いわき市の産業構造について(その1)

2016年3月
いわき市の産業構造について(その1)
1.はじめに
いわき市は、面積1232km 2、人口32万人という都市であり、全国1741ある市区町村の中で、
どれくらいの位置にあるかと言えば、面積は全国15番目の広さ、人口は、全国78番目の多さとい
うことで、全国的にも比較的大きな都市であると言えます。
それでは、実際、いわき市は、どのような都市なのかと問われた場合、具体的に「こうだ」と説明
するのは難しいのではないでしょうか。
いわき市に住んでいる人に聞いてみると、「いわき市は大きな都市だけど、土日は水戸や仙台
に買い物に行くことも多いかな」といった声を聞くことも多く、水戸や仙台に比べると小規模な都市
だろうということは、推測がつきます。
仙台までは車で3時間、水戸までも車で1時間かかるわけで、時間とお金(高速料金もそれなり
にかかるわけです)がかかるにも関わらず人が集まる水戸、仙台と、いわき市では都市力に一定の
差がありそうです。
この着眼点から、いわき市を水戸、仙台と比較することで、いわき市がどのような都市であるかを
明らかにしたいと思います。
なお、福島県内で一番の都市は、郡山ですので、併せて郡山も比較対象に入れて、いわき市、
郡山、水戸、仙台の4都市を比較してみたいと思います(郡山をおまけ扱いにしたみたいで、スミ
マセン)。
2.4都市の比較ポイント
都市力を比較するに当たり、何を比較すべきかを考える必要があります。
商業機能、産業の集積度合い、交通網の普及状況など、色々な切り口が考えられますが、これ
らの機能が集まったり高度化する背景は、その都市・地域の人口規模が大きいかどうかにかかっ
てきます。
そこで、都市力を比較する手始めとして、人口を中心に比較をしてみたいと思います。
いわき市、郡山市、水戸市、仙台市の人口などを比較すると、下の表のとおりとなります。
いわき市
郡山市
水戸市
仙台市
人口
32.4万人
33.0万人
27.1万人
107.7万人
面積
2
1232km
757km
2
217km
2
786km2
人口密度
263人/km2
435人/km2
1247人/km2
1370人/km2
事業所数
1.4万事業所
1.6万事業所
1.3万事業所
4.6万事業所
従業員数
13.4万人
15.5万人
14.1万人
53.0万人
9.5 人/事業所
9.8 人/事業所
10.1 人/事業所
11.6 人/事業所
41.5%
47.1%
52.0%
49.2%
事業所当たり従業員数
人口に占める従業員数割合
※人口(2015 年データ)、事業所、従業員数(2012 年データ)
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2016年3月
この表を見てどう思ったでしょうか?
まず、人口ですが、仙台市はさすが政令指定都市(人口100万人を超えている都市がなれる)
だけあって、100万人超と大きな都市ですが、郡山市、水戸市はいわき市と大差ないと言うか、水
戸市に至っては、いわき市よりも人口が少ない!
さらに、事業所数を見ると(事業所数とは、お店や企業の事務所、工場などの総計です)、仙台
市は別格ですが、郡山市、水戸市は、やはりいわき市と大差ない状況。
これだけ見ると、いわき市は、郡山市・水戸市と肩を並べる都市力なのではと思ってしまいます
(わざわざ、土日に水戸まで買い物に行く必要はない!?)。
さて、ここで注目して欲しい数値が、「人口に占める従業員数割合」。
要すれば、市に住んでいる人と、その市で働いている人の割合を算出したものですが、いわき
市が41.5%に対し、他の3市は約50%と、ほぼ10%の開きがあります。
この数値は、一体、何を意味するのでしょうか?
いわき市の人は他の都市と比べて働いていない?-おもわず、そんな解釈に飛びついてしま
いそうですが、実は、このような事象が起きた要因は、「市内で働く人=市内で居住する人」という
構図が成り立っているか、どうかが影響していると思われます。
いわき市について言えば、おそらく、いわき市内に住む労働者のほとんどは、いわき市内で働
いているでしょうし、いわき市外に住んでいる労働者がいわき市内に働きに来るというのも、少ない
のではないでしょうか(市外から市内に来るのは交通の便があまり良くないですから)。
データがあるわけではありませんが、いわき市内で暮らしてみての肌感覚では、こんな感じだと
思います。
一方、郡山市、水戸市、仙台市について言えば、おそらく、市外から働きに流入してくる人も多
いだろうと推測されます。
そのため、3市の労働人口は、「市内に居住して働く人+市外から来て働く人」という式が成り立
つため、市内の人口に比べ、働く人の割合が多くなっていると言えそうです。
つまり、郡山市、水戸市、仙台市については、それぞれの市だけでなく、周辺の市町村も含め
た経済圏が成り立っていそうだということが見て取れます。
いわき市については、「いわき市=いわき経済圏」という構図がほぼ成り立ちそうですが、他の
三市は、「郡山市+周辺市町村=郡山経済圏」という構造のため、4市を比較検討する場合、郡
山市、水戸市、仙台市については、各経済圏に含まれる周辺市町村も含める必要があると思われ
ます。
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2016年3月
3.3市(郡山市、水戸市、仙台市)の経済圏の設定
いわき市と、郡山市、水戸市、仙台市を比較する場合、3市(郡山市、水戸市、仙台市)につい
ては、単純に市単独ではなく、周辺市町村を含めた経済圏で比較すべきであることは、前述したと
おりです。
では、その経済圏をどのように設定するのか-非常に難しい命題です。
各市で働く人々の通勤圏がどの範囲なのかということが分かれば良いのですが、なかなか、そ
