管内空気圧を考慮した圧力式地下河川の水理挙動解析 論 文 パシフィックコンサルタンツ株式会社 高西春二 パシフィックコンサルタンツ株式会社 ○阿部康紀 要 旨 寝屋川南部地下河川は、大阪府の淀川と大和川に挟まれた浸水常襲地域の浸水被害を軽減するために計画 される大規模地下河川である。施設の概要は、確率年 W=1/40、計画流量 180m3/s、地下約 15~30m、延長約 13km、管内径約 7~10m であり、流域の雨水を地下河川に取り込みつつ、地下河川下端に設置されるポンプ より木津川河口部へと揚水放流する。本論文は、寝屋川南部地下河川及びこれに接続する増補幹線を対象と して、管内空気の圧縮を考慮した二相流による 1 次元不定流解析モデルを構築し、空気挙動が水理挙動に及 ぼす影響を把握した。また、管内の空気の排出に着目し、施設の安全な運用を目的として、所定の風速及び 管内空気圧を満足するような空気抜き口の大きさについて検討を行った。 キーワード:地下河川、伏せ越し管渠、空気挙動、二相流、圧力管運用 ま え が き 近年、都市化の進展や地下空間の高度利用により、雨 水排水管に伏せ越し形状が採用される事例が確認され 地下河川 淀川 P ポンプ施設 る。伏せ越し形状を有する管路は、洪水の流入時に管路 ●梅田 寝屋川 ら圧縮空気が突発的に噴出する現象やマンホール蓋が 飛散する現象等が各地で報告されている。寝屋川南部地 浪速区 天王寺区 大阪湾 西成区 第二寝屋川 久宝寺緑地 ● ●天王寺 安倍野区 恩智川 木津川 下河川は、大深度の地下に建設される伏せ越し形状の地 P 生野区 内に閉じこめられた空気が圧縮を受け、マンホール蓋か 平野川分水路 平野川 内の空気が上手く外界に排気されないことがあり、管路 八尾市 東住吉区 平野区 駒川 今川 住吉区 下河川であり、既に完成した部分が貯留管として供用開 始されている。現時点において、事故や破損などの報告 大和川 は無く、運用上の支障は無い。しかし、今後、一度豪雨 図 1 が発生すると、突発的な空気挙動が発生する危険性を抱 寝屋川南部地下河川ルート図 えている。以上のことから早急に、空気挙動を考慮した ると考えられる。 木津川 現象把握を行い、安全な施設設計を行うことが必要であ 平野川 平野川 分水路 第二 寝屋川 久宝寺 緑地公園 若井 立坑 1. 寝屋川地下河川の概要 美園 立坑 寝屋川南部地下河川は、大阪府を流下する淀川と大和 川に挟まれた浸水常襲地域の浸水被害の軽減を目的と して建設される。図1のルート図、図2の縦断図に示す ように第二寝屋川、平野川、平野川分水路、今川、駒川 などの洪水流や増補幹線により集水された洪水を地下 河川に取り込みつつ流下し、下流端ポンプで揚水し木津 川河口へと排水する治水施設である。寝屋川南部地下河 川の施設諸元を表 1 に示す。 ポンプ井 図 2 表 1 項目 集水面積 延長 設置深度 計画降雨 計画流量 桃ヶ池 今川 立坑 立坑 西脇 立坑 久宝寺 立坑 寝屋川南部地下河川の施設概要図 寝屋川南部地下河川の施設概要 諸元 80km2 約 13km 約 15m~35m 八尾実績降雨 S32.6.26 180m3/s 備考 土被り 1 時間最大 62.9mm 総雨量 315.9mm W=1/40 2. 伏せ越し管路の課題 3. モデル化 伏せ越し管路に発生する水理現象を整理すると、図 3 (1) モデル化の方法 のようになる。空気挙動に着目すると、始めに、①洪水 管路内の現象を把握するためには、空気と水の挙動を 流入にともない、管内空気が人孔のマンホール等から排 同時に解析する必要がある。本解析で対象とする空気の 気される。さらに、段波の遡上にともない、下流側の人 現象は、先の章で説明した①②の現象とする。過去の模 孔より空気抜口が塞がり、上流人孔の管内空気ほど圧縮 型実験の結果より①②の段階で空気挙動が最も大きく を受ける。つぎに、②満管に状態に至る過程で、サージ なることが確認されており、①②を対象とした解析を行 ング現象が発生し、立坑内の水位が上下動を繰り返す。 えば空気に対して安全な施設設計ができると考えられ このとき、人孔内において水面と人孔蓋の間の空気が圧 る。数値解析における水と空気の概念を図 4 に示す。 