青竜塾 平成27年度 第4回 漢方生薬と方剤 滋陰剤 医療法人社団 ひのき会 証クリニック 吉祥寺・神田 檜山 幸孝 http://www.kampo-future.com Ⓒ 2016 Y.Hiyama 虚実、寒熱の2次元座標における方剤の位置 http://www.kampo-future.com Ⓒ 2016 Y.Hiyama 陰陽、虚実の2次元座標における方剤の位置 http://www.kampo-future.com Ⓒ 2016 Y.Hiyama 漢方と西洋医学からみた 風邪≒急性上気道炎 病態:傷寒 ①太陽病:悪寒/悪風→発熱→発汗 関節痛・筋肉痛 ②陽明病:脳・脊髄炎、脳血管障害→ 麻痺:中風 ③少陽病:内熱 呼吸器;咳⇒気管支炎、肺炎 消化器;口苦い、美味しくないー消化機能低下 ④太陰病:内寒 消化器;食事が入らない、もたれるー機能低下 ⑤少陰病:裏寒進む 腎陽虚:低体温、頻尿、夜間尿 心陽虚:低血圧 http://www.kampo-future.com Ⓒ 2016 Y.Hiyama 漢方医学からみた 気管支炎、気管支喘息 • 症状:風邪では表から半表半裏に内向して、咽頭→喉頭炎さら には気管支炎、病勢が強いかもしくは闘病反応が低い(気血両 虚)場合には肺炎に至る。基礎疾患に慢性気管支炎や気管支 喘息があれば一気に進行して急性増悪となる。 • 気管支喘息は気管支炎によっておこる気管支粘膜の刺激症状 ないしは反射亢進により起こると考える。咳喘息も同じ。→平喘、 止咳、滋肺陰、理気 ¶炎症抑えるにはス剤吸入に勝る漢方無し。 →ス剤減量に柴胡剤+補気剤 ¶気管支の痙攣にはβ2刺激薬に勝る漢方無し。 →β2刺激薬の減量時や軽症では麻黄剤 http://www.kampo-future.com Ⓒ 2016 Y.Hiyama 舌診:陰虚 津液不足 乾燥・裂紋 http://www.kampo-future.com Ⓒ 2016 Y.Hiyama 躁邪とは • 湿度が低い乾燥した環境が心身に及ぼす障害 • 躁は五行説では四季のうち秋の気とされる(五行説で は秋と肺が金に属す) • 本邦では秋期から低温乾燥状態となる。乾燥状態は外 気に触れる肺と皮膚に影響して、肺では乾性咳嗽、咳 喘息など、皮膚では乾燥性皮膚疾患(いわゆる皮膚の かさつき、肌荒れ)を来す。 • 病理:津液の枯躁を招来し、陰虚となる。陰虚+うつ熱 =陽明病に至ることもある。 http://www.kampo-future.com Ⓒ 2016 Y.Hiyama 躁邪の六淫における相互関係 • 躁邪は津液枯躁から津虚をもたらし、津虚血 燥さらには陰虚火旺、血熱に至ることもある。 陳旧化して津虚血瘀となることもある。 • 五臓の障害としては肺陰虚となり、乾性咳嗽 や皮膚枯燥→搔痒を生ずる。これには腸も含 まれ燥屎(乾燥して硬くなった大便)に至る。 http://www.kampo-future.com Ⓒ 2016 Y.Hiyama 内燥とは • • • • ①外邪が進入後、化火したもの。 ②五志(七情)化火 ③痰や瘀血が結ぼれて化火したもの。 陰虚火旺:陰虚→陽亢→化熱~化火 腎陰虚、肺陰虚からが主なもの • 火は炎上し丈夫を冒す=上擾(じょう)。 心:心火上炎→不安、不眠、焦燥、パニック発作 肝:肝血に火が及ぶと肝気は上行し肝風となる。 →痙攣、振戦、てんかん。 http://www.kampo-future.com Ⓒ 2016 Y.Hiyama 麦門冬湯とは 出典 処方構成 適応病名・症状 外台秘要方 麦門冬10.0 半夏5.0 人参2.0 粳米5.0 甘草2.0 大棗3.0 再構成したものを示す 呼吸器系:気管支炎 気管支喘息 痰の切れにくい咳 胸部疾患の咳嗽 *こみ上げてくるような強い咳をして顔が赤くなるもの=咳逆上気、 通常喀痰は少量でねばり、喀出困難であり、 時には喀痰に血滴のあるもの、 あるいはのぼせて咽喉がかわき、咽喉に異物感のあるもの。 