航空宇宙工業規格 製品リリースにおける検証の委譲 SJAC 9117 (パブリックコメント募集用) 2016 年 X 月 X 日 発行 一般社団法人 日本航空宇宙工業会 SJAC 9117 制定の根拠 製品のリリースにおける検証の委譲(DPRV)のプロセスは,組織毎に異なる。組織の製品のリ リースにおける検証が供給者に委譲されている場合,標準のプロセスの実施は,航空,宇宙及び防 衛産業のサプライチェーンにおける流出不適合のリスクを低減させる。 まえがき 顧客満足を保証するため,航空,宇宙及び防衛分野の組織は,顧客及び監督官庁の要求事項を満 たす,又はそれを上回るような安全で信頼のある製品を生産し,継続して改善していかなければな らない。産業の国際化及びそれに伴う組織のサプライチェーンの複雑さは,この目標を複雑なもの にしている。最終製品の組織は,世界中にわたる,サプライチェーン内のあらゆるレベルの供給者 から購入した製品の品質を保証し,統合するという課題に直面している。さらに,業界の供給者及 び製造工程請負業者は,品質に対する異なる期待及び要求事項をもつ多様な顧客に製品を引き渡す という課題に直面している。 航空,宇宙及び防衛産業界では,生産活動を通じて品質及び安全の著しい改善並びにコスト削減 を達成するという目的のために,国際航空宇宙品質グループ(IAQG)を設立した。この組織は, アメリカ,アジア・太平洋及びヨーロッパの航空,宇宙及び防衛企業の代表者で構成される。 この規格は,航空,宇宙及び防衛産業において,供給者への製品リリースにおける委譲に対する 最小限の要求事項を定義するものである。顧客固有の要求事項及び多様な期待により結果的に起こ るばらつきを最小限にすることにより,共通の要求事項は,品質及び安全性の改善及びコスト削減 をもたらすであろう。この規格は,主に航空,宇宙及び防衛産業向けに作成されているが,DPRV プロセスが有益と思われる他の産業界においても使用することができる。 (1) 著作権法により無断での複製,転載等は禁止されております。 SJAC 9117 目 次 適用範囲 ................................................................................................................................................ 1 1 1.1 一般 ................................................................................................................................... 1 1.2 適用 ................................................................................................................................... 1 2 適用文書 ................................................................................................................................................ 1 3 用語及び定義 ........................................................................................................................................ 1 4 要求事項 ................................................................................................................................................ 2 4.1 委譲する組織に対するシステム要求事項 .......................................................................... 2 4.2 供給者の責任 ..................................................................................................................... 3 4.3 製品リリースにおける検証を委譲された担当者の適格性認定/再認定 ............................ 