縮を受ける。最後に、③圧力管にて安定して流下すると 水層の上部に空気層が完全に分離して存在する二相流 きにおいても、大深度地下で被圧された管内残留空気が 状態を想定し、双方の連続式と運動量方程式を立てて同 体積を増しながら人孔内を浮上し、マンホールから噴出 時に解析を行う二相流数値解析モデルを適用する。 この二相流数値解析モデルの妥当性は、水理模型実験 する現象が発生する。 以上のように、伏せ越し形状を有する管路は空気挙動 による計測結果を検証データとして、数値解析結果と水 理模型実験結果を比較し、人孔上部からの空気量、人孔 に関して不安定な水理現象を抱えている。 内空気圧、人孔及び管底部における空気圧を加味した動 ①洪水流入に伴う管内空気の圧縮(解析対象) 水位を精度良く再現できることが確認されている。なお、 地盤高 検証データを得た実験模型の概要は、図 4 に示す概略 空気圧縮 空気圧縮 図と同様に、上流人孔と下流人孔に加えて中間人孔を有 する模型である。模型諸元は管路内径φ50cm、管路延長 段波の遡上 25m、高落差 2.5m、通水流量として上流人孔より 50l/s、 段波の遡上 中間人孔より 25l/s を定常流にて通水している 5) 。 空気噴出量の計算 ②サージングによる人孔内空気の圧縮(解析対象) 地盤高 空気圧縮 水位振動 空気の解析 水の解析 人孔 管路 人孔 管路 人孔 図 4 二相流の概念図 (2) 水と空気の二相流モデル ③被圧空気の浮上(解析対象外) 地盤高 以下に水と空気に関する基礎式と空気の状態方程式 を示す。2) 3) 動水勾配 空気浮上 空気浮上 図 3 伏せ越し管路の空気噴出現象 <水に関する連続式と運動量方程式> 数式 1 管路の連続式 ∂ ρ l Aw ∂ ρ l Q w ρ l q w + = ∂t ∂x Δx 数式 2 人孔の連続式 ∂ρlVw + ∑ ρl Qw = ρl qw ∂t 数式 3 運動量方程式 (3) 「寝屋川南部地下河川+増補幹線」モデル ∂ρ l Qw ∂ρ l UwQw + ∂t ∂x U Q Pa ⎞⎫⎪ ∂ ⎧⎪ ⎛ ⎟⎟⎬ − S wτ wf − f w w = − gAw ⎨ ρ l ⎜⎜ h cos θ + Z + ∂x ⎪⎩ ⎝ 2Δx ρ l g ⎠⎪⎭ <空気に関する連続式と運動量方程式> 数式 4 管路の連続式 数式 5 人孔の連続式 γ 2 ∂x 2 数式 7 状態方程式 Pa = P ⎜ ρ a ⎟ 0⎜ ⎟ ⎛ ⎞ する増補幹線を対象とした。 【数値解析の対象範囲】 増補幹線、④柏原八尾増補幹線、⑤中央南(一)増補幹線、 ⑥飛行場北増補幹線、⑦飛行場南増補幹線、⑧東大阪市 ∂ρaVa + ∑ ρ a Qa = ρ a q a ∂t ∂t 現性などを考慮して、寝屋川南部地下河川とこれに接続 ①寝屋川南部地下河川、②中央南(二)増補幹線、③四条 ∂ρaVa ∂ρ a Qa + = ρ a qa ∂t ∂x 数式 6 運動量方程式 ∂wa + ∂ ( wa + モデルの対象範囲は、計算負荷や空気抜き対策工の実 Pa γ − 1 ρa 増補幹線、⑨白鷺流入施設、⑩万代阪南幹線、⑪枚岡河 内南増補幹線、⑫中央北増補幹線 )=0 ⑫ γ ② ⑪ ⎝ ρ0 ⎠ ③ ⑧ <空気噴出量の計算式> 数式 8 γ Pa γ −1 ρa ① 空気の流出時 w0 γ P0 + 2 γ −1 ρ0 2 = ⑩ ⑨ ⑤ 風量 m = C m ρ 0 Aw0 ⑦ 風速 ⎧ γ ⎛ Pa P0 ⎞ γ P0 ⎪⎛ Pa ⎞ ⎜ − ⎟= 2 w0 = 2 ⎨⎜ ⎟ γ − 1 ⎜⎝ ρ a ρ0 ⎟⎠ γ − 1 ρ0 ⎪⎜⎝ P0 ⎟⎠ γ −1 γ ⎩ 数式 9 ④ ⑥ ⎫ ⎪ − 1⎬ ⎪ ⎭ 図 5 数値解析の対象範囲 図 6 に示すように、流入ハイドログラフを増補幹線 空気の流入時 の人孔に与えた。また、下流端は計画のポンプ操作にな wa γ Pa γ P0 + = 2 γ −1 ρa γ −1 ρ0 るように境界条件を与え、管内の流速および空気の挙動 2 を解析した。 