衆議院段階での安保法案審議の整理と今後の課題

<平和憲法研究会 20150802 明治大学グローバルフロント 7F C-4>
衆議院段階での安保法案審議の整理と今後の課題
小澤隆一(東京慈恵会医科大学)
0.中央公聴会(2015.7.13)に参加して(資料「議事速報」参照)
・8 度目(1999.4.7~)の公述人(or 参考人)として
・
「政治家と学者」をめぐって 意見を作成しながら考えたこと、参加して思ったこと
・意見への反応
1.基本的視点
①明文改憲をせずに今回の法案を準備したことによる矛盾
②過去の政府憲法解釈を(2014.7.1 閣議決定で)根本的に改変したことによる矛盾
→その結果として「違憲法案」
・
「欠陥法案」としての特徴があちこちに
2-1.国外犯処罰規定
・自衛官が誤射により民間人を死亡させた場合、
「現行の一般の刑法が適用される」
(中谷)?
←「業務上過失罪については、国外犯処罰規定がないので、刑法は適用できない」(上川)
(
『
「平和安全法制」に関する主な政府答弁』平成 27.7.16 更新 上 54 頁 以下同じ)
←水野賢一(参 7.29)法の不備を指摘
2-2.重要影響事態安全確保法
・自衛隊員が後方支援の際に拘束された場合、捕虜として扱われない(岸田・安倍)
(上 73 頁以下)
←なんと残酷なこと! 自衛隊員が「捕虜として扱え」と主張したら? 服務規律違反?
←「国際人道法の原則および精神にのっとって取り扱われる」(岸田)とは何のこと?
←防衛大臣・防衛省はそれでいいの?
日刊ゲンダイ 2015.7.15
自衛隊が海外で「後方支援活動」を行っている時に敵に拘束されたら、その立場は著し
く不安定――。13 日行われた安保法案の衆院特別委員会の公聴会で、東京慈恵医大の小沢
隆一教授(憲法学)が、法案の矛盾の核心を突いた。
国際法上、武力行使を行っている軍隊ならば、拘束された軍人は「捕虜」となり、ジュ
ネーブ条約でその扱いが決められている。しかし、この問題について特別委で民主党の辻
元清美議員に問われた岸田外相は、
「後方支援は武力行使には当たらないので、ジュネーブ
条約の適用がない。捕虜として扱われることはない」と何度も答弁している。
だったら、拘束された自衛隊員はどんな扱いを受けるのか。「武器を持った『文民』など
あり得ない。結局、自衛隊員は捕虜扱いもされず、文民としての保護も受けない。著しく
不安定な法的地位に置かれる」と、前出の小沢教授は公聴会で批判していたが、安倍首相
は驚くべき認識のようだ。自衛隊はテロリストだというのだ。
今年 3 月 30 日の予算委員会でこう答弁している。
〈交戦状況になって、我が軍、我が自衛隊の方は、捕虜として扱われなければ、これはま
さにテロリストと同じことになってしまう〉
この発言は、安倍首相が自衛隊を「我が軍」と発言した際の弁解だったが、「後方支援は
武力行使ではないから、自衛隊は軍隊ではない」という政府見解に当てはめれば、安倍首
相の言う通り「自衛隊はテロリスト」ということになってしまう。
こんなメチャクチャな安保法案は、やはり廃案にしなきゃいけない。
2-3.自衛隊法・武力攻撃事態法
2-3-1.3 条 1 項「直接侵略及び間接侵略に対し」をただ削除(下 84 頁)
←何から、どうやって「我が国を防衛する」かが漠然、不明確になったのでは?
←「官僚の手抜き」
・
「浅知恵」では?
2-3-2.新三要件の第三要件「必要最小限度」性はどこにかかるのか?(下 93 頁)
①「我が国の存立…国民の権利」云々?
②「武力攻撃を排除」云々?
本来は②だったはず… ところが「
(個別的)自衛権行使の三要件」を「自衛の措置の三要
件」に変更したことで、①へ「すり替え」
しかし①では「必要最小限度」性は不明確 ②でも「他国への武力攻撃」の場合は不明確
2-3-3.存立危機事態において指定公共機関に求める協力(下 117 頁)
「報道機関」についてしか質問していない。 運輸・エネルギー関連企業には何をさせる?
2-4.国際平和支援法
2-4-1.要件としての国連決議(下 119 頁以下)
さまざまな国連決議
「自衛権の行使や領域国の同意に基づいて行われる活動もあり得
る」
(安倍)
←ほとんど「なんでもあり」
2-4-2.後方支援と国際法の関係(下 127 頁)
後方支援(ロジスティックサポート)は、「武力行使に該当しない」(岸田)
←手前勝手な理屈