微動観測による和歌山平野の地下構造調査（その１） －SPAC法とH/Vスペクトルによる地下構造モデルの検討－ #上林宏敏・川辺秀憲・池田晃一・釜江克宏(京大原子炉)・大堀道広(福井大) ・宮腰研(地盤研) Estimation of Underground Velocity Structures in the Wakayama Plain using Microtremors (Part 1) Comparison of Basin-Bedrock Interface Depth between SPAC Method and HVSR 400mと推定されていることから、JMAにおける分散曲線による同深度が実際より 深く評価された可能性がある。和歌山城周辺の基盤岩上面の空間変化が大きい ことがこの推定誤差の原因と考えられる 3) 。 単点移動観測による1次ピーク周波数は平野の南側や東側ほど高周波数側に 見られた。この結果は分散曲線による推定基盤岩上面深度分布や重力探査によ るブーゲー異常値の分布 2) ともある程度整合している。しかしながら、アレイ観測と 単点移動観測の時期の違いに起因すると思われるH/Vスペクトルの1次ピーク周 波数及びピーク値の変化が平野北西部に見られた。この原因を引き続き検討した 上で同平野の強震動予測のための3次元速度構造モデルを作成する予定である。 Array: Kajitori 2.5 SMA 和歌山 北測線 和歌山城 JMA IMF 観測値(L) 観測値(S) 理論値 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 Frequency(Hz) 図2 KDRの分散曲線 図1 和歌山平野の地形1) と微動観測点 S波速度構造 GA探索範囲 S-Wave Velocity(km/s) 0.0 0.0 Depth(km) 和歌山平野は北部の和泉山脈と南部の紀伊山地に挟まれた紀の川河口デル タ を 中 心 と し た 低 平 地 で あ る 。 本 調 査 で は 3 成 分 ア レ イ （ KDR,JMA,IMF,ARM, SMAの5カ所；図1の点線△印）および3成分単点（105点；図1の ● 印）による微動 観測を実施し、同平野のS波速度構造の推定を行った。さらに、これら2種類の微 動観測から推定した基盤岩上面（三波川変成岩と未固結な堆積層の境界）深度と 和歌山北測線（図1）におけるP波反射断面 2) による同深度との比較検討を行った。 アレイ観測（LE-3D/5s、LS-8800;A/D24bit,60分間計測）は2013年11月12～14 日、単点移動観測（GPL-6A3P;A/D24bit,15分間以上計測）は2014年2月25～26 日に行った。アレイ観測記録をSPAC法により解析し、5カ所とも連続性の良い位相 速度の分散曲線を得た（図2に一例を示す）。観測した分散曲線がRayleigh波基 本モードと仮定し、GAによって観測値を満足するS波速度構造を求めた（図3に3 カ 所 の 例 を 示 す ） 。 基 盤 岩 上 面 深 度 (km) は 、 JMA が 0.52,KDR が 0.64,IMF が 0.51,ARMが0.39,SMAが0.32となった（図3の太い点線）。 アレイ観測記録を用いて水平／上下動(H/V)スペクトル（図4に一例を示す）を 求めた。H/V スペクトルは1Hz 以下に基盤岩上面以浅の堆積層によると考えられ る明瞭なピーク（1次）が見られ、他の4カ所も同様であった。さらに、1Hz以上にお いて最大の値を有する沖積層によると考えられるピークも見られ、他の2カ所 (ARM,SMA)も同様であった。H/Vスペクトルの1次ピーク周波数と分散曲線から それぞれ推定した基盤岩上面深度は3カ所（KDR,SMA,ARM)ではほぼ整合して いるが、JMAとIMFでは分散曲線による結果の方が深く求まっている（図3）。JMA アレイ中心の東側約700mに位置する和歌山城天守閣付近では基盤岩が露頭し て い る こ と 、 反 射 法 で は JMA ア レ イ 北 西 側 の 紀 の 川 右 岸 で 基 盤 岩 上 面 深 度 が ARM KDR Phase Velocity(km /s) H.Uebayashi, H.Kawabe, K.Ikeda, K.Kamae(RRI Kyoto Univ.), M.Ohori(Univ. Fukui), and K.Miyakoshi(GRI) 1.0 2.0 3.00.0 1.0 2.0 3.00.0 1.0 2.0 Ratio 10 3.0 1 1.0 0.1 0.1 2.0 JMA KDR SMA 3.0 図3 推定S波速度構造（ はH/Vスペクトルによる基盤岩上面深度） 1 (Hz) 10 図4 KDRアレイ観測点 (7点)のH/Vスペクトル 謝辞）本成果は文部科学省委託研究業務「中央構造線断層帯（金剛山地東縁－和泉山脈南 縁）における重点的な調査観測」によるものである。参考文献）1) KG-NET関西圏地盤研究 会 ,新関西地盤 2011－和 歌山平野－ ,2011. 2)文科省 ・京大防災研 , 中央構 造線断層 帯におけ る 重点的な調査観測, 平成25年度成果報告書, 3) 上林ほか，傾斜基盤構造推定における微動H/V スペクトルの頑健性とそれを用いた大阪平野南部域の盆地構造モデルの改良，建築学会構造系論 文集，1453- 1460，2009
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