3 4.4 製品リリースにおける検証を委譲された担当者による製品のレビュー ............................ 4 4.5 記録の保持 ........................................................................................................................ 4 附属書 A 製品リリースにおける検証の委譲チェックリスト(例) .................................................... 6 (2) 著作権法により無断での複製,転載等は禁止されております。 1 SJAC 9117 航空宇宙工業規格 製品リリースにおける検証の委譲 1 適用範囲 1.1 一般 この規格は,サプライチェーンの全てのレベルで使用するための,製品/サービスの共通の要求 事項を確立するために,DPRV に関する要求事項を規定する。組織が,契約における展開により製 品リリースにおける検証を供給者に委譲すること(9100 及び 9110 規格参照)を選択し,供給者が 組織に代わって製品の合否判定を行う場合に,この規格は適用されなければならない。 委譲する組織は,DPRV プロセスを確立するためのベースラインとしてこの規格を使用しなけれ ばならない。ただし,組織固有のニーズを満たすために,追加の契約要求事項を含めてもよい。 1.2 適用 この規格は,整備,補用品,材料及びサービスを提供する組織を含む,航空,宇宙及び防衛分野 の製品を生産及び/又は提供する組織が使用することを意図している。 この規格で規定する要求事項は,契約及び適用される法令・規制の要求事項を補足するものであ り,代替するものではないことに留意する。この規格の要求事項と適用される契約,法令又は規制 要求事項との間に矛盾がある場合,後者を優先しなければならない。 2 適用文書 次に掲げる規格は,この規格の適用/使用を支援する。これらの引用規格は,その最新版(追補 を含む。)を適用する。この規格と次の引用規格との間で要求事項に矛盾がある場合,この規格の 要求事項を優先しなければならない。 JIS Q 9100 品質マネジメントシステム−航空,宇宙及び防衛分野の組織に対する要求事項 SJAC 9102 航空宇宙 初回製品検査要求事項 SJAC 9107 航空宇宙組織におけるダイレクトデリバリ権限に関する手引き SJAC 9110 品質マネジメントシステム−航空分野の整備組織に対する要求事項 SJAC 9114 航空宇宙組織におけるダイレクトシップに関する手引き 注記 上記の IAQG 規格の同一の版(例えば,AS,EN,JIS Q 又は SJAC,NBR)が各 IAQG セ クターにおいて標準化団体から発行されている。 JIS Q 9000 品質マネジメントシステム−基本及び用語 3 用語及び定義 この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。 3.1 製品リリースにおける検証の委譲[Delegated Product Release Verification(DPRV)] 供給者が,委譲する組織の代わりの役割を果たす権限を委譲され,製品/サービスを検証しリリ 著作権法により無断での複製,転載等は禁止されております。 2 SJAC 9117 ースするプロセス 3.2 最終検査(Final Inspection) 完成品が顧客の要求事項全てに適合していることの妥当性を確認するための,製品特性及び文書 類の検証 3.3 組織 責任,権限及び相互関係が取り決められている人々や施設の集まり(JIS Q 9000 参照) 3.4 供給者 製品又はサービスを提供する組織又は人(JIS Q 9000 参照) 4 4.1 要求事項 委譲する組織に対するシステム要求事項 4.1.1 委譲する組織は,委譲の選定,適格性認定,維持管理,解除,一時停止及び制限に対する組 織の責任及び権限を含む,委譲に関する要求事項を規定する文書化したプロセスをもたなければな らない。 4.1.2 DPRV の供給者を選定する基準には,次の事項を含まなければならない。 a) 供給者は,委譲する組織の供給者登録により承認されなければならない。 b) 委譲する組織は,自身の DPRV プログラムへの供給者の参加について文書化した承認証を提供 しなければならない。 c) 委譲する組織は,DPRV 対象の供給者の選定中に,供給者の品質パフォーマンスをレビューし なければならない。供給者のパフォーマンス基準は,委譲する組織が定め,文書化しなければ ならない。