2015年8月30日

スミセイライフフォーラム in 栃木
脳のアンチエイジング
●第一部 「認知症の正しい理解と予防」
東京都健康長寿医療センター研究所
宇良千秋氏( )
自立促進と介護予防研究チーム研究員
う
ら
ち
あ
き
●第二部 落語
五明樓 玉の輔師匠(落語家・真打)
ご
め
い
ろ
う
●第三部 講演「脳のアンチエイジング」
茂木健一郎氏(脳科学者)
も
ぎ
け
ん
い
ち
ろ
う
秋雨前線の影響であいにくの雨模様となった2015年8月30日(日)、
栃木県総合文化センターでは来場者1000名を迎え
スミセイライフフォーラム 生きる「脳のアンチエイジング」が
開催されました。
第1部は、認知症の現状と日常
うです。研究者の間で注目されているの
が「ドーパミン」という物質で、ドーパミ
が運 動習慣で、科学的にも良い
ンが分泌されると前頭葉の活動が活発に
結 果 が 出ており、1日30 分 の
なるそうです。では、どうすればドーパミ
を紹介する宇良千秋さんの
早歩き程度の運動を行なうこと
ンがたくさん分泌されるのでしょうか。そ
講演で始まりました。
がお薦めだそうです。そのほか、
のコツが「好奇心」です。ドーパミンは、
生活で実践できる「認知症の
発 症を遅らせる生活習慣 」
認知症は今後もどんどん
新聞を読むなどの知的好奇心を
初めてのことを体験して感動したときに
刺激したり、人と積極的におつき
分泌されるそうです。最たるものが子供
成 24 年のデータでは、2025 年には発
あいをしたりする習慣も効果的とのこと
の脳で、見るもの聞くもの全てが初めて
症者が470 万人に達するだろうとされて
です。
「さぁ今日から始めてみませんか」
で、すいかを食べてもメロンを食べても
いたのですが、翌 25 年の全国調査では、
という呼びかけで第1部が終了しました。
初めての味、初めて体験尽くしで、好奇
増えると予測されています。平
調査時点ですでに 460 万人に達していた
第 2 部は、五明樓玉の輔師匠の落語。
心の塊のような子供の脳は、ドーパミン
そうで、2025 年には700 万人に達する
軽快な語り口に会場は大爆笑。リラック
がいっぱいで、元気もいっぱいです。し
見込みとされています。一方で、軽度認
スムードに包まれた会場に、次に登場し
かし、大人になるにしたがって、新しいこ
知障害(MCI)と呼ばれる予備軍の人も
たのは脳科学者の茂木健一郎さん。
「今
とに挑戦する機会も勇気も減っていきま
400 万人にのぼり、合わせると800 万人
朝起きて、宇都宮市内をジョギングしま
す。
を超えています。認知症が増えた背景に
した」と自らの運 動習慣を披露されて、
は、長寿になったことがあります。これ
第 3 部が始まりました。
そこで、新しいことに挑戦できるよう、
脳には「安全基地」という観念が備わっ
までは認知症を発症するまでに寿命が尽
長生きすれば認知症になる危険性が高
ているそうです。子供たちが新しいこと
きていたのですが、今はそれ以上に長生
まると言われていますが、脳科学的には
を怖がらないのは、親に見守られている
きすることが多くなりました。認知症は、
個人差が大きく、同じ年齢の人でも、ど
安心感があるからで、その範囲が「安全
脳の老化が影響する病気ですから、長生
う生きているかで脳の状態が全然違って
基地」です。つまり、人
きすればするほど認知症になる可能性が
くるそうです。高名な日野原重明先生
(聖
と人の絆で生まれる
高まり、発症率は 95 歳以上で男女とも 5
路加国際病院名誉院長)は103 歳でい
安心感です。研究で
割を超えているそうです。
らっしゃいますが、手帳には10 年先まで
も、 人の 絆と安 全
講演では、認知症発症の危険度と生
の予定が書きこまれているほどのお元気
基地の大きさは比例
活習慣についての研究が紹 介されまし
さ、日野原先生のアンチエイジングの秘
することが知られてい
た。たとえば、食習慣では、抗酸化作
訣は「好奇心」だそうです。
るそうです。
用のあるビタミン E、C やβカロチンなど
好 奇心と若々しい脳の関 係は――? 「だから、人との絆を深め、新しいこと
を多く含む野菜・果物、脳に良いとされ
その鍵は、前頭 葉にあります。行動や
に挑戦して、ドーパミンをたくさん出しま
る DHA、EPA を含む魚などをバランスよ
意欲、記憶を司る前頭葉を若々しく保つ
しょう!」――茂木さんのエールで閉会と
く食べることで発症の危険度が下がるそ
ことが大切ですが、そこで必要となるの
なりました。
主催/住友生命健康財団 後援/住友生命栃木支社 朝日カルチャーセンター