所 感 【 P r e f a c e 】 日・アフリカ間の 重層的な関係構築と 官民連携の強化 公益社団法人 経済同友会 アフリカ委員会[委員長] 丸紅パワーシステムズ株式会社[会長] 関山 護 Mamoru Sekiyama 経済同友会は、2009年度に初めてアフリカ委員 た可能性を活かすには、民間企業の知恵とリソース、 会を設置し、それ以来、一貫して、日本・アフリカ 経験が必要である。アフリカが着実に成長していく 関係の強化に取り組んできた。各界の有識者やアフ なか、日本企業の技術力や人づくりの経験に対する リカ諸国の首脳、国際機関トップなどとの意見交換 期待が高まっている。昨年改訂された開発協力大綱 やアフリカ訪問を踏まえて、13年のTICAD V開催 のもとで、今こそ、官民連携により日本企業のアフ の際には、日本が示すべきコミットメントについて リカ進出に本腰を入れ、現地の開発と成長に貢献す 提言した。現在も、来年開催されるTICAD VIに向 るべきではないか。 け、検討を継続している。 TICAD Vを契機に、日本でも、企業関係者のア こうした活動を通じ、アフリカは、開発援助の時 フリカへの関心は高まっているものの、多くの企業 代から民間主導による貿易・投資の時代へと転換を にとって、アフリカ進出に踏み切るうえでの課題は 遂げつつあると、強く実感している。アフリカは、 少なくはない。 リスクや課題を乗り越え、今後も力強く持続的に成 長していくだろう。 その原動力は、拡大を続ける人口である。特に、 特に、個々の企業が独力で、アフリカに関する具 体的で精度の高い情報を入手することは容易ではな い。そのため、多くの企業は必要以上にリスクを恐 ちゅう ちょ 中間層の拡大による消費市場の拡大に期待がもて れ、進出を躊躇することになる。また、行政・経済 る。また、アフリカは、既存の経済・社会インフラ システムの整備が不十分なアフリカに企業がコミッ がないなかで、最先端技術を一気に導入する「テク トするうえでは、取引に関するリスク対策や資金面 ノロジー・ジャンプ」によって、独自のイノベーショ でのセーフティーネットも重要だ。現地情報やノウ ンの震源地となる可能性も秘めている。 ハウの共有、リスク分散などさまざまな側面におい また、今年3月にジュネーブで開催された「アフ リカCEOフォーラム」に参加した際には、アフリカ て、官民連携、とりわけ国際協力機構、国際協力銀 行などとの連携が重要になってくる。 各国の指導者や経営者の持続的成長に向けた明確 また、アフリカの国々は、国単位では市場規模が なビジョンと改革意欲を実感した。さらにアフリカ 小さく内陸国も多い。アフリカの域内貿易が9%にと では、戦略的思考とグローバルな経験をもつ、新し どまっていることが示すように、ハード、ソフト両面 い企業層も育っているようだ。 でのインフラ整備が急務である。広域インフラ開発 一方で課題としては、最大の雇用吸収産業である 農業の生産性の低さや、急速かつ未曽有の規模で進 と地域経済統合により、アフリカが市場の魅力を高 めていくことを、日本としても支援していくべきだ。 む都市化への対応があげられる。都市開発に関する 来年には、初めてアフリカにおいてTICADが開 知識や技術を欠いたまま、無秩序な都市化が進め 催される。これに向けて、セクターを超えた連携に ば、将来深刻な事態が引き起こされかねない。 このような課題を解決し、アフリカが成長に向け よって、アフリカに対する日本の存在感を示してい きたい。 2015.9 1
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