3年 かけ算の筆算(1) 特殊な計算のひみつを発見しよう 滋賀県・草津市立老上小学校 1.はじめに 計算を主な学習内容とする単元においては,特殊 な数値への着目が,豊かな実践へとつながることが 多い. 例えば,47+98 という計算を筆算の一般的な方法 で解決していくと,一の位から 7+8=15,40+90= 130,15+130=145 と計算することになろう.しか し,これを特殊な方法で解決していくと,47+(100 -2)=145,または(45+2)+98=145 となり,暗 算で計算することが可能である. この場合,98 という数が 100 に近いことに気がつ けば,特殊な計算を使うことができる. また 27×4×25 というかけ算であれば,27×(4 ×25)として計算すればよい.4×25 が 100 となる 特殊性への気づきが,計算を容易にするのである. 2.かけ算の筆算(3 位数×1 位数)の特殊 では,3 位数×1 位数の筆算において,子どもたち の教材となるべき特殊な計算にはどんなものがある のだろう. 一つの例は,311×3,241×2 などの計算である. どの位にも繰り上がらないので,簡単である.32×3 のような 2 位数×1 位数の計算は,単元の最初に筆 算の形式を指導する場面で扱うことが多い. さらにもう一つは,308×6,607×4 のように十の 位が0になる筆算である. 子どもたちは,これまで十の位が 0 になる 3 位数 のひき算には苦しんでいた.502-104 の計算となる と,「一の位が 2-4 でできない,そこでとなりから 借りてきたいのだけれど,十の位は 0 なので借りる ことができない,どうしたらいいのだろう」と悩み の種であった.それがかけ算になると状況が一変す る.308×6 では,「六三十八」,「六八四十八」で 1848 と唱えたままを書けば簡単に答えになる.ひき 算で苦しんだ十の位が 0 となる 3 位数.それがかけ 算では簡単なのである.そこで,この十の位が 0 と なる筆算を教材にして授業を仕組んだ. 3.授業の実際 この授業は単元の終盤で実践した.筆算で扱う数 が大きくなり,子どもが計算を少々面倒だと感じて いるときが最適である.次のように授業を行った. これから書く計算は,どこが同じでしょう.分か ったらノートに書きましょう. ① 203×4 ② 306×6 ③ 802×9 伊藤 真治 3つ書いたら,10 人ぐらいが挙手をした.まだ 少ないと,④ 904×7 ⑤ 105×5 とさらに二つ を追加した. すると挙手が 20 人ぐらいになった. 気づいたことを発表させると, C1 十の位が0になっている.(言われたー) C2 全部かけざんで,答えが 100 より大きい. C3 かける数が 10 より小さい. T よく気がついたね.では,ノートに筆算で解 いてみよう.そこで気がついたことがあったら, 後で発表しましょう.(①~⑤まで解く) C4 この計算は計算が楽にできます. C5 え,どういうこと. C6 筆算ですると 203 203 4×3=12 で, × 4 × 4 4×0=0 12 812 4×2=8 で 812. 0 C7 203×4 や 306×6 8 8 と 12 は の計算はくり上が 812 重ならない りがない. C8 たし算が簡単だった.(他多数) T まとめると計算が簡単なようですね. では前の学校のお友達が,こんなことをいっ てたんだけど,これがいいかよく考えてね. 「802×9 なら大きい位から計算します. 九八七十二,九二十八.7218 で七千二百十八」. みんなどう思いますか? 九八 九二 7218 C9 筆算は小さい位からするのでダメだと思い ます. C10 さっきのは筆算でしていないよ. C11 繰り上がりがないからそれでできると思い ます. T その繰り上がりがないって……? C12 十の位が0になると,たし算が重ならない. C13 203×4 なら 3×4=12,200×4=800 でその まま 812 と書くことができる.だからよい.… おわりに 子どもたちは筆算が簡単な理由を自分の言葉で 何とか説明しようと頑張った. これからも,子どもたちが自ら数の秘密を見つ けられるように工夫していきたい. -1-
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