4 アイルランド 海外諸国の電気事業 第 2 編 (2015) アイルランド 国の概要 首 都 ダブリン 7 万 182km2 野に引き続き重点を置いて取り組むことを確認してい る。環境政策については、2012 年に発表した「再生 可能 エネルギー戦略」および「国家省 エネルギー行 動計画」の中で、2020 年までの中期目標および各施 策が取りまとめられている(第Ⅵ章参照)。エネルギー 面 積 人 口 462 万 7,000 人(2013 年推定) 能性の観点から、国産資源であるピート(泥炭)と再 民 族 ケルト系のアイルランド人が中心 生可能エネルギー(特に風力)の積極的な活用を進 言 語 第 1 公用語はゲール語(アイルランド めている。また、英国本土や北アイルランド間の連系 語) 、英語が第 2 公用語 宗 教 約 84%がカトリック 政治体制 通 共和制。議院内閣制 貨 ユーロ 1ドル=0.73 ユーロ(2014 年初) 1 ユーロ=142.49 円(2014 年初) 国内総生産 2,103 億 3,099 万ドル(2012 年) 1 人当たりの 国民総所得 3 万 8,970ドル(2012 年) 会計年度 1月1日~12月31日 Ⅰ. エネルギー 1. エネルギー政策 アイルランドの最新のエネルギー政策は、2007 年 3 月に発表された「持続可能なエネルギー未来の実現」 資源に乏しいアイルランドは、安定供給および持続可 線を強化することで、欧州エネルギー市場との統合を 進め、競争的な価格でのエネルギー安定供給に努め ている。 図- 1 GDP、一次エネルギー供給(TPER) 、エネルギー利用 からのCO2 排出量推移 (1990年=100) 300 280 260 240 220 200 180 160 140 120 100 GDP TPER Energy CO2 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 (年) [出所]S EAI(2013) ,Energy in Ireland 1990-2012:2013 Report. 2. エネルギー需給 2012 年における一次エネルギー供給量は、1,325 万 と題するエネルギー白書に取りまとめられている。同 石油換算トン( toe)であった。エネルギー源別内訳は 白書において政府は、 2020 年までの中期のエネルギー 天然ガス30.2%、原油 24.1%、石油製品 20.9%、石炭・ 政策を提示し、安定供給、持続可能性、競争促進の3 泥炭(ピート)17.8%となっている。国産のエネルギー 分野における戦略的目標を打ち出した。しかし、白書 資源はピートと天然ガスが中心であり、エネルギー自 発表後の2007 年以降、アイルランドは世界的な金融 給率は9.7%と低い。2012 年における国内総エネルギー 危機の影響を大きく受けたため、エネルギー部門を取 消費量は、1,031 万 toeであった。部門別の消費量は、 り巻く環境も変化している。景気後退に伴う需要減少 運輸用 34.0%、産業用 21.9%、家庭用 26.2%であった。 に加え、政府が EU から850 億ユーロに上る経済支援 を受ける条件として財政構造改革が求められ、とりわ け電力・ガス部門(電力はESB、ガスはBord Gais) では、政府が主要事業者の大株主となっているため、 エネルギー部門の構造改革を余儀なくされた。政府は、 Ⅱ. 電気事業体制 1. 電気事業の歴史 エネルギー白書公表から5 年経過した2012 年に「エネ アイルランドでは1927 年、 「電力(供給)法」に基づ ルギー政策枠組み2012‐2030」を発表した。同枠組 いて、電力供給公社(ESB:Electricity Supply Board) みでは、これまでのエネルギー政策の進展状況を振り が設立された。ESBは、国内唯一の一般電気事業者 返った上で、安定供給、競争促進、持続可能性の3 分 として、公益企業省による監督のもと、発送配電を一 海外諸国の電気事業 第 2 編 (2015) アイルランド 5 図- 2 家庭部門における小売市場シェア(2013 年第 4 四半期) 販売電力量 PrePay Power 3% Bord Gais Energy 17% Airtricity 22% その他 1% 需要家軒数 PrePay Power 3% Bord Gais Energy 15% Electric Island (ESB) 57% その他 1% Electric Island (ESB) 63% Airtricity 18% [出所]CER(2014) ,Electricity and Gas Retail Markets Annual Report 2013. 