Ⓒ 2016 Y.Hiyama 麦門冬湯徴候 • 脈証:沈 やや数 やや細 やや虚 • 舌証:舌質 紅色、乾燥した白苔を被る 併存する 心陰虚:深紅色舌、白苔少なし 肝陰虚:紅色(舌中部)脈は弦・数・細 • 腹証:腹力2~3/5 心下痞+ Ⓒ 2016 Y.Hiyama 麦門冬湯原典 金匱要略 肺痿肺癰咳嗽上気病篇 • 大逆上気,咽喉不利。 逆を止め,気を下すものは, 麦門冬湯之を主る Ⓒ 2016 Y.Hiyama 構成処方から見た 漢方医学的適応病態 麦門冬湯 麦門冬10.0 半夏5.0:化痰止咳 麦門冬10.0:滋陰 潤燥 半夏5.0:降逆気 化湿 人参2.0 大棗3.0 粳米5.0甘草1.0 :補気健脾 麦門冬3.0人参2.0 :生津 Ⓒ 2016 Y.Hiyama 滋陰至宝湯とは 出典 処方構成 万病回春 柴胡3.0 芍薬3.0 当帰3.0 茯苓3.0 白朮3.0 麦門冬3.0 貝母2.0 知母3.0 地骨皮3.0 甘草1.0 陳皮3.0 薄荷1.0 香附子3.0 逍遥散:柴胡3.0 芍薬3.0 当帰3.0 茯苓3.0 白朮3.0 甘草1.5 薄荷1.0 生姜0.5 加味逍遥散=逍遥散+(牡丹皮2.0、山梔子2.0) 適応病名・症状 再構成したものを示す 呼吸器系:虚弱なものの慢性の咳、痰 Ⓒ 2016 Y.Hiyama 滋陰至宝湯徴候 • 脈証: 数 小(細) やや虚 弦 • 舌証:舌質 紅色、乾燥した薄い白苔を被る • 腹証:腹力2~3⁻/5 心下痞・胸脇苦満+ 心下悸+ 両側腹直筋緊張-~± Ⓒ 2016 Y.Hiyama 滋陰至宝湯原典 万病回春虚労編 婦人の諸虚百損,五労七傷,経脈調はず,肢体羸痩するを 治す。経水を調え、血脈を滋し、虚労を補い、元気を扶け、 脾胃を健やかにし、心肺を養い、咽喉を潤し、頭目を清くし、 心慌を定め、神魄を安んじ、潮熱を退け、骨蒸を除き、喘咳 を止め、痰涎を化し、盗汗を収め、泄瀉を住め、鬱気を開き、 腹痛を療し、胸膈を利し、煩渇を解し、寒熱を散じ、体疼を祛 る。甚だ奇効あり。 Ⓒ 2016 Y.Hiyama 構成処方から見た 漢方医学的適応病態 滋陰至宝湯 柴胡3.0 芍薬2.0:疏肝解鬱、消炎、鎮静 当帰3.0:補血 茯苓3.0 白朮3.0 甘草1.0 :利水、健脾和胃 麦門冬3.0 甘草1.0 :滋陰潤肺、生津 貝母2.0:潤心肺 治虚労・煩熱 治咳逆上気・肺痿肺癰 知母3.0:清肺虚熱 地骨皮3.0:清虚熱(肺熱を清し、止咳、去粘稠痰) 陳皮3.0:理気、化痰 薄荷1.0:柴胡+芍薬を補強 香附子:理気 舒肝(肝気鬱結を巡らす)→解欝 Ⓒ 2016 Y.Hiyama 滋陰降火湯とは 出典 処方構成 適応病名・症状 万病回春 地黄2.5 芍薬2.5 当帰2.5 麦門冬3.0 天門冬2.5 知母1.5 黄柏1.5 陳皮3.0 白朮3.0 甘草1.0 再構成したものを示す 呼吸器系:のどに潤いがなく、痰が出なくて咳き込むもの Ⓒ 2016 Y.Hiyama 滋陰降火湯徴候 • 脈証:沈 数 やや小(細) やや虚 • 舌証:舌質 淡紅色、乾燥した薄い白苔/無苔 • 腹証:腹力3⁻/5 心下痞-胸脇苦満- 両側腹直筋緊張- 咽頭後壁の発赤乾燥 Ⓒ 2016 Y.Hiyama 滋陰降火湯原典 万病回春 虚労編 「虚労する者は,陰虚して相火*動く也。陰虚して火動する 者は治し難し。虚労して補を受けざる者は治し難し。滋陰 降火湯,陰虚火動して発熱咳嗽,吐痰喘息,盗汗口乾す るを治す。此の方と六味地黄と相兼ねて之を服せば,大 いに虚労を補い神効あり」 *相火とは心の君火(心の火を君火と呼ぶ。君火は最も重要とされ る。 )と相対し、腎陽が発揮する各臓腑を温養し機能活動を推動する 機能。腎に存在する火=「命門の火」肝・胆・三焦も命門に源を発する 相火を内蔵する。