京都府議会が会場建設を検討 - リード エグジビション ジャパン

日展協 石積会長が参考人として出席(No.129, 15/09/10)
京都府議会が会場建設で石積を招へい
石積が参考人として出席
京都府議会が 会場建設を検討
山田知事も 強い関心
2015 年 8 月 25 日(火)
、京都府議会の農商工労働常任委員会(委員長:二之湯真士 府議会議員)は、
「MICEの開催・誘致の推進、その課題について」というテーマのもと、京都府における大規模展示
会場建設の検討を行った。
会議の開催趣意書によれば、同委員会は「京都は日本を代表する国際会議都市として存在感が高いが、
一方で、国際的な見本市を開催することができる大規模な展示会場が無く、
『MICE都市 京都』とし
て物足りない」という問題意識を持っていた。
そのような中、日本最大の業界団体「日本展示会協会」の会長であり、日本最大の主催会社の社長で
ある石積を、
「参考人」として招へい。約2時間半にわたって、講演と質疑応答を実施した。
出席者は農商工労働委員会に所属する 12 名の府議会議員に加え、京都府商工労働観光部(岡本圭二 部
長)の幹部約 20 名。会議の模様はインターネットで生中継され、この問題への関心の高さと期待の大
きさを物語っていた。
会議の模様は次ページから紹介するが、ここではまず、講演の前に行われた、石積と山田啓二 京都
府知事との会談の様子を報告させていただきたい。
石積は山田知事に対し、
「この後、京都府議会で講演を行うが、京都を今まで以上に発展させるため
に、大規模な展示会を数多く開催することが必要だと信じます」「そのためには、展示会場の建設を急
がねばなりません。今ま
で京都に大規模会場が無
かったことは不思議なく
らいです」と述べ、世界
中の都市が展示会開催に
力を入れている現状を説
明した。
山田知事は石積の話に
強い関心を示し、
「話を聞
いて、大規模展示会場の
必要性を強く感じた。建
設場所や、建設スキーム
など、具体的な検討を進
めたい。今後も有益なア
ドバイスをお願いしたい」
と語り、石積と握手を交
わした。
府議会での講演前に、山田 京都府知事(写真右)と会談し、「展示会場の建設」を提言した
日展協 石積会長
1
マイス
京都が真のMICE都市になる為に
何が必要なのか?
山田知事との会談の後、石積は京都府議会の農商工労働常任委員会に出席し、まず最初に1時間近く
の講演を行った。要旨は以下の通りである。
① 京都では年間たくさんの国際会議や学会等が行われており、「国際会議都市」としては大きな成
功を収めている。しかし、京都は真の「MICE都市」となっていない。それは、大規模展示会
が京都ではまったく開催されていないからだ。
② 「真の展示会」とは、一つの業界における何百社、何千社の競合他社が一堂に集結するものを指
す。したがって、大規模であることが最大の特徴であり、だからこそ地域や業界にもたらすメリ
ットは巨大である。
③ また、出展社数が多ければ多いほど、魅力ある展示会となり、日本中から、世界中からより多く
のバイヤーが集まるようになる。世界中の会場が年々規模を大きくしているのは、これが原因だ。
④ 展示会は一度開催されれば、毎年、同時期に同会場で開催されるため、毎年定期的に、開催地に
巨大な経済効果をもたらす。
⑤ 京都は日本を代表する観光地。日本中、世界中の参加者にとって魅力がある都市であるため、展
示会都市としても大成功することは確実。しかし、大規模な会場が無い限り、それは不可能だ。
⑥ 京都が今まで力を入れてきた国際会議や学会でも、最近では大規模な展示会を併催するニーズが
高まっている。例えば今年京都が主催した第29回 日本医学会総会でも、展示スペースが京都府
内で足りなかったために、一部の展示会を神戸でも開催したと聞く。参加者にとっては不便であ
るし、京都府民にとっては、せっかくの経済効