戦争法案と憲法 神奈川憲法アカデミア 20150711 永山茂樹(東海大学法科大学院) 1、暴走する安倍内閣/民主主義の立場から (1)立憲主義の軽視 立憲主義=近代国家を成立させるうえで基本原理の一つ 「人の支配」ではなく「法の支配」 憲法を尊重擁護する義務(99 条) 権力を委任された者に課せられる義務 首相の「独裁制」(国家緊急権への親和的態度) (2)最高法規性の軽視 憲法は「国の最高法規」(98 条) 憲法に違反する法律(違憲立法)は無効(81 条、98 条=裁判所の違憲審査権) 戦争法 (a)日本国は、そもそも軍事力を動かす権限があるか (b)米国と一体化して世界の軍隊になるという目的は、正当なものといえるか (c)軍事力の行使は、国際の平和のために有効か (d)日本をとりまく環境は本当に悪化しているのか。大国間の戦争は想定できるのか (3)憲法解釈権の簒奪 従来の憲法解釈の変更・逸脱(72 年閣議決定=集団的自衛権行使は憲法違反) 最高裁判決を歪めた理解(砂川事件最高裁判決は、集団的自衛権を容認?) 行政府にも求められる憲法への「畏れ」 内閣法制局への介入、憲法学説を冷笑 (4)議会制民主主義の軽視 わずか 80 時間の審議で? 強行採決か メディア統制 国民の反撃 2、軍事化する日本/平和主義の立場から (1)憲法平和主義の否定 戦争放棄(9 条 1 項)・戦力不保持(9 条 2 項)・平和的生存権(前文) 「切れ目なく」戦争のできる国 (2)アメリカ軍と一体化した「世界の警察官」「世界の軍隊」化 そのことは世界の平和・日本の平和につながらない -1- 現行法 もし戦争法が成立したら 我が国の平和と独立を守り、国の 我が国の平和と独立を守り、国の安全を保 自衛隊の主任務 安全を保つため、直接侵略及び間 つため、我が国を防衛することを主たる 接侵略に対し我が国を防衛するこ 任務として、必要に応じ、公共の秩序の維 とを主たる任務として、必要に応 持に当たる じ、公共の秩序の維持に当たる(自 =日本侵略がなくても自衛隊の主たる任 衛隊法 3 条 1 項) 離島への不法上陸 務として対応(集団的自衛権に対応) 警察組織(警察・海上保安庁)が 自衛隊の出動手続を簡便化する 対応することを原則とする 米軍艦の護衛 平時から、自衛隊は、共同訓練中の米軍 の艦船を防護する 日本に影響を及ぼす 「周辺事態」において「日本周辺」 「重要影響事態(海外での紛争が日本の おそれのある事態に (地理的制限)で米軍を支援する。 安全に影響する場合 )」、地理的制限は外 おける他国軍の支援 /米軍の「武力の行使」と一体 され、世界中で他国軍(米軍以外も)を =重要影響事態安全 化しないように、支援内容には制 支援できる。 確保法 限がある。 /支援内容は拡大し、発 進準備中の航空機に対する燃料補給や、 弾薬の提供も可能になる。 /朝鮮半島 や南シナ海での紛争に。 国際的な活動をする 個別・時限法に基づき派遣(テロ 一般・恒久法に基づくので、国会の統制 多国籍軍等への支援 特措法等) (国際平和支援法) /活動の全期間を通 は弱くなる。 /現に戦闘が行われてい じて戦闘のおそれのない非戦闘地 ない場所であれば派遣できる(活動場所 域での支援のみ。 /他国軍への の拡大) 支援内容に制限がある。 /他国軍要員に対する「駆け つけ警護」や、弾薬の提供も可能。=他 国の「武力の行使」と一体化する危険。 国連 PKO などへの参 武器の搬入監視など危険な治安維 治安維持活動に参加できる。 /駆けつ 加=「国際平和協力 持活動には参加しない。 /「駆 け警護も行うため、戦闘に巻き込まれる 法」改正(国連連携 けつけ警護」はできない /武器 危険がある。 平和安全活動) /任務遂行のために武器 の使用は自己保存・武器防護目的 使用が可能。 に限定される。 国連が統括しない活 同上 動に参加(国際連携 アフガニスタンでの国際治安支援部隊 平和安全活動) (ISAF)にも参加できる 集団的自衛権の行使 集団的自衛権の行使は憲法上認め 集団的自衛権の行使を容認(日本と密接 =集団的自衛権の行 られない な関係にある他国に対する武力攻撃が発 使容認(2014 年 7 月 1 生し、日本の存立が脅かされ国民の生命自 日閣議決定) 由及び幸福追求の権利が根底から覆され る明白な危険がある場合)=存立危機事 態 武力攻撃事態法 武力攻撃自体における集団的自衛権の行 使 文民統制 背広組(官僚)が制服組(自衛官) 両者が対等になることで、文民統制が弱 に対して優位である まる(6 月 10 日成立) -2-
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