葬られた津波予測目

葬られた津波予測目
次々見つかる新事実
防災に役立てるために公表されたものだ。異論は
きるかどうか地震学者の見解は一致していなかっ
あったが,専門家で議論して合意に達したところ
たj と主張した。
一方で,電力会社が津波評価のルールとしてい
に意義がある J
「地震は破壊現象なので,偶然による部分があ
た土木学会の津波評価技術(2002年,土木学会手法)'
り 津波の詳細まで事前に予測することは永久に
の弱点についても率直に認めた。佐竹氏は土木学
不可能だ、。しかしどの程度の津波かは予測できて
会の委員として,土木学会手法の策定にもかかわ
いた。それに対して有効な対策は立てることがで
っていた。
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住民側弁護士の「土木学会手法は,個々の津波
きたはずだj
議田孝史
そえだたかし
科学ジャーナリスト
事故は想定外ではなかった。
1
9
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0年代の設計当初に備えていたよりも大き
裁判でわかったこと
な津波が,福島第一原子力発電所に襲来する可能
対する政府・東電側の証人は,佐竹健治・東京
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皮源について詳細な検討はしていないのかj とい
大学地震研究所教授で,現在,地震本部の長期評
う質問には「はい」と明快に言い切った。「過去
価部会長を務めている。リスク評価をとりまとめ
の津波について詳細な検討をしないと,将来どこ
る部会の新旧部長が対立する構図は注目された
でどういう津波が起こるか,検討はできない。そ
(コラム参照)。
れをやったのは地震本部の長期評価。土木学会は,
性が無視できないことは,事故の十数年前から政
各地の裁判で,政府の地震調査研究推進本部(地
佐竹氏は古文書にもとづく歴史地震の分析や近
起きたものを計算する技術は当時の最高レベルだ
府の公式報告書で,たびたび、警告されていた。そ
震本部)が 2002年 7月に発表した長期評価 1につい
年の地震観測の結果から,福島沖では地震の起こ
が,どこでどんな地震がおきるかは長期評価のほ
の場合には炉心損傷を起こすことも東京電力(東
て論議されている。この長期評価は福島県沖の日
り方がほかの日本海溝沿いの場所とは異なってい
う古三優れており,そちらを主な目的にしていると
電)や原子力安全・保安院(保安院)は遅くとも事故
本海溝でも高い津波を引き起こす津波地震が発生
るという考え方を示し,「福島沖で津波地震が起
5年前には知っていた。それでも彼らは対策を先
すると予測しており,福島第一原発地点の津波高
延ばしにして,福島第一原発はほとんど改善され
さは 1
5
.
7m になると東電は 2008年 3月には計
コラム
ないまま事故の日を迎えた。
事故時の津波高さは約 13m)。この
算結果を得ていた 2(
要求される『万が一』
異なる意見を持つ地震学者が顔を揃えた法廷だ
れを想定する際には,断層面のどこで強い揺れが
ヲたがs 津波の予見可能性について議論が十分噛
発生するかや割れの進行方向などについて不確実
み合っていなかったように思われた。どこまで厳
なことが多いため,原発にとって悪い条件を重ね
しく想定しなければならないかs 一般防災向けと
て「万が一j を想定する。津波波源の想定はそこ
原発向けでは要求される水準が異なることが明確
まで突き詰めて考えていなかったように見える。
筆者は『原発と大津波警告を葬った人々』(岩
波新喜
2014年 1
1月)において内部文書やインタビ
ューからその経緯を解き明かした。出版後 1年
余りが経過し各地で進む裁判や情報開示により,
さらに新しい情報が明らかになってきた。
保安院の審査担当者は,福島第一原発で津波の
長期評価がなぜ福島第一の津波対策に生かされな
かったのか。津波の予見可能性をめぐり,大きな
争点となっている。
「これ(長期評価)にもとづ、けば,( 15.7m という数値
0月ぐらいまでには,得
は)おそくとも 2002年 1
ることはできたのではないか」
区分できるのかJという聞いにも,「はい,そう
ような大きな津波を想定する必要はなかった j と
いう政府や東電の論理には無理がある。原発の揺
にされないまま,証人尋問が進められたことが一
震源域の不確実性を考慮するならばs 日本海溝
因だろう。政府や東電側の法廷戦術だろうが,地
沿いの津波地震を,古文書に記録のない福島j
中i
こ
震本部の長湯評価の細かいあら探しに時間が費や
も設定する必要はあるのか 逆に 1万年に 1回
審査を進めるように進言すると上司から「クどに
昨年 7月,千葉地裁で島崎邦彦・東京大学名
なるよ j と圧力を受けていた。東電は,保安院に
誉教授(地震学)はこう証言した。原発事故で避難
津波評価の先送りするよう根回しを進め,その了
した福島県の住民らによる集団訴訟3で住民側の
解を得ていた。事故後 5年も経過して,ょうや
証人として出廷した。島崎氏は,地震本部の長期
万年に 1回より小さくなるように勧告している
バラツキを考慮するならば,津波地震の規模は既
くそんな重大な事実が明るみになったことに驚く。
6年務めた後,初代の原子力規
評価部会長を約 1
ことと,敷地高さ超えの津波がすぐに炉心損傷に
往最大の明治三陵級( M 8.6)に限定してよかったの
そして,まだ閣に隠されたままの事実が多いだ、ろ
制委員会委員長代理を 2年務めた。地震と原発
つながること(溢水勉強会の結果)をあわせて考える
か,もっと大きなマグニチュードも想定しておく
の規制,双方に詳しく,その発言は重みを持つ。
と,東電や規制当局は,万が
べきだったのか。原発で要求される想定の水準を
うことがうかがえる。今年から
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勝俣恒久元会長
ら東電の元幹部 3人の刑事裁判が始まる。事故
「地震本部の予測には異論もあった」「地震本部
がヲ|き起こされた過程がより詳しく解明されるこ
は正確な波源モデルを提示しておらず,高い津波
とを期待したい。
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もそのような地震は起き得ないと科学的に言える
されてしまった。
IAEAが炉心損傷頻度が一つの原子炉あたり 1
レベルの極めてま
れな津波まで想定しておく必要があった。
のか,十分検討されたのだろうか。そして規模の
(科学者や工学者が)十分理解できておらず,[想定を
そもそも地震本部の長期評価は,原発の安全審
つくしていなかったJのではないか。原発で基準
は想定できなかったJという東電の主張に対し,
査が要求する[万が一]まで念頭において想定し
地震動を想定するときの[悪条件を重ねて考え
島崎氏はこう述べた。
ているものではない。原発では,むしろ地震本部
るj思考が,津波の分野では欠けていたように見
の想定より,まれな,大きな津波を想定しなけれ
える。その点を法廷で明らかにしてもらいたかっ
ばならない。長期評価に不確実な部分が残されて
た
。
「そもそも地震本部が出す予測は,地震につい
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ての研究成果が一般社会にうまく伝わっていなか
TakashiSOEDA
った阪神・淡路大震災( 1995年)の反省をもとに,
いたのは事実だが,「だから原発では長期評価の
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