B国 A国

国際経済学 A
宿題 5(5 月 31 日講義)解答例:
作成者:高橋理香
問題 1
(比較優位の理論:理論の応用)
主張A:「私は、周りの人間に比べて、何の才能もない。私のような人間は、社会に出て働
く機会は与えられない。世の中は、才能のある人だけが社会で活躍すればいいのである。
私がニートとして日々を過ごすのは仕方のないことだ。」
1
主張Aは正しくない。比較優位の原理に基づけば、自分の能力を他人と比較することに
は何の意味もなく、どの人も自分の中の比較優位性に特化すれば、社会的に最も望まし
い状態を達成できるのである。才能のない主張者にも、自分にとって比較的得意な分野
があるだろう。彼(彼女)は、そのような得意分野に専念することで、社会貢献するこ
とが可能である。
主張 B:「わが国は外国に比べて全ての産業の生産性が低く、外国との貿易はわが国の産業
を脅かしかねない。従って、わが国は外国との貿易を避けるべきである。」
2
主張Bは正しくない。リカードの比較優位の理論によると、貿易は、各国は絶対優位性
ではなく、比較優位性に基づいて行われる。その時、自国が外国に比べて全ての生産性
が劣っていたとしても、貿易を行う事で、両国とも利益を獲得しうる。
問題2
(比較優位の理論:機会費用と市場価格)
生産物 1 単位を作るために必要な(絶対)労働単位数
A国
工業品
農作物
2
B国
5
12
5
6
工業品も農作物も、A国はB国よりも少ない労働単位で 1 単位の生産物を作ることがで
3
4
きる。両方の生産物ともA国に絶対優位がある。
A国は工業品に比較優位を持ち、B国は農作物に比較優位を持つ。
A 国の生産可能な組み合わせは、
5 x + 5 y = 500 ⇔ y = 100 − x
5
農作物
100
工業品
100
6
B国の生産可能な組み合わせは、
12 x + 6 y = 600 ⇔ y = 100 − 2 x
農作物
100
50
工業品
7
両国が協力して生産する時の生産可能性フロンティアは
農作物
200
比較優位に基
づいた生産
A 国:工業品
B国:農作物
100
50
100
150
工業品
8
9
上記参照。
工業品 1 単位の機会費用とは、工業品 1 単位の生産を行う時に諦めた農作物の単位数を
指す。A国は、工業品 1 単位を作ると、同時に 1 単位の農作物の生産を諦めている。従
って、A国の工業品 1 単位の機会費用は 1 である。同様に、A国の農作物 1 単位の機会
費用も1である。
10 B国は、12 単位の労働を使って工業品 1 単位を作ると、同時に農作物 2 単位を諦めな
くてはならない(農作物 1 単位を作るのに 6 単位の労働が必要であるから)。従って、
B国の工業品 1 単位の機会費用は2である。同様に、B国の農作物 1 単位の機会費用は
0.5 である。
11 今、国際市場において、工業品の単価が 1000 円、農作物の単価が 400 円であった。
12 国際市場における工業品の相対価格(工業品価格/農作物価格)は
1000
= 2.5 。
400
13 国際市場における工業品の相対価格は、A国の国内相対価格(工業品の機会費用)1よ
りも大きく、B国の国内相対価格 2 よりも大きい。従って、国際市場における工業品の
相対価格は高すぎるため、A国もB国も工業品に特化して生産する。この時、二国間で
貿易は行われない。
14 工業品の単価が 700 円まで値下がりしたときの工業品の相対価格は
700 7
= 。この場
400 4
合は、国際市場における工業品の相対価格は、A国の国内相対価格より大きく、B国の
国内相対価格2よりも小さい。従って、A国にとっては、工業品の国際相対価格は高く、
B国にとっては安いので、国際市場において、A国が工業品を売って農作物を買い、B
国が工業品を買って農作物を売る。二国間で貿易は行われる。
15 国際市場において工業品の相対価格が 1 と 2 の間であれば、貿易は行われる。その時、
A国は工業品を輸出し、B国が工業品を輸入する。農作物は、その逆である。
16 比較優位の原理に基づくと、工業品の輸出国はA国であり、輸入国はB国である。工業
品 の 相 対 価 格 と は 、 工業品の相対価格=
交易条件=
工業品単価
で あ る 。
農作物単価
輸出財価格
であるので、 工業品の相対価格=交易条件 となるのは、
輸入財価格
工業品単価が輸出財価格となるA国である。工業品の相対価格は、A国の交易条件と同
値である。
17
工業品の供給関数(相対価格と供給量の関係)は以下の図のとおり。
工業品の
相対価格
2
貿易の
行われ
る範囲
1
100
150
工業品
単位数