貫運営してきた。 なお、風力などの再生可能エネルギー電力を専門 1996 年にEU 電力自由化指令が成立し、EU 加盟国 に供給する事業者については、2000 年 2月に、家庭用 に対して段階的な市場開放が定められた。これを受 部門を含めて全面的に自由化された。続いて2001 年 けて、アイルランドでも1999 年に電力規制法が成立し、 4月には、コジェネによる電力供給が自由化されている。 自由化に向けて電気事業の再編が開始され、ESB が このため、国内の家庭部門を含むすべての需要家は、 株式会社化された。株式会社となったESBは、当初、 2005 年の全面自由化に先駆けて、再生可能エネルギー 発送配電を一貫運営 する垂直統合型の事業形態で 電力およびコジェネ電力を供給する事業者に変更す あったが、事業分離が進められ、送電系統の所有と配 ることが可能となっていた。 電系統の所有・管理をするESBネットワーク社と、海 CERは2010 年、規制料金廃止に向けたロードマップ 外事業のESBインターナショナル社の2 社が ESBの子 を公表した。商業部門 は2010 年 10月、家庭部門 は 会社として別会社化された。2000 年には、ESB から送 2011 年 4月にESB Supply( ESBの 供 給 子 会 社 で、 電系統運用部門(TSO)が分離され、系統運用事業者 2012 年に名称をElectric Ireland( EI)に変更)が適 とし てEirGrid 社 が 設 立 さ れ た。 独 立 し て い る 用していた規制料金 が 廃止された。なお、CERは、 EirGrid 社が独立規制機関のエネルギー規制委員会 料金規制を廃止する条件として、以下の4 点を挙げて ( CER)からライセンスを受けて送電系統を運用し、 いた。 ESB 子会社のESBネットワーク社が送電系統を所有す ・ 3 社以上の事業者が小売事業を営んでいること る形態となっている。また、ESBの発電所は、発電部 ・ ESB 以外の2 社の市場シェアがそれぞれ 10%以上 門の競争を促進するため段階的に売却されたり、老 であること 朽化した設備を閉鎖することなどにより、2010 年まで ・供給事業者の変更率が 10%以上であること に国内総発電設備容量に占めるESBの比率を40%以 ・ ESB Supplyの市場シェアが 60%以下、かつESBの 下とする方針が取られていた。 ブランド名を変更すること ESB 分 割 後 の2000 年 2月、 年 間 使 用 量 が 400 万 kWhを超える需要家を有資格需要家として、電力小 売自由化が始まった。該当する有資格需要家数は約 320 軒で、国内需要の約 28%に相当した。2002 年 2月 図- 3 2009〜2013 年で供給事業者を変更した需要家軒数 の推移 (軒) 90,000 には、自由化範囲が年間使用量 100 万 kWh 以上の需 80,000 要家(大・中規模企業など約 1,200 軒)まで拡大され、 60,000 市場開放率は約 40%となった。その後、2004 年 2月に、 自由化の範囲は年間 10 万 kWh 以上の需要家(産業・ 商業部門などの中小企業約 1 万 2,000 軒)まで拡大さ れ、市場開放率は約 56%となった。そして、2005 年 2 月19日には、小売市場が全面自由化された。 合計 Bord GaisとSSE Airtricityが 家庭部門に新規参入 70,000 家庭用 小規模商業用 50,000 変更率10% 40,000 中規模商業用 大規模需要家 30,000 20,000 10,000 − 02月 04 06 08 10 12 02 04 06 08 10 12 02 04 06 08 10 12 02 04 06 08 10 12 02 04 06 08 10 12 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 [出所]C ER(2014) ,Electricity and Gas Retail Markets Annual Report 2013.
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