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イオ ン株 式会社 と株 式会社 セ ブ ン& アイ ・ホ ール ディン グス の
財 務状 況 に関す る比 較 分析
□ 推 薦
水 田 健 輔
高 橋彩 さ んが 所 属し た私 の専 門 演習 ( ゼミ )は 、企 業 の財 務 分析 をテ ーマ と して い
る。 財務 会 計で 学 ぶ定 番の 分析 指 標は も とよ り、 コー ポ レー ト ・フ ァイ ナン ス との 境
界領 域に あ る、機関 投 資家 の重 視 する 企 業価 値や 株主 貢 献度 に 関す る分 析も カ バー し 、
ノウ ハウ を 身に つ ける こと を一 つ の目 的 とし てい る。 た だし 、 最終 目標 は分 析 ツー ル
に対 する 知 識を 身 につ ける こと 自 体で は なく 、目 の前 に 見え て いる 現象 、数 値 に表 れ
てい る特 徴 や動 き の背 景に ある 「 原因 」 や「 理由 」に つ いて 、 参考 とな るデ ー タや 資
料を 自ら 必 死に 探 し、 粘り 強く 考 え抜 く 力を 養う こと に ある 。
例え ば、 営 業利 益 率が 同業 他社 に 比較 し て高 かっ た、 あ るい は ここ 5年 間に 上 昇し
てい ると い うこ と が見 つか った 場 合に 、 それ を「 良か っ た」 と 評す るこ とは 、 誰に で
もす ぐに で きる こ とで ある 。しか し 、より 重 要な のは 、「 な ぜそ う なっ たの か 」とい う
原因 や理 由 を知 る こと であ り、 そ れを 知 るた めに は財 務 デー タ 以外 の情 報に 丹 念に 当
たり 、自 分 で考 え なく ては なら な い。 高 橋さ んは 、私 の ゼミ の 中で その 努力 を 惜し ま
ず、 常に 疑 問点 に 対し て回 答を 見 つけ よ う奮 闘し てい た 稀有 な 学生 であ り、 そ の成 果
が本 論文 の よう な 労作 とし て結 実 した と いえ る。
今回 対象 と した 両 社に つい ては 、 イオ ン が規 模拡 大と 価 格競 争 を志 向し た薄 利 多売
型、セブ ン &ア イ HD が商 品力 を もと に した 利益 率重 視 型で あ るこ とは 、ビ ジ ネス 雑誌
等で もよ く 取り 上 げら れて おり 、 大抵 の 学生 はそ れを 読 んで 、 分か った よう な 気に な
って しま う 。し か し、 今回 高橋 さ んは 、 世間 で言 われ て いる 上 記の 定説 が本 当 なの か
どう かを 、 自ら ゼ ロベ ース で分 析 ・検 証 し、 結論 づけ て いる 。
特に 重要 な のは 、 一般 の人 は両 社 の名 前 を聞 いて 、イ オ ンや セ ブン イレ ブン の 店舗
を勝 手に 思 い浮 か べて 納得 して し まう が 、実 は両 社は 多 方面 の 事業 と膨 大な 数 の企 業
を傘 下に 収 める グ ルー プと して 活 動し て いる とい うこ と であ る 。よ って 、同 じ グル ー
プの 中に も 異な る 方針 や戦 略、 経 営環 境 のも とに ある 事 業・ 企 業が 含ま れ、 そ の複 合
体と して 両 社が 存 在す る。 高橋 さ んは 、 そう いっ た実 態 の細 部 を解 剖す るた め 、有 価
証券 報告 書 の事 業 別セ グメ ント 情 報を 利 用し た分 析に 力 を注 い でい る。 セグ メ ント の
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区分 は各 社 の任 意 とな って いる た め、 両 社共 通の セグ メ ント 間 で比 較で きな い 難点 は
ある もの の 、グ ル ープ 全体 を概 観 した の では 分か らな か った 詳 細な 事業 別の 側 面が 明
らか にな っ てお り 、こ の論 文の 貢 献度 大 なる とこ ろで あ る。
そし て、 数 値分 析 結果 につ いて 、 その 説 明に 有益 な定 性 的な 情 報を 熱心 に収 集 し、
自ら 咀嚼 し て、 解 釈と 説明 を行 っ てい る 点も 高く 評価 し たい 。 私の ゼミ の最 終 目標 を
体現 して 頂 いた 内 容と なっ てお り 、指 導 教員 冥利 に尽 き ると こ ろで ある 。
ただ し、 時 間的 な 制約 等が あり 、 また 有 価証 券報 告書 を 基本 と した 内容 のた め 、技
術的 な側 面 で限 界 があ った こと は 否め な い。 例え ば、 セ グメ ン ト別 分析 にお け る株 主
資本 の試 算 (総 資 産- 有利 子負 債 )や 営 業利 益を 最終 利 益と 見 なし た分 析は 、 指導 教
員で ある 私 の指 示 のも と、 ある 種 の妥 協 をせ ざる を得 な かっ た 部分 であ る。 後 者に つ
いて は 、「{ 営業 利 益- (有 利子 負 債×平 均金 利)}×(1-実効 税率 )」と いっ た 方法 で
当期 純利 益 を試 算 する こと も可 能 であ っ たか もし れな い が、 で きる だけ 恣意 的 な計 算
を入 れな い 方針 で 進め るこ とと し た。 こ うし た点 につ い ての 責 任は 、す べて 指 導教 員
たる 私に 存 する 。
高橋 さん は 、卒 業 後は 地方 銀行 に 就職 す るこ とに なっ て いる 。 ゼミ で磨 いた 力 を何
らか の形 で 役に 立 てて 、今 後の 職 業人 生 で活 躍し て頂 け れば 、 指導 教員 とし て はこ の
上な い喜 び であ る 。
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