のような都合の良いデータはありません。
そこで、働く人の職場と居住地域の関係について考えてみたいと思います。
当然ながら、住む場所と通える範囲というのは、ある限界があり、それは住居と職場の距離に関
係しています。
いわき市ついて言えば、いわき市内で働く人は、ほとんどがいわき市内に住んでいる(推定です
が)という構図が成り立っていることを考えると、経済圏というのは、いわき市の面積くらいの広さで
考えるのが妥当と言えそうです。
そこで、今回の比較では、郡山市、水戸市、仙台市についても、近隣市町村を取り込み、ちょう
どいわき市くらいの大きさになったところで、その地区を各経済圏と設定し、それらの地域といわき
市を比較したいと思います。
このような条件で郡山市、水戸市、仙台市の経済圏(これ以降、「郡山圏域」、「水戸圏域」、「仙
台圏域」と名付けることにします)は次のように設定されます。
【郡山圏域】
自治体名
人口
面積
郡山市
33.0万人
757km2
須賀川市
7.7万人
279km2
本宮市
3.0万人
88km2
大玉村
0.8万人
79km2
三春町
1.7万人
73km2
合計
46.2万人
1277km2
※赤色が郡山市、黄色が経済圏に含まれる近隣市町村。
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2016年3月
【水戸圏域】
自治体名
人口
面積
水戸市
27.1万人
217km2
ひたちなか市
15.7万人
100km2
笠間市
7.7万人
240km2
那珂市
5.4万人
98km2
城里町
2.0万人
162km2
大洗町
1.7万人
24km2
茨城町
3.3万人
122km2
石岡市
7.6万人
216km2
東海村
3.8万人
38km2
合計
74.1万人
1216km2
※赤色が水戸市、黄色が経済圏に含まれる近隣市町村。
ちなみに、水戸圏域は、水戸市の隣接市町村だけでは、いわき市の面積に届かず、隣の隣の市
町村も含めなければなりませんでした。
いわき市、相当の広さですね。
【仙台圏域】
自治体名
人口
面積
仙台市
107.7万人
786km2
名取市
7.7万人
98km2
多賀城市
6.2万人
20km2
七ヶ浜町
1.9万人
13km2
利府町
3.6万人
45km2
大和町
2.8万人
225km2
富谷町
5.2万人
49km2
合計
135.1万人
1237km2
※赤色が仙台市、黄色が経済圏に含まれる近隣市町村。
これで、郡山圏域、水戸圏域、仙台圏域を設定することが出来ました。
今後は、いわき市、郡山圏域、水戸圏域、仙台圏域で比較を進めたいと思います。
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2016年3月
4.4つの経済圏(いわき市、郡山圏域、水戸圏域、仙台圏域)の比較
いわき市と比較すべき3つの経済圏-郡山圏域、水戸圏域、仙台圏域を設定できたので、人口
その他の項目を比較したいと思います。
比較表は下記のとおり。
項目
いわき市
郡山圏域
水戸圏域
仙台圏域
人口
32.4万人
46.2万人
74.1万人
135.1万人
面積
1232km2
1277km2
1216km2
1237km2
人口密度
263人/km2
362人/km2
610人/km2
1092人/km2
事業所数
1.4万事業所
2.1万事業所
3.1万事業所
5.4万事業所
従業員数
13.4万人
20.6万人
31.8万人
61.3万人
事業所当たり従業員数
9.5 人/事業所
9.7 人/事業所
10.1 人/事業所
11.4 人/事業所
人口に占める従業員数割合
41.5%
44.6%
42.8%
45.4%
先に、4市を比較した際、「人口に占める従業員数割合」について書きましたが、経済圏を設定
しなおしたので、再度、「人口に占める従業員数割合」を比べて見たいと思います。
市単位では、いわき市と他3市ではその数値が10%近い開きがありましたが、経済圏で比較す
ると、4市とも42~45%の範囲内で、ほぼ差がなくなっています。
これは、「各経済圏で働く労働者=各経済圏で居住する労働者」という図式が4経済圏で成り立
つよう設定できたと考えられ、これで、同じ条件で比較が可能となったわけです。
大雑把ではありますが、比較条件が揃いましたので、いわき市と各経済圏を比較したいと思い
ます。
まず、郡山圏域。人口、事業所数、従業員数は、いわき市の1.4~1.5倍となっています。
水戸圏域については、各項目が、いわき市の2.2~2.4倍に、仙台圏域は、3.8~4.6倍と
なっています。
すなわち、いわき市の都市力は、上記の数値を逆算すると、郡山の7割弱、水戸の5割弱、仙台
の2割強であろうと推測されます。
いかがだったでしょう。いわき市の都市力(人を惹きつける力程度の意味合いです)、普段感じ
ている相場観とさほど違いはなかったでしょうか、それとも、3市との差の大きさに意外に感じたで
しょうか?
更なる分析は、次回へ続くとしたいと思います。
(つづく)
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2016年3月
(参考資料)
・事業所数、従業員数・・・・「2012 年経済センサス」
・人口、面積・・・・Wikipedia
本当は、「Wikipedia」から引用するのは良くないのですが(信憑性の問題があるので)、各市
町村のデータを調べる手間を省くため、「Wikipedia」から引用しています。
間違いはないと思いますが、検証したい方は、総務省の統計や、各自治体の HP などから調べ
ることをお勧めします。
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