風量 m = C m ρ a Aw a 流入ハイドロA 流入ハイドロB 風速 1 ⎞γ γ P0 ⎟⎟ 2 γ −1 ρ0 ⎠ ⎧ ⎪ ⎛ Pa ⎨1 − ⎜⎜ ⎪ ⎝ P0 ⎩ ⎞ ⎟⎟ ⎠ γ −1 γ ⎫ ⎪ ⎬ ⎪ ⎭ 過断面積(m2)、ρl :水の密度(kg/ m3)V w :水の容積(m3)、 τwf :水と壁面の摩擦力(kg・m/s2/m2)、h:水深(m)、 ρa:空気の密度(kg/m3)、V a :空気の容積(m3)、P a: 地下河川 空気の圧力(Pa)、Z:管底高(m)、θ:管の勾配(1)、ρ0: 増補幹線A 標準状態での密度(15℃、1気圧)(kg/ m3)、P0:標準 4. 空気混入解析 (m)、g:重力加速度(m/s2)、qw:流入量(m3/s)、qa: (1) 解析ケース及び解析条件 空気流入量(m3/s)、qe:空気連行量(m3/s)、B:水面幅(m)、 1) 基本条件 人孔内風速、γ=1.4:比熱比、Cm:収縮係数 増補幹線B 図 6 解析モデルの模式図 状態での圧力(1気圧)(Pa)、x:管路の流れ方向の距離 t:時間(s)、Δx:微小区間(m)、w0:人孔外風速、wa: 増補幹線人孔A Qw:水の流量(m3/s)、U w:水の流速(m/s)、A w:水の通 増補幹線人孔B ⎞ ⎛ Pa ⎟⎟ = ⎜⎜ ⎠ ⎝ P0 地下河川立坑 γ ⎛ P0 Pa ⎜ − wa = 2 γ − 1 ⎜⎝ ρ 0 ρ a 表 2 に数値解析の基本条件として、流量、計算断面 ピッチ、計算時間間隔、粗度係数、地下河川立坑及び増 補幹線人孔に確保される開口面積、地下河川下流端のポ ここで、オリフィスとは、増補幹線の下流端(地下河 ンプ条件を示す。 表 2 基本条件一覧表 川との接合部)に設置される流入量制御用の施設である。 流量 八尾実績降雨ハイドログラフ 縦断断面ピッチ 最大 50m 計算時間間隔 0.010 秒 制御することを目的として設置が検討されている。 粗度 地下河川 0.015 係数 増補幹線 0.013 地下河川 立坑 0.5m2、ポンプ井 40m2 地下河川 開口 立坑 面積 増補幹線 不明場所:0.0628m2(人孔蓋×1) 人孔 特定できる場所は入力。 起動,停止 5分 所要時間 5分 能力曲線 揚呈曲線図利用 起動・停止 ポンプ運転条件 水位 ・ 2 台ずつポンプが起動及び停 目標値は東京都下水道局の「ふかし上げポンプ所施設設 止するものと仮定 計マニュアル(仮称)」を参考にして評価基準 1 を適用し ポンプは 1 台あたり 30m3/s ン ・ ポンプ停止水位は、起動水位 た。この基準値以上に風速や管内圧が増加すると、固定 -5.0m されていない鉄製のマンホール蓋が外れる現象が発生 起動と停止のタイミングは次 する。 のとおり 起動水位 停止水位 評価基準11) : 5~6 台目 -15.359 -20.359 想定した大雨に対して、標準型人孔鉄蓋が飛散(安全側 3~4 台目 -17.359 -22.359 を考慮し、蓋重量のみ)しない管内圧(0.029kg/cm2、 1~2 台目 -19.359 -24.359 2,880m2 接合井面積 オリフィス 空気抜口面積の拡張にあたって、人孔蓋からの風速の ・ ・ 増補幹線 図 7 増補幹線下流端のオリフィス概略図 ポ プ 各増補幹線から地下河川に入る流入量を計画流量比に 2,840pa、噴出風速換算 48m/s)以下とする。 2) オリフィス、ポンプ運転、空気抜口の条件 表 3 に数値解析のケースと条件を示す。ケース 1-1 と 1-2 は計画施設形状を対象としたケースであり、前者 (2) ケース 1:計画施設形状解析 計画施設形状解析として、計画施設形状を対象として、 は空気考慮無し、後者は空気考慮有りである。ケース 2 数値解析を行った。解析ケース 1-1 は空気を考慮しない ~4 は全て空気を考慮したケースであり、ケース 2 はケ 水だけを対象としたケースであり、ケース 1-2 は空気を ース 1-2 に対して増補幹線下流端に設置したオリフィス 考慮したケースである。図 8 は地下河川の最高水位縦 を撤去したケースである。ケース 3 は地下河川下流端の 断図をケース 1-1 とケース 1-2 で比較したものである。 計画運転水位を-2m にしたケースであり、ケース 4 は 地下河川において、空気を考慮したケース 1-2 の水位が 空気抜口の面積を拡張したケースである。 