特定商取引法に事前拒否者への勧誘禁止制度の導入を求める意見書

平成
28年 2月 20日
青 森県 弁護 士 会
会
長
竹
本
真
紀
特 定商取 引法 に事 前拒否者 へ の勧誘禁止制度 の導入 を求 める意 見書
第
1
意見 の趣 旨
特定 商取 引 に関す る法律 (以 下 「特定 商取 引法」 という。)に ,電 話勧誘販 売及び訪
問販 売 の取 引類型 につ いて,事 前拒 否者 へ の勧 誘 を禁止す る制度 (Do‐ Not‐ Call制 度
,
Do―Not… K■ ock制 度
第2
)を 導入す ることを求め る。
意見 の理 由
1
現行法 上の制度
現行 の特定商取 引法 では,電 話勧誘販売及び訪 問販売 にお いて ,契 約 を締 結 しな
い意思 を表示 した者 に対す る勧誘禁止 の規定が置かれ て いる (法 3条 の 2,17条 )。
しか しなが ら,消 費者が 「訪 問販売 お 断 り」等のス テ ッカー を貼 付す るな どして
,
事 前 に包括的な勧誘拒絶 の意思 を表示 して いて も,契 約 を締結 しな い意思 の表示 に
は あた らな い と解 され てお り,消 費者 は突 然 の電話勧誘や訪 問販売 に対 しては,個
別 に拒否 の意思 を表示 しなければ な らな いこ とにな る。
2 事前拒否者 へ の勧誘 を禁止す る制度導 入 の必要性
この よ うに現行法 上の制度 では 勧誘 を望 まな い消費者 に対 して も,最 低 で も 1回
は接触 して勧誘す る ことがで きる状況 にあ る。 この ことが,事 業者 の巧 妙 な話術 に
よ つて ,消 費者 が 明確 に拒否 の意思 を表示 で きな い まま継続 的 な 勧誘 0再 勧誘 に晒
され続 ける状況 を生み出 し,訪 問販売・ 電話勧誘 による消費者被害 を拡大 して いる。
また,今 後 ,高 齢化社会 の進展 に伴 い,独 居 ある いは夫婦 の み の 高齢者 世帯が益
々増加す る ことが見込 まれ る ところ,判 断能 力 の低 下 した 高齢者が不意打 ち的な勧
誘 に対 し拒否 の意思 を 明確 に表示 で きな いため,不 当な契約や不本意 な契約 の締結
に至 る被害 の増大 も益 々懸念 され る。
この点 ,そ もそ も,消 費者 が事業者 と取 引す るか しな いか ,取 引 の 前提 として勧
誘 を受 けるか否か は,消 費者 の 自己決定権 として尊重 され るべ き もので ある。
そ こで,現 在検 討 が進 め られて い る特定商取 引法 の改正 にあた り,予 め ,電 話又
は訪 間 による勧誘 を拒 絶す る意思 を表示 して い る消 費者 に対 しては,電 話又 は訪 問
によ る勧誘行為 を禁止す る とい う勧誘拒絶制度 (オ プ トアウ ト方式)を 導 入す るべ
きである。
3
反対意見 に対 して
本制度 の導 入 を求 める意 見 に対 して は,事 業者 の 中に,オ プ トアウ ト方 式 であっ
て も,従 前 の営業活動 に比 較すれば 一 定 の 制約 を受 ける ことか ら,営 業 の 自由 に対
す る過剰 な規制で ある として反対 す る意 見 もある。
‐
1-
しか し, もとよ り営業 の 自由は無制限 に認 め られ るべ き ものではな く,消 費者 の
正当な権利 を侵害 しな い範囲 で許容 され なければな らな い。
勧誘 を望 まな い消費者がそ の意 に反 して 勧誘 を受 ける とな る と,消 費者 は生活 の
平穏や主体的な意思決定 という正 当な権 利 を侵害 され る ことにな るのであ り, この
よ うな権利侵害 を して まで認 め られ る営業 の 自由は考え られな い。
しか も,あ くまで も,本 制度 が禁止す るのは,事 前拒否者 へ の電話・ 訪間 による
勧誘行為 で あって ,そ れ 以外 の営業活動 を制約す る ものではな い。例 えば ,事 前拒
