D.C.通信 海外だより 連載 58 中村岳志(JA全中農政部WTO・EPA対策課<在ワシントン>) March, 2016 アメリカ農業団体のポリシーブック (政策集)の取り組み アメリカにおける主要な品目 により採択されている。 横断的な農業団体であるファー アメリカでも、わが国と同様、 ムビューロー連盟およびファー 地域によって作目や農業を取り マーズ・ユニオンは、分野別の 巻く環境は異なることから、州 政策提言を整理した「ポリシー 間で意見の対立が生じる部分も ブック」を発行して対外的に自 あるが、それぞれの意見を掲載 らの立場を示すとともに、議 した上で、代議員による討議・ 会・政府等への働きかけを行い、 投票により反映する意見を決定 政策実現につなげている。 する形がとられている。 上下両院議員への力強い働きか わが国で全国の意見をまとめ けを行っている。なお、ファー ■内容と作成方法 る際には、各都道府県の実情を ムビューロー連盟では、 「対外的 ポリシーブックに盛り込まれ 踏まえ、それぞれが納得できる には会員全員が同じことを言う る政策の対象範囲は、農業や貿 よう事前に内容が調整されがち ことが重要」との考えから、全 易政策、税制などのほか、経 であるが、アメリカでは意見を ての会員の要請はポリシーブッ 済・財政政策、インフラ、エネ ぶつけ合う討論を経て決めてい クの内容に絞り、個人的な意見 ルギー、水資源・環境保護など く形が一般的であるようだ。 を述べることを制限し、より効 非常に多岐にわたっており、あ 両団体の担当者は、 「こうした 率的・効果的な政策実現を図っ くまで各州の農業者が自らの考 過程を通じて農業者自らが主体 ている。一方、ファーマーズ・ えに基づき書き上げた政策集で 的に作成に参画してもらうこと ユニオンでは州独自の主張も併 あることに重きが置かれている。 が大切」と強調する。自分の提 せ伝え、理解を求めている。 そのため、内容について事務局 案が州・全国の提案になれば、 いずれの団体においても、政 の手は加えられていない。 ポリシーブックを活用した運動 策が実現した暁には、その政策 各団体では、その時々の課題 にも力が入るという。 の実現に貢献した議員に、年次 に応じ、郡・州レベルでの議論 米国ファームビューロー連盟総会にお ける議論の様子。代議員は非常に積極 的に議論に参加しており、多くの項目 について活発な討論が交わされ、修正 が行われていた 総会での表彰や、政治的な支援 の結果を基に、ボトムアップ方 ■活用方法 等を行うなど、議員との関係を 式で全国レベルのポリシーブッ 両団体とも、こうして作成し 深める取り組みを行っている。 クの原案が毎年作成され、全国 たポリシーブックを基に、全国 段階の年次総会で各州の代議員 組織および州・地方組織による 2016/03 月刊 JA 31
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