低いのは空気による圧縮を受けていることが影響して いる。両ケースともに水位は地盤高以下である。図 9 表 3 数値解析ケース及び条件一覧表 ケース 計画施設形状解 析(空気無し) 計画施設形状解 析(空気有り) オリフィス撤去解析 下流端ポンプ運用 変更解析 空気抜き口拡張 解析 オリフィス ポンプ 形状 運転 空気抜口 的に高く、空気を考慮したケースの水位は空気に押され 初期値 1-2 計画 て水位が低くなる傾向が確認される。図 10 は代表的な 初期値: 現況形状 撤去 3 増補幹線人孔において、人孔蓋より排気される最高風速 を整理したものである。管内空気は圧縮を受け、中には 300m/s を超える風速になる人孔も存在する。ただし、 ―2m 初期値 4 のであり、地盤高を超える人孔も存在する。地下河川区 間と同様に、空気を考慮しないケース 1-1の水位が全体 1-1 2 は各増補幹線の代表的な人孔の最高水位を整理したも 計画 拡張2: 解析ではハイドログラフを直接人孔に与えており、ハイ 風 速 48m/s ドログラフの急な立ち上がりが、直接的に空気排出量と 以下になる まで空気抜 口面積拡張 して現れるため大き目の値になっていると考えられる。 この条件下で、空気挙動の検討を行うことで安全側の施 設設計が可能となる。図 11 に地下河川と増補幹線の模 (3) ケース 2:オリフィス撤去解析 式図と代表人孔の位置図を示す。 桃 井 立 坑 ヶ ポ ン プ 池 10 西 脇 立 久 宝 寺 美 園 立 若 江 立 との一因として、増補幹線下端のオリフィスが増補幹線 坑 坑 立 坑 坑 坑 側の水位を堰上げていることが影響していると考えら れる。そこで、増補幹線人孔の風速を低減するために、 5 オリフィスを撤去した解析を行った。 0 -5 水位(O.P.m) ケース 1-2 において、増補幹線人孔の風速が大きいこ 今 川 立 図 12 より、オリフィスを撤去すると、地下河川の水 -10 -15 位が上昇し、地下河川立坑の空気圧及び風速が上昇する。 -20 地盤高 -25 空気考慮無し 空気考慮有り 管路 -30 一方、増補幹線人孔の空気圧及び風速は概ね低減する。 ただし、図 12 には紙面の関係上表示していないが、増 -35 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 補幹線下流側の地下河川に近い人孔では地下河川の水 距離(m) 位上昇の影響を受けるために、空気圧や風速が上昇する 図 8 地下河川最高水位縦断図 ことが確認されている。 地下河川 20 立坑・人孔蓋の風速(m/s) 16 水位(OP.m) 14 12 10 8 6 4 2 300 オリフィス有り オリフィス無し 風速基準48m/s 250 200 150 100 50 0 0 6 41 37 54 47 45 15 11 22 17 27 28 3 1 34 図 9 45 15 11 22 17 27 28 34 図 12 最大風速比較図(オリフィス撤去による影響) 増補幹線最高水位比較図 地下河川 350 41 37 54 47 立坑・人孔番号 人孔番号 立坑・人孔蓋の風速(m/s) 増補幹線 350 空気無し 空気有り 地盤高 18 (4) ケース 2:定常運転水位-2m 増補幹線 つぎに、地下河川立坑及び増補幹線人孔の風速を低減 300 することを目的として、地下河川下端ポンプの運転水位 空気考慮 風速基準48m/s 250 200 を計画運転水位から 2m 低下させた。この結果、地下河 150 川立坑の空気圧や風速は 3 割程度低減した。一方、増補 100 幹線人孔の空気圧や風速はほとんど変化しなかった。 50 地下河川 0 3 1 41 37 54 47 45 15 11 22 17 27 28 立坑・人孔番号 図 10 ケース 1-2 最高風速一覧図 45 37 立坑・人孔 4 地下河川 47 増補幹線 計画水位 計画水位-2m 風速基準48m/s 250 200 150 100 50 6 34 6 300 0 1 P 増補幹線 350 34 立坑・人孔蓋の風速(m/s) 6 3 1 41 37 54 47 45 15 11 22 17 27 28 34 立坑・人孔番号 図 13 最大風速比較図(定常運転水位を下げる影響) 3 28 15 (5) ケース 3:空気抜き口拡張 最後に、地下河川立坑及び増補幹線人孔の空気抜き口 54 11 17 27 図 11 を拡張することで、立坑及び人孔部の風速を所定の値 11 地下河川+増補幹線模式図 48m/s 以下に抑えることを試みた。 