レビューするデータには,製品/プロセスの適合及び是正処置要求に対する対応の 評価を含まなければならない。 d) 委譲する組織は,供給者が製品品質に関係する委譲する組織の要求事項及び期待を十分認識し ていることを検証しなければならない。 4.1.3 委譲する組織は,委譲の範囲及び制限事項を定め,文書化しなければならない。委譲の範囲 及び制限事項を記載した文書類は,供給者に提供され認知されなければならない。 4.1.4 委譲する組織は,供給者に対する変更通知の要求事項を定めなければならない。これらの要 求事項には,通知を必要とする変更の種類及びこれらの変更を伝達するプロセスを含まなければな らない。 4.1.5 委譲する組織における DPRV の維持管理プロセスには,少なくとも次の事項を含まなければ ならない。 a) 供給者の品質パフォーマンスの定期的なレビュー b) 製品の定期的な検査及び/又は妥当性確認 c) 供給者の DPRV プロセスの定期的なレビュー d) 供給者の低いパフォーマンスに対する処置 著作権法により無断での複製,転載等は禁止されております。 3 SJAC 9117 e) 4.2 供給者及び/又は DPRV 担当者に対する委譲を解除,一時停止及び制限する基準 供給者の責任 4.2.1 供給者は,自身の QMS 承認を維持しなければならない。 4.2.2 供給者の QMS には,プロセス管理及びプロセスの有効性の監視の確立を含む,DPRV に関 する要求事項を詳述した文書化したプロセスをもたなければならない。 4.2.3 供給者は,関連する承認範囲を含む,認可を受けた DPRV 担当者の一覧を保持しなければな らない。 4.2.4 供給者は,認可を受けた DPRV 担当者が職務を実施できるのに十分な必要条件を満たしてい ることを保証する責任がある。必要条件には次を含むがこれらに限定されない。 a) 製品に関連する文書類の利用 b) DPRV 活動を実施できるために必要な設備及び装置の利用 c) 関連する製品検証を適切に実施するための十分な時間の割当て d) リリースされる製品に関連する未決の問題が全て対処されるまで,製品のリリースを停止する 権限 e) 製品に関する十分な知識を含む,文書化され実証できる習熟及び訓練 4.2.5 供給者は,委譲する組織に DPRV プロセスに影響を及ぼす変更通知を提出しなければならな 。 い(4.1.4 参照) 4.2.6 供給者は,下請(sub-tier)の供給者に最終製品の検証とリリースをさせる場合には,委譲す る組織のプロセス要求事項に従って,委譲する組織から承認文書を取得しなければならない。 4.2.7 供給者は,DPRV 担当者のパフォーマンスを監視するとともに,委譲する組織への通知を含 む,DPRV 担当者の適格性認定を取消す/一時停止する基準を定めなければならない。 4.3 製品リリースにおける検証を委譲された担当者の適格性認定/再認定 4.3.1 DPRV 担当者は供給者によって適格性認定が行われなければならない。 4.3.2 DPRV 担当者の選定は,その経歴,経験及び製品知識に基づかなければならない。特定の訓 練及び/又は試験が,供給者によって確立されなければならない。供給者は,訓練及び適格性認定 が,リリースされる製品に適切であることを確実にしなければならない。 4.3.3 DPRV 担当者は,委譲する組織によって免除されない限り, 一般に認められた基準に従って, 定期的な視覚の評価を受けなければならない。 著作権法により無断での複製,転載等は禁止されております。 4 SJAC 9117 4.3.4 DPRV 担当者は,供給者による定期的な適格性の再認定及び訓練を受けなければならない。 4.3.5 供給者は,委譲する組織によって契約に基づいて課せられる DPRV 担当者に対する追加の要 求事項を満たさなければならない(例えば,委譲する組織による DPRV 担当者の承認)。 4.4 製品リリースにおける検証を委譲された担当者による製品のレビュー 4.4.1 DPRV は,製品のリリース毎に実施しなければならない。DPRV は,最終検査後の可能な限 り出荷直前に実施しなければならず,委譲する組織により免除されない限り,最終検査を実施した 人以外の者による独立したプロセスとして実施されなければならない。 4.4.2 DPRV は次の事項で構成されなければならないが,これらに限定しない。 a) 契約/注文書のレビュー b) 供給者の文書類のレビュー 全ての必要な製品実現の作業及び検査が完了していることの検証 該当する場合には,必ず,委譲する組織の契約要求事項に従って,製品の不適合が適切に 文書化され処理されていることの検証 初回製品検査(9102 規格参照)に関する委譲する組織の要求事項を満足していることの検 証 c) 製品のマーキング/識別及び外観検査の検証を含む,製品の物理的な検証。