解答PDFダウンロード

一橋大学(前期)
【日本史】解答例
Ⅰ
問1 中国の律令は隋・唐代に集大成された法体系で,律は刑法,令は行政法や租税法な
どに相当し,皇帝が国土人民を支配することを基本理念とした。
問2 郡司は国司支配の下で地方行政の実務を担ったが,班田制が崩壊して負名体制に移
行すると,朝廷から地方支配を一任された国司が権限を強め,役割の低下した郡司は
受領の下に駆使される存在となった。
問3 武家社会の慣習である道理や頼朝以来の先例を成文化し,御家人同士や御家人と荘
園領主との間の紛争を公平に裁く基準を明確にした。また適用範囲は幕府の勢力が及
ぶ範囲に限られ,御家人を対象とした。
問4 公事方御定書。江戸幕府の裁判は,寺社奉行・町奉行・勘定奉行の管轄がそれぞれ
異なり,管轄がまたがる事項は評定所で老中・三奉行が合議した。訴訟の増加に伴い,
1719 年の相対済し令では金銭訴訟は当事者間で解決することとして評定所業務の円
滑化を図り,また公事方御定書で裁判や刑罰の基準を定めた。
Ⅱ
問1 『職工事情』
。産業革命下の工場労働者について,産業別に労働環境や就労実態をま
とめた。
問2 適用が労働者数 15 人以上の大工場に限定されたため,
全工場数の 9 割以上が小規模
工場として適用外になった他,保護の対象が女子や幼年者の労働者に限定された。12
歳未満の幼年者を就業させることは禁じられ,労働時間は 12 時間に制限されたが,
例外規定も認められた。深夜業の規制においても当面の猶予が認められ,状況はほと
んど改善されなかった。
問3 繊維産業。日本の産業革命を牽引する製糸業や紡績業といった繊維産業は,没落し
た士族や小作人の子女を年季奉公で雇用したため,低賃金と長時間労働で人件費が抑
制できた。機械や原材料輸入で輸入超過が続く中,国産原料の生糸は外貨獲得に貢献
し,綿糸や綿織物業の綿布は大陸への市場拡大を果たしたため,労働条件の保障によ
る製品価格の上昇は,国際競争力を低下させ,国家の不利益になると考えられた。
Ⅲ
問1 ①憲政党 ②近衛文麿
問2 不換銀行券と政府紙幣の乱発でインフレが増大するなか,大蔵卿松方正義は軍事費
以外の支出削減による緊縮財政と酒造税増税や間接税付加による重税政策によって
紙幣整理を断行し,中央銀行である日本銀行を設立して発券の一本化を行い,官営工
場払下げを推進し民間資本の育成をはかった。
問3 第一次世界大戦後,世界的に社会主義運動が激化するなか,無政府主義者による摂
政宮狙撃事件も踏まえ,日ソ基本条約の締結や,普通選挙法成立による無政府主義者
や共産主義者の活動防止のため「国体ヲ変革」
「私有財産制度ノ否認」する者を対象
に弾圧法規を定めた。
問4 鳩山一郎内閣は改憲による自主憲法制定と再軍備を図ろうとした。そこで護憲を標
榜する社会党は改憲阻止を可能にする議席数の確保を図った。
問5 細川護煕内閣は従来の中選挙区制に代わる小選挙区比例代表並立制を導入し,ゼネ
コン汚職などの政治腐敗の一掃を図った。