期限切れ欠損金の損金算入と残余財産確定に よる欠損金の

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期限切れ欠損金の損金算入と残余財産確定に
よる欠損金の引き継ぎ
Issue 88, March 2016
In brief
子会社が債務超過の状況において、債務免除による(期限切れ)欠損金の損金算入を検討する事例が見受
けられます。100%子会社の整理を行う方法として、解散・清算と合併の課税関係は比較されることが多いで
すが、その際には、子会社の欠損金の引き継ぎの可否が重要な検討事項の一つとなります。
本ニュースレターでは、期限切れ欠損金の損金算入が行われる場合、残余財産確定により欠損金が引き継
がれる場合の留意点についてご説明いたします。
In detail
1.
期限切れ欠損金の損金算入の取り扱い
法人が解散した場合において、残余財産がないと見込まれるときは、その清算中に終了する事業年度前の
各事業年度において生じた欠損金額(期限切れ欠損金額)に相当する金額は、青色欠損金等の控除後の所
得の金額を限度として、その事業年度の所得の金額の算定上、損金の額に算入することとされています(法
法 59③)。
損金算入の対象となる期限切れ欠損金額は、この措置の適用を受けようとする事業年度(以下、「適用年度」)
の前事業年度以前の各事業年度において生じた欠損金額を基礎として、次の①に掲げる金額から②に掲げ
る金額を控除した金額をいいます(法法 59③、法令 118)。
① 適用年度終了の時における前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金額の合計額
② 青色欠損金又は災害欠損金の繰越控除の規定により適用年度の所得の計算上損金に算入される欠損
金額
2.
前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金額の合計額
上述 1.①の前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金額の合計額とは、当該適用年度の確定申
告書に添付する法人税申告書別表五(一)の「利益積立金及び資本金等の額の計算に関する明細書」に期
首現在利益積立金額の合計額として記載されるべき金額で、当該金額が負(マイナス)である場合の当該金
額をいいます(法基通 12-3-2)。つまり、この前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金額の合計
額はその法人の設立当初からの欠損金額を指します。
3.
期限切れ欠損金等の損金算入に伴う青色欠損金の切捨て
上述 1.②の青色欠損金又は災害欠損金のうち、適用年度の所得の計算上損金に算入される金額について
は、欠損金の控除限度額の制限が適用されます(一定の中小法人等を除きます)。したがって、適用年度に
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おける欠損金控除前の所得金額の 65%(平成 29 年 4 月 1 日以後開始事業年度は 50%)が青色欠損金又
は災害欠損金のうち、損金の額に算入される欠損金額の限度となります。
期限切れ欠損金は、設立当初からの欠損金額から適用年度における青色欠損金及び災害欠損金の損金算
入額を差し引くことにより算出されます。つまり、設立当初からの欠損金額は青色欠損金の一部を構成してい
ることになります。欠損金の控除限度額の制限が適用される場合であっても、その制限部分は、期限切れ欠
損金として損金算入されることとなります。
そこで、青色欠損金及び災害欠損金のうち、期限切れ欠損金の損金算入規定により、適用年度の所得の計
算上損金の額に算入される金額からなる部分の金額は、適用事業年度後の事業年度における繰越控除の
対象となる青色欠損金額及び災害欠損金額から、切り捨てられることとなります(法法 57⑤、58③)。
設例
適用年度の所得金額(欠損金控除前)
青色欠損金額
設立当初からの欠損金額
設立当初から
の欠損金額
150
100
90
150
青色欠損金の損金算入
青色欠損金の切り捨て
期限切れ
欠損金
85
期限切れ
欠損金
85
青色欠損
金
所得金額
(うち25)
90
100
65
35
10
(うち25)
25
65
青色欠損金の損金算入額
① 所得金額 100×65%=65
② 青色欠損金 90
∴少ない金額 ①65
期限切れ欠損金の損金算入額
① 設立当初からの欠損金額 150-青色欠損金の損金算入額 65=85
② 青色欠損金等の控除後の所得金額 100-65=35
∴少ない金額 ②35
青色欠損金の切り捨て額
① 適用年度における青色欠損金の繰越額 90-65=25
② 期限切れ欠損金の損金算入額 35
∴少ない金額 ①25
4.
残余財産確定の場合の欠損金の引き継ぎ
内国法人との間に完全支配関係のある他の内国法人の残余財産が確定した場合において、当該他の内国
法人のその残余財産確定の日の翌日前 9 年内に開始した各事業年度において生じた未処理欠損金額があ
るときは、その内国法人のその残余財産確定の日の翌日の属する事業年度以後の各事業年度における欠
損金の繰越控除に関する制度の適用については、その前 9 年内事業年度において生じた未処理欠損金額
は、その内国法人の各事業年度において生じた欠損金額とみなすこととされています(法法 57②、58②)。
(注)完全支配関係がある他の内国法人株式に係る清算損の計上はできません。
ここで、未処理欠損金額について、残余財産が確定した他の内国法人の欠損金額で法人税法 57 条第 5 項
及び法人税法 58 条第 3 項の規定により切り捨てられた部分の金額は除かれることとされております。
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つまり、残余財産確定の場合の欠損金の引き継ぎの際にも、期限切れ欠損金等の損金算入に伴う青色欠損
金の切捨てが適用されるため、適用年度において、多額の債務免除等が行われた場合には、親法人に引き
継がれる欠損金がなくなることも考えられます。
5.
おわりに
2010 年度(平成 22 年度)税制改正による清算所得課税の廃止や、2011 年度(平成 23 年度)税制改正によ
る欠損金の繰越控除制度の控除限度額の創設により、期限切れ欠損金の取扱いも改められてきました。
2016 年度(平成 28 年度)税制改正大綱では、欠損金の繰越控除制度における控除限度額の段階的な引下
げを行うことが明記されております。
控除限度額の段階的な引下げに伴い、適用年度において青色欠損金及び災害欠損金の未使用部分が増
加するものと考えられますが、当該欠損金は、残余財産確定の際に引き継ぎの対象にならない場合がある点
留意する必要があります。
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