第三者の同居禁止の特約 賃借人は、賃貸人の書面による承諾がない

第三者の同居禁止の特約
賃借人は、賃貸人の書面による承諾がない限り第三者を同居させてはな
らない。
(解
説)
第三者の同居禁止の効力については微妙な問題があります。賃貸借契約
には、通常「第三者を同居させてはならない」という条項を入れるのが通
常です。重要なことは、同居人に関する違反を発見した場合には、直ちに
相当の期間を定めて違反行為の差し止めを求めないと追認ということで解
除の機会を逸することになります。また、この場合も、解除の一般原則と
して、賃借人に著しい不信行為がないかぎり、相当の期間を定めて違反行
為の差し止めを請求し、しかる後に、解除できると考えるべきです(最判
昭 31.6.26 民集 10.6.730・ジュリスト 112.102 は、相手方に著しい不信行為
があり信頼関係を破壊する事情があったとして無催告解除を有効としてい
ます)。
恋人と同棲するようになったら、賃貸人は解約できるでしょうか。その
後結婚もし、子供も生まれ、家族が3人になったらどうでしょうか。時々
姉妹が来るので、泊まらせていた場合はどうでしょうか。姉妹ではなく、
友人の場合はどうでしょうか。
以上述べたことは、ごく普通の私生活で起こりうることです。もし、恋
人や配偶者や赤ん坊が第三者に当たるという解釈をすれば、ごく普通の日
常生活もできなくなります。従って、これらの新しい家族は第三者に当た
らないと解釈するのが多くの場合妥当だと思います。
兄弟姉妹や友人の場合も、時々、泊まっていくだけでは、賃貸人との信
頼関係が破壊されたとまでは言えないと思いますので、これだけで、賃貸
借契約を解除するのは困難です。
形式上、賃貸借契約に違反しているようにみえても、裁判所で契約の解
除が認められるか否かは、賃貸人と賃借人との信頼関係がどの程度破壊さ
れたかによるものだとされています。
但し、学生相手等で独身女性専用マンションの場合、賃借人の女性が、
恋人と同居を始めたら、他の賃借人である女性が、独身女性専用マンショ
ンに入居した使用目的が達せられなくなってしまいます。こういう場合は、
形式的にも実質的にも契約違反で、賃貸人との信頼関係も破壊されていま
すから、賃貸借契約の解除は認められると思います。
また、普通のアパートで、子供ができたら、出て行かなければならない
という特約は、多くの場合、その契約条項が、民法90条の公序良俗(あ
るいは消費者契約法10条)に違反して無効となります。契約全体が無効
となるのではなく、その条項だけ無効となり、適用されなくなるというこ
とです。
賃借人と世帯が異なる者(例えば友人)の場合は,同居人ではなく法律
上は独立の占有者とされます。したがって訴訟提起の場合は独立の被告と
します。
(参考条文)
民法第90条(公序良俗)
公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効と
する。
消費者契約法第10条
民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に
比べて、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契
約の条項であって、民法第1条第2項(信義誠実の原則)に規定する基
本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。