日本法制史 - 大阪市立大学法学部

紹 介 項 目
① 講義の目的と範囲
⑤ 関連科目
② 講義方法
(事前履修・同時履修・展開履修科目の提示)
③ 講義計画
⑥ 評価の方法
④ 教 材
⑦ その他の要望事項
日本法制史
(江戸幕府との比較、被差別身分と警察・
第 1 部( 2 回生以上)後期 4 単位
安竹 貴彦
行刑)
第16~18回 明治初年の裁判組織(行政と司法の分離、
明治初年の法曹と近世との連続性・断続性
① 日本法制史という「史」がつく科目が、法学部講義の
一つとして提供されている理由の一つは、「一見冷徹に
など、明治期における法曹養成制度~代言
人・検事の登場、西洋法教育など)
見える法や裁判は実は最も人間くさい-時に醜く、血な
第19~23回 明治初年の断獄(刑事訴訟)と刑罰(法の
まぐさい-ものである。そして、それらは長きにわたる
統一、刑罰体系の変化~特別予防主義の導
試行錯誤の繰り返しの中で構築されてきたものであり、
入、律令的罪刑法定主義と西洋的罪刑法定
その試みは今後も続く」という事を確認することにある
主義、断獄手続の近世との連続性、拷問廃
と思われます。その上で、現行の法・制度を再吟味する
止など)
ことにより、将来のより望ましい方向について考察する
第24~28回 江戸幕府の出入筋(吟味筋との差異、訴権
視点をもっていただきたいと思います。昨今の法・制度
による保護の違い、地域性が手続に及ぼす
の新設や改正の動向についても敏感であるとともに、各
影響、内済の制度化、扱人・実務法曹・公
自で積極的に情報収集し、それらを分析・評価する努力
事宿の機能など)
をしてください。
② 講義は下記参考書を利用しながら、随時関連するレジ
ュメ・資料を配布して進めていきます。
第29回 明治初年の民事訴訟(聴訟手続の概要、民
事訴訟の有料化、勧解制度、代言人・代書
人の登場とその役割など)
江戸幕府(主に18世紀半ば以降)や明治前半期(但し
④ 参考書として『日本法制史』(浅古 弘・伊藤孝夫・
明治15年くらいまで)の裁判組織や訴訟制度あるいは刑
植田信廣・神保文夫 編、青林書院、2010)を使用しま
罰体系などを主な素材としますが、必要に応じて中世や
す。毎回、該当ページを講義中あるいはレジュメ等に明
近代、あるいは近年の私の研究領域でもある大坂や紀州
示した上で、その部分に目を通しているという前提で講
藩・高野山などについても参考資料を掲げつつ説明を加
義を進めます。購入を強制するものではありませんが、
えます。特に、下記各回テーマのうち明治初年に関する
時に必要部分を講義中に読む事もあります。また、参考
ものについては、「法学雑誌」に連載中の大阪府の刑事
史料も題材に使いつつ、解説したいと思います。
③ 江戸~明治初年を中心に、概ね以下のようなテーマに
そって講義を行う予定です。
第 1 ~ 4 回 近世法の特徴 ── 明治初年との比較を試み
書として以下のようなものを一読されるよう希望します。
◦『法社会史』(水林彪ほか編 山川出版社「新体系日
本史 2 」、2001)
◦平松義郎「近世法」(『岩波講座 日本歴史11 近世
3 』[岩波書店、1976年]所収、後に『江戸の罪と
つつ ── (導入として、法源、外国法の影
罰』[平凡社選書118、平凡社、1988年]に再録)
響、私的刑罰権の容認と制限の過程、幕府
◦國學院大学日本文化研究所編『法文化のなかの創造性
法と藩法~法の統一、法的安定性と具体的
妥当性など)
第 5 ~ 7 回 江戸幕府の裁判組織(立法・行政・司法組
織の未分離、裁判における実務法曹の役割
など)
第 8 ~13回 江戸幕府の吟味筋と刑罰(犯罪事実の認定
と刑罰決定の分離、拷問、恩赦、刑罰に見
られる特別予防と一般予防、実務法曹・補
助者の役割、法と現実との乖離を埋める手
段など)
第14~15回 大坂・紀州藩・高野山の吟味筋と刑罰体系
── 江戸時代に探る ── 』(創文社、2005)
◦谷口眞子『武士道考 ── 喧嘩・敵討・無礼討ち ── 』
(角川選書35、2007)
◦青木人志『大岡裁きの法意識 ── 西洋法と日本人』
(光文社新書、2005)
◦清水克行『日本神判史 ── 盟神探湯・湯起請・鉄火起
請』(中公新書、2010)
◦高塩博『近世刑罰制度論考 ── 社会復帰をめざす自由
刑』(國學院法学会叢書、2013)
また『政談』『世事見聞録』『近世風俗誌』『旧事諮問
録』『明六雑誌』(いずれも岩波文庫)などを配布資料で
しばしば引用します。引用部分以外にも目を通してご覧
になるとよいと思います。このほかにも講義中に、比較
的読みやすく入手が容易であると思われる文庫・新書な
どを、歴史や法制史に限定せず、随時紹介したいと思い
ます。また、講義で関心を持たれた方は、安竹らが「法
学雑誌」に連載中の史料の読解にもチャレンジしてみて
ください。
⑤ 2015年度前期に東洋法制史が開講されます。幕府法や
藩法、そして明治初年の法・制度に対して、中国法が及
ぼした影響には看過できないものがあります。併せて履
修すると、なお理解が深まると思います。
⑥ 期末試験で行います。「歴史的事象」を間違いなく書
き連ねる事が、必ずしも高得点につながるものではない
ことをよくご理解ください。
⑦ 時々講義中に皆さんに対して質問を発します。歴史的
知識の有無を問うような内容の質問ではありませんので、
積極的に回答してください。また、講義への質問や要
望・感想、あるいは私の設問に対する回答などを書いて
いただくために、小紙片を時々配布します。私はこれを
見て講義の冒頭に質問に答えたり、講義を展開するヒン
トにします。積極的に書いて講義後に提出してください。