相火は妄動すると邪火となる。 Ⓒ 2016 Y.Hiyama 構成処方から見た 漢方医学的適応病態 滋陰降火湯 芍薬2.0:瀉肝(瀉肝火) 当帰3.0:補血 潤燥 地黄2.5:補陰 補血 麦門冬3.0 甘草1.0 :滋陰潤肺、清肺熱、補胃陰 天門冬2.0:滋陰潤肺 清熱 治咳逆上気 補腎陰 知母3.0:清肺虚熱(瀉火) 補腎陰 黄柏3.0:瀉相火(肺熱を清し、止咳、去粘稠痰) 陳皮3.0 白朮3.0 甘草1.0 :補脾胃 Ⓒ 2016 Y.Hiyama 清肺湯とは 出典 一貫堂方(森道伯) 処方構成 黄芩2.0 山梔子2.0 天門冬2.0 麦門冬3.0 五味子1.0 竹茹2.0 貝母2.0 杏仁2.0 桔梗2.0 桑白皮2.0 陳皮2.0 茯苓3.0 生姜1.0 大棗3.0 甘草1.0 適応病名・症状 再構成したものを示す 痰の多く出る咳 Ⓒ 2016 Y.Hiyama 清肺湯徴候 • 上気して赤ら顔 、激しい咳 黄色粘稠痰 附)productive cough:症状は固定して、執拗 • 脈証:浮 数 虚実中間~虚 小(細) • 舌証:舌質 乾燥 尖端紅 乾燥した黄色・膩苔をうすく被る • 腹証:腹力3/5 心下痞硬+ 胸脇苦満- Ⓒ 2016 Y.Hiyama 清肺湯原典 万病回春 咳嗽門 久嗽 止まず労怯 となり, 若しくは久嗽 して声唖し,或は喉に瘡を生ずる 者は,是れ火,肺金を傷(やぶ) るなり。倶 に之を治し難し。若しくは気血 衰敗し,声唖し, 失音する者も亦治し難し。已上の三条は, 倶に後方の 宜 し。」, 「一切の咳嗽,上焦に痰盛んなるを治す」 注)原法では竹茹が含まれて居らず、竹茹を本邦で初めて加えたものが 一貫堂方(森道伯)である。初出:『一貫堂医学大綱』(昭和8年)→『漢方 一貫堂医学』(昭和39年)として増訂出版 痰や咳の症状が強い場合には原方に竹瀝を加えるよう指示がある。 ¶竹瀝とはハチクまたはマダケなど竹類を火で炙って断面から滲出する液を集めたもの。 ¶竹茹とはマチクなどの茎の外層を薄く削り落とし、緑色を帯びた白色内層を薄く削ったもの。 解熱、涼血薬として煩熱、嘔吐、吐血、小児の驚癇などに応用する。 竹瀝は保存に堪えないことから生薬として流通していた竹茹を以て当てたと考えられる。 Ⓒ 2016 Y.Hiyama 構成処方から見た 漢方医学的適応病態 清肺湯 黄芩2.0:清熱燥湿、瀉火解毒 山梔子2.0:清熱燥湿、瀉火解毒 胸内の熱を去る。 天門冬2.0:滋肺陰、滋腎陰 麦門冬3.0:滋肺陰、滋胃陰 →陰虚による熱を冷ます 五味子1.0:斂肺止咳 益気生津 鎮咳去痰 当帰3.0:補血、調経活血、止痛、潤腸 竹茹2.0:清熱化痰 貝母2.0:化痰(粘稠・黄色痰)止咳 杏仁2.0:肺気粛降止咳(吸気)、平喘、去痰 桔梗2.0:宣肺止咳(呼気)、排膿、消炎 桑白皮2.0: 陳皮2.0:理気、化痰 茯苓3.0 生姜1.0 大棗3.0 甘草1.0:健脾和胃 Ⓒ 2016 Y.Hiyama 燥邪・内燥のまとめ • 病態: • ①外感熱邪により体温上昇を招来し、発汗により体温低下を 図るが、発汗多量(口渇)から脱汗にいたり気虚(脱力)になる。 津液不足から体温を下げることが出来なくなり、熱が満ちた状 態になる→陽明病期。意識障害を生じる。ほぼ熱邪に同じ。 ②外気が乾燥し=燥邪、津液が失われる→内燥 ③慢性継続性の基礎疾患により津液喪失となる=陰虚。 • 脾虚、胃熱=口渇・口内炎・歯肉炎・舌炎、腸内に燥屎 =乾燥して硬くなった大便 • 内熱が基礎にあると躁邪はより顕著になる • 対応する治療:清熱、生津→滋陰 補血 補脾 http://www.kampo-future.com Ⓒ 2016 Y.Hiyama
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