委譲する組織が契 約で要求する場合,DPRV では,特別要求事項,クリティカルアイテム及びキー特性の妥当性 確認を行わなければならない。 d) 出荷/リリース文書類 4.4.3 DPRV 担当者は,検証作業の完了の妥当性確認を行い,記録しなければならない。 注記 DPRV 活動を記録するテンプレートの例は,附属書 A(製品リリースにおける検証の 委譲チェックリスト)に記載されている。このテンプレートは,委譲する組織及び/ 又は供給者の DPRV プロセスの基準を満足するように変更できる。 4.4.4 委譲する組織により契約で要求される場合,特定のスタンプ,署名,識別番号等を製品のリ リースのために使用しなければならない。 4.4.5 製品の検証のための抜き取り計画は,委譲する組織からの承認により使用してもよい。 4.4.6 DPRV プロセスで検出された製品及び/又は文書類の不適合は,供給者の不適合及び是正処 置の手順,並びに委譲する組織の契約要求事項に従って処理しなければならない。 4.5 記録の保持 4.5.1 委譲する組織は,規定した手順に従って,次の記録を保持しなければならない。 著作権法により無断での複製,転載等は禁止されております。 5 SJAC 9117 a) 委譲先の供給者の一覧 b) 委譲の承認範囲 c) 該当する場合には,必ず,委譲の制限事項 d) 供給者による委譲確認 e) 委譲する組織が DPRV 担当者を認定する場合,認定された担当者の一覧 f) DPRV プロセスの定期的なレビューの記録(4.1.5 参照) g) この一覧に示された事項の変更の改訂記録 注記 追加の記録は,委譲する組織の判断で維持し得る。 4.5.2 委譲認可を与えられた供給者は,委譲する組織の契約要求事項に従って,DPRV 活動からの 次の記録を保持しなければならない。 a) DPRV 活動が実施された記録[例えば,製品リリースにおける検証の委譲チェックリスト(附 ] 属書 A 参照) 注記 DPRV チェックリストの使用/適用に関する更なるガイダンス資料は,サプライチェーン マネジメントハンドブック(SCMH)にある。 b) DPRV 担当者の初回及び更新時の適格性認定の記録 c) 承認された DPRV 担当者の一覧 d) DPRV 担当者の視覚の評価の記録 e) DPRV プロセス中に特定された製品及び/又は文書類の不適合の記録 f) 委譲する組織からの下請(sub-tier)供給者に対する委譲の承認(4.2.6 参照) g) 指定された場合,委譲する組織が規定するその他の文書 注記 追加の記録は,供給者の判断で維持し得る。 著作権法により無断での複製,転載等は禁止されております。 附属書 A 製品リリースにおける検証の委譲チェックリスト(例) リリースの情報 供給者名 顧客名 供給者コード 注文書 部品番号,改訂/発行 契約/注文書のレビュー 作業/ジョブ番号 ロット番号/シリアル番号 YES NO 注文書の要求事項全てを考慮しているか。 リリースされる製品の形態は,顧客の注文書の要求事項に合致しているか。 本製品は,委譲の範囲に含まれているか。あなたは,本製品の DPRV を実施することを承認/認可されているか。 供給者の文書のレビュー YES NO N/A YES NO N/A 全ての必要な製品実現及び検査作業は完了しているか。 承認済みで有効な初回製品検査(FAI)報告書は保管されているか。 購入製品は,供給者承認工程に従ってリリースされているか。 不適合は,顧客の契約要求事項に従って,適切に記録,処理されているか。 製品の物理的な検証 ラベル,タグ,部品マーキングを含む全ての識別の要求事項は,顧客要求事項を満足しているか。 製品は,外観検査の要求事項を満足しているか。 主要な要求事項/製品特性の妥当性確認。顧客により要求された場合には,製品の物理的な検証を次の欄に記録する。(*) 項目識別 要求事項/製品特性 実測値 適合している 抜取計画が適用されている場合,ここをチェックする。 出荷/リリース文書 YES 出荷/リリース文書は全て記入済みで,正しいことを検証する。該当する場合には,必ず,次の項目を含まなければならない。 - 適合証明書(COC)/耐空証明書(例えば,EASA Form 1, FAA 8130-3) - 梱包ラベル - 材料証明書 - 試験結果 - 製造データ - 不適合報告書(NCR) 注記/コメント Yes の場合,NCR 番号を記載する。 (*) 必要に応じて,継続用紙を追加する。 名前(活字体) 署名 NCR 番号: スタンプ/番号 日付 NO YES N/A NO
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