東北大学病院臨床研究推進センター Clinical Research, Innovation and Education Center, Tohoku University Hospital 文部科学省橋渡し研究加速ネットワークプログラム ハイドロキシアパタイト厚膜形成による 新規歯科治療システムの開発と臨床応用 プロジェクト責任者:佐々木啓一 研究概要 歯の主成分であるハイドロキシアパタイト(HAP)粉体を高速噴射することで、歯質上 に歯質表面にHAP からなる強固な構造体(人工エナメル質)を形成するパウダージェット デポジション(PJD)法を開発した。平成24年度に前臨床試験、平成25年度に探索的臨床 研究を実施され、本法の安全性と評価方法の検討が行われた。 平成26年度は橋渡し研究加速ネットワークプログラムシーズCによる支援を受け、う蝕、 知覚過敏、変色歯を対象としたハイドロキシアパタイト厚膜形成による新規歯科治療シス テムの有効性と安全性を評価する探索的治験を実施している。現在、必要症例数を確保し、 順調に治験を遂行中であり、今年度中に総括報告書を作成し、安全性やHAP膜の形態的・ 機能的評価を行う予定である。 背景と目的 東北大学歯学研究科 口腔システム補綴学分野 佐々木啓一 パウダージェットデポジション(PJD)の原理 歯科用パウダージェットデポジション装置 歯の主成分であるハイドロキシアパタイト(HAP)粉体を高速噴射 → 歯質表面にHAP からなる強固な構造体(人工エナメル質)を形成 【HAP膜】 • 強固に歯質と接着、エナメル質と同等の硬さ、耐蝕性 • 市販の知覚過敏抑制材よりも象牙細管透過性を低下 →歯髄症状の消失を期待 • 歯の主成分と同じ素材で、生体為害性の無いう蝕、知覚過敏、変色歯治療 • 歯質との適合性に優ることにより再治療の抑制を期待 PJDハンドピース部 粉体をハイドロキシアパタイト(HAP),基板を歯質にして歯科治療へ応用 【う蝕】 修復物脱離や二次う蝕の予防 【知覚過敏】誘発痛の消失とその効果の長期持続 【変色歯】 歯質削除や誘発痛のない色調改善 【探索的治験の目的】 歯科用パウダージェットデポジション装置について、検証的治験をより効果的に実施するため、以下の項目 を検討すること ① 被験機器の臨床上での性能に関する情報を取得する。 ② 安全性を確認する。 ③ 被験機器の有効性を確認するため、 1.う蝕に対しては歯髄症状、修復物の状態、二次う蝕、形態評価 2.知覚過敏に対しては歯髄症状、形態評価、歯肉炎の評価 3.変色歯に対してはシェード変化、形態評価、歯肉炎の評価、被験者満足度 を評価項目として、探索的に検討する。 治験実施計画書の要約 対象・症例数 選択基準 除外基準 評価時期 抜去歯上に 形成されたHAP膜 (HAP粒子:白色) 実施状況と今後の予定 1.う蝕、2.知覚過敏、3.変色歯それぞれ10人 同意取得時に20才以上の男女 文書で本人より治験参加の同意が得られている患者 治験期間中、通院が可能である患者 治療対象が複数歯に渡る場合に、治験治療を行う部位と既存治療を行う部位が混在する可能性があること に同意が得られる患者 5. 治験治療を行う歯は下記の選択基準6で定めた基準で選択し、1疾患あたり1歯とすることに同意が得ら れる患者 6. 上記に加え、各疾患および対象歯の選択基準を下記に定める 【う 蝕】 視診、レントゲン検査から象牙質内う蝕と診断でき、レジン充填が可能なこと 【知覚過敏】 知覚過敏による日常生活時の誘発痛があり、特にユニット用シリンジによる エアー痛を有すること 【変 色 歯】 白色化を希望する変色歯があり、治療後の色調がサンプルの色調で同意が 得られること 2014年 1. 2. 3. 4. 1. 2. 3. 4. 5. 6. HAP膜:HAP粒子の微細化により均一,ギャップレスの界面 口腔粘膜疾患を合併している患者 局所麻酔薬に対して副作用の既往がある患者、麻酔に対するアレルギーを有する患者 妊娠もしくは妊娠している可能性がある患者、治験期間中に妊娠を希望する患者 登録時に別の治験に参加している患者 対象疾患以外が原因で疼痛が生じており、鎮痛作用を有する薬剤を使用している患者 その他、治験責任医師または治験分担医師が不適当と判断した患者 治療後、1週後、4週後 口腔内へのHAP成膜 4月 PMDA 関係 IRB 東北大学 実施体制 構築 5月 事前面談 6月 7月 8月 2015年 9月 10月 11月 ピア レビュー 1月 2月 3月 治験 終了届 提出予定 治験届 提出 治験相談 12月 IRB CRO決定 治験機器 搬入 総括報告 書作成 治験開始 う蝕、知覚過敏、変色歯を対象としたハイドロキシアパタイト厚膜形成による新規歯科治 療システムの有効性と安全性を評価する探索的治験を実施している。現在、必要症例数を確 保し、順調に治験を遂行中である。探索的治験終了後、その結果を元に平成28年度の検証 的治験実施、平成30年度の薬事承認を目標としている。
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