチャーコンサート(於上野学園大学石橋メモリアル・ホー 岡田全弘先生来訪 2 月 6 日(金)、岡田全弘本学音楽学部客員教授が来訪 されました。日本を代表する打楽器奏者(読売日本交響 楽団首席ティンパニ奏者)である岡田先生は、先月号で もご紹介した、本研究所が架蔵する世界唯一の現存例で ル)で、演奏は雅楽演奏グループの伶楽舎、揩鼓を担当されたの は、宮丸直子氏でした。この時は「亭」を主として用いました。 岡田先生による試奏 今回は岡田先生に、復元された揩鼓を試奏していただきました。 かいこ ある「法隆寺旧蔵 揩鼓」、およびその復元楽器について 岡田先生は、手のひらや指、あるいはマレット等を使って、様々 強い関心を示され、今回で 2 度目の来訪となりました。 な奏法を試みられました。摺る音については、タンバリン等で用 いられるロール奏法や、コンガに用いられる擦奏法等が試されま 古楽器の史学的復元 した。そして、 『舞楽散楽図』に描かれた指の形等を参照した結果、 現在研究所では、「西域伝来の楽器〔揩鼓〕に関する 綜合的研究」(特任教授福島和夫、共同研究者特別研究 復元された揩鼓を試奏する岡田先生 奏法についてはまだまだ改善の余地がありますが、今回岡田先 の楽器復元製作に入り、現在その奏法の実験に入ってい 生からいただいた、皮革の材質や厚み等についての助言をふまえ、 ます。 引き続き検討を続けて参ります。 『教訓抄』巻第九「打物部口伝物語」 「揩鼓」項(部分) (本研究所蔵、窪家旧蔵) (557~587)の僧智匠撰(568)『古今楽録』(逸書)の 「鼓制」に、「答臘鼓制、広於羯鼓而短。以指揩之。其 今回の揩鼓の復元楽器製作により判明したことがあります。 声甚震。俗謂之揩鼓」と記されております。これによれ 掌・指で打つ「亭」の音が、中音域の豊かな響きであるというこ _ ばち ば、指で揩り音を出すとあります。打楽器は、手や桴等 とです。高音域の羯鼓と、低音の太鼓との中間音域にあって、正 で革面を打ち、音を発する楽器ですが、揩鼓は指で革面 しく中庸の響きであり、これにより、豊かな響きの打楽器群が形 を擦り(揩り、摺り)音を出す、珍しい奏法の打楽器で、 成されるということであります。 このことから、今度は羯鼓の音が問題となってきました。現在、 他にはカリブ海のコンガ等があります。 てい 羯鼓(日本では「鞨鼓」の表記が通例)という打楽器は、古くか 揩鼓の奏法 「亭」と「ム」 揩鼓の復元製作の目的の一つは、揩鼓に用いられる特 こまのちかざね 殊な奏法を解明することです。天福元年(1233) 、狛 近真 きょうくんしょう の著した『教訓抄』には、揩鼓の奏法を示した譜が記さ れ、打つ音は「打」、摺る音は「摺」という譜字で示さ しょうが れています。また、奏法を音で示す唱歌の譜では、「亭 てい ムムム」のように表記されており、「亭」(あるいは「託」 ) 復元製作された揩鼓_ か っこ 今月の研究所の活動 ―羯鼓古様の復元― こす ¥_ 最も安定した持続音を得ることができました。 員冨金原靖)を実施していますが、2013 年度より揩鼓 揩鼓(答臘鼓)について、中国では隋唐に先行する陳 陽明文庫蔵『舞楽散楽図』 揩鼓坐奏図_ 中指の腹で、外縁部から中心にむかって真っすぐに擦る奏法が、 が打つ音を、「ム」が摺る音を表しています。 らほどんど変わっていない、というのが通説となっていますが、 実は安土桃山時代以前の古様と、近世様とでは、鼓胴が確実に違 います。当然音色等も相異する訳であり、今度は古様の羯鼓の復 元製作が必要になりました。幸い研究所には、鎌 倉時代と室町後期と考えられる古様の羯鼓胴 2 口 が架蔵されているので、これにより古様羯鼓の復 元製作を実施しています。 (文責:福島 和夫) ※陽明文庫蔵『舞楽散楽図』の画像は、福島和夫「〔古楽図〕考 付 陽 明文庫本影印」(『日本音楽史研究』第 6 号、2006 年)から転載した。 現在製作中の羯鼓胴 日本音楽史研究所月例通信 No.11 2015 年 2 月 28 日発行 上野学園大学日本音楽史研究所 〒340-0048 埼玉県草加市原町 2-3-1 Tel: 048-942-8600 Fax: 048-942-8601 問い合わせ先: [email protected] :ko
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