1-5 放射性物質の分布情報の公開

福島第一原子力発電所事故の対処に係る研究開発
1- 5
放射性物質の分布情報の公開
-環境モニタリングデータの集約と迅速な公開-
環境モニタリングデータベース
測定データ
マップ化データ
グラフ化データ
測定関連資料
解析支援ツール
収集・登録の一元化
経産省
福島県
規制庁
文科省
厚労省
内閣府
・・・
農水省
環境省
国交省
地域住民,国・自治体の
行政担当者,研究者に
多様な形式でデータ提供
図 1-11 環境モニタリングデータベースシステム
関係省庁,地方自治体が独自に公開していた環境モニタリングデータを一元的に集約、比較可能な形式で公開しています。
30 cm
20 cm
KURAMA-Ⅱ
会津若松市
郡山市
リアルタイム表示
いわき市
福島県主要4市を走行するバスに
KURAMA-Ⅱを搭載、空間線量率を
継続的に測定
分布データ表示
携帯回線を用いて測定
データを収集
測定データを自動解析
結果を自動可視化
ネットワークを介して
情報発信
経時変化表示
図 1-12 福島県空間線量率測定システム
路線バスを活用して空間線量率を継続的に測定,集約,解析し、結果を可視化して迅速に公開しています。
東京電力福島第一原子力発電所事故により放出された
放射性物質の影響を評価するためには、現状分布及び時
間変化の傾向を詳細に把握することが必要です。私たち
は、これらの把握に必要な環境モニタリングデータを広
く一般に公開する事業を進めています。
その事業のひとつが、環境モニタリングデータベース
の構築です。これまで、関係省庁や地方自治体により数
多くの環境モニタリングが実施されてきましたが、それらの
データは実施機関が各々独自の形式で公開していました。
そこで私たちは、公開データを自動的に収集するツール
を開発して散在したデータを一元的に集約するとともに、
データの表示形式や精度を統一して相互比較を可能とす
ることでデータを利活用しやすくしました
(図 1-11)
。こ
れまでに、21 機関から公開されている 3 億超の環境モ
ニタリングデータを公開し、文部科学省事業のもと構築
した前身のデータベースと比較して約 2.5 倍の月平均ア
クセス数(約 16 万 6 千件)を記録しました。
また、福島県及び京都大学と協力し、福島県下 4 市
(福
島市,郡山市,いわき市,会津若松市)
を走行する路線バ
スに KURAMA-II と呼ばれる車載型空間線量率測定器を
搭載し、空間線量率を継続的に測定、迅速に公開する事
業も進めています
(図 1-12)
。この KURAMA-II を用いた
測定は広域かつ詳細に空間線量率を測定できることから、
これまでも行政機関により実施されてきましたが、費用の
面から年に数回程度の実施頻度でした。そこで私たちは、
居住地域を毎日運航する路線バスを活用して測定を行う
ことで、空間的にも時間的にも詳細な測定を可能としまし
た。さらに、ネットワーク技術やデータ処理技術を活用し、
路線バスで測定された結果を集約,解析,可視化する処理
を自動化することで、測定結果をリアルタイムに提供でき
るようにしました。これにより、同様な事故による緊急時に
おいても、走行箇所を変更するだけで、空間線量率の状況
をリアルタイムに把握することが可能です。現在、リアル
タイム表示データは、福島駅前に所在する NBF ユニック
スビルに設置された大型ディスプレイで公開されています。
本研究は、原子力規制委員会原子力規制庁からの受
託事業「平成 25 年度東京電力福島第一原子力発電所
事故による環境モニタリング等データベース構築」及
び福島県からの受託事業「広域線量率分布測定用装置
(KURAMA-II)
データ解析・補正」の成果の一部です。
●参考文献
Seki, A. et al., Development of Radionuclide Distribution Database and Map System on the Fukushima Nuclear Accident, Progress in
Nuclear Science and Technology, vol.4, 2014, p.47-50.
16
原子力機構の研究開発成果 2014