結果として、空気抜き口を初期値から 5 倍~最大 30 倍程度に設定すると、全ての人孔の風速は基準値 48m/s して利用される。貯留管運用時を対象として、管内の残 (0.029kgf/cm2)以下に低下することが確認された。 留空気が各施設に及ぼす影響について検討する必要が 地下河川 立坑・人孔蓋の風速(m/s) 350 ある。 増補幹線 (5) 模型実験などによる空気挙動の把握 300 管内空気が人孔部に抜けていく挙動については不明 計画形状 空気抜き拡張 風速基準48m/s 250 200 な点が多い。今後、水理模型実験を行い、人孔の落差処 150 理形状(階段式、螺旋案内路式、接線型など)に応じた 100 空気挙動を観測し、数値解析モデルに反映する必要があ 50 る。 0 6 3 1 41 37 54 47 45 15 11 22 17 27 28 34 あ と が き 立坑・人孔番号 寝屋川南部地下河川は、全体延長約 13km の内、桃が 図 14 最大風速比較図(空気抜き口を拡張する影響) (6) まとめ ・ ・ ・ 増補幹線下流端のオリフィスを撤去することで増 池立坑下流から美園立坑までの青色着色部の約 10km が 既に完成し、調節池として運用中である。現在までに、 補幹線人孔の風速を低減することができる。 事故や破損などの報告はされていないが、今後も引き続 定常運転水位をさげることで、地下河川立坑の風速 き、暫定運用に合わせた数値解析を行い、安全な施設設 を低減することができる。 計及び安全対策に努める必要がある。 地下河川立坑及び増補幹線人孔の空気抜き口面積 最後に、本報告に際し、ご指導・ご助言くださった関 を初期値の 5~30 倍に拡張することで、風速 48m/s 係各位、寝屋川南部地下河川検討委員会の委員の皆様に (東京都ふかし上げポンプ所施設設マニュアルの 評価基準 1)以下に抑えることができる。 深く感謝の意を表します。 5. 今後の課題 (1) 空気抜き口の検討 今回は、各人孔に対して、必要な空気抜き口の目安を 算出した。今後は現地の施工条件を考慮して空気抜き口 6. 参考文献 面積を決定する必要がある。 1) ふかし上げポンプ所施設設計マニュアル,東京都下水 (2) 流域対策による流量低減 道局,H.15.3 空気抜き対策は、単純な空気抜き口面積の拡張だけで 2) 長大伏越管路における水と空気の挙動に関する数値 はなく、流域内の内水ポンプの運転方法の見直しや流域 解析モデルの構築,H14,水文・水資源学会誌第 16 巻 調節池の再配置など、流域全体での対応が必要である。 5号 今後は、流域対策を行って導出した流量ハイドログラフ 3) 長大伏越管路における水と空気の挙動に関する数値 を利用して空気挙動の検討を行う必要がある。 解析モデルの構築(その2),H15,水文・水資源学会 (3) 増補幹線に接続する管路系統の取り扱い 誌第 17 巻 4 号 現モデルでは、増補幹線の上流端に壁を立てて、増補 幹線より上流側に空気が抜けないようにし、地下河川及 び増補幹線の管内空気はこのモデルの範囲内で安全に 処理するように考えている。増補幹線上流端の人孔の管 内空気圧が大きい場合には、モデル範囲外の枝管や人孔 に影響を及ぼす可能性があるので、枝管や人孔への影響 について検討する必要がある。 (4) 暫定貯留運用時の解析 寝屋川南部地下河川は、完成部分から順番に貯留管と 4) 土木研究所資料 建設省土木研究所河川部都市河川 研究室,ISSN- 0386-5878.第 3243 号,H6.2 5) 水理模型実験による雨水管路の空気混入・排出現象 に関する研究、環境技術,vol.32、No.4,H15
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