否 を して い る消 費者 に対 して も,テ レビや新 聞広告 ,イ ンター ネ ッ ト媒体 を用 いた
勧誘や ,チ ラシの配布 ,ダ イ レク トメー ル の送付 による勧誘な ど,電 話・ 訪 問以外
の方法 による勧誘 を行 う ことは可 能 で ある。本 制度 によって も,事 前拒否者 へ の電
話 0訪 問勧誘以外 の営業活動 は制約 されてお らず ,営 業 の 自由 に対 す る過 剰 な規制
とはな らな い。
4
既 に多 くの諸外国 で導入 されて い ること
諸外 国 を見 ると,電 話勧誘 の事前拒否制度 は,す で にヨー ロ ッパ 各国
(イ ギ リス
フランス ,イ タ リア等 ),南 北 ア メ リカ (ア メ リカ合衆 国 ,カ ナ ダ ,メ キ シ ヨ,ブ
ラジル等 ),ア ジア・ オセ アニ ア (韓 国 ,シ ンガポール ,オ ース トラ リア等)で 導入
,
されてお り,訪 問勧誘 の事 前拒否制度 も,オ ース トラ リア,ル クセ ンブル ク,ア メ
リカ合衆国 各州な どで導入 されて いる。
5
具体的制度設計 の提案
(1)Do‐Not‐ Call制 度 の 具体 的制度設計 にお いて は,事 業者が,そ の保有す る電話 番
号等 の リス トを事前拒 否者 の登録情報 を管理す る機 関 (登 録機 関)に 開示 し,登 録
機 関がそ こに登録者 の 情報 が あるか を確 認す る方法 (い わ ゆる リス ト洗浄方式)を
採用す べ きである。
なぜ な らば ,事 前拒否者 の 登録情報 を事業者が取得す る方法 (い わゆる勧誘拒絶
リス ト取得方式)の 場合 には ,事 業者が保有 0把 握 して いな い登録者 の情報 を新 に
知 る ことがで きるため ,悪 質 な事業者 によ る勧誘 の増加・ 登録情報 の転売な どの危
険があるか らである。
(2)ま た,登 録機 関は,個 人情報 の厳格 な管理 の必要性か ら国 (所 管 は消 費者庁 と
し,適 当と認める第二者 へ の委託 は否定 しな い。)と す べ きで ある。
(3)そ して ,費 用負担 につ いて は,個 人情報 の管理権や私 生活 の 平穏 は消 費者 に と
って基本的な権利 で あるか ら,そ れ を守 るための消費者 の登録 は無 償 とす べ きで あ
る。
他 方 ,事 業者 による登 録 の確 認 は,そ れ によ り無駄 な勧誘 を防止 し,効 率的な営
業活動がで きる ことにつ き事業者側 にメ リッ トが 存す る上,無 償 とす る と事業者 に
よる濫用的な確認 を誘発す るおそれ もある ことか ら有償 とす べ きで ある。
(4)Do‐Not‐ K■ ock制 度 につ いて は,お 断 リステ ッカ ー による事前拒否 に法的根拠 を
求 める制度 (「 ステ ッカ ー 制度 」)又 は訪 問勧誘 を受 けた くな い消費者が予め住 所等
の登録 を行 い,登 録者 へ の訪 問勧誘 を法 的 に禁止す る制度 (「 レジス トリ制度」)の
いずれか又 は両方 を組 み合わせて導入 す るもの とし,レ ジス トリ制度 の制度設計 は
,
上 記 Do‐NotOll制 度 と同様 の もの とす べ きである。
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2‐
(5)ま た,事 業者 の規制 に反す る勧誘行為 を効果 的 に抑止す るために,規 制違反勧
誘 に対す る罰則 を設 け る とともに,規 制違反勧誘 によ って締結 された 契約 につ いて
は,消 費者が契約 の 無効 又は取 消 を主張で きる とい う民事 規定 を導入す る ことが必
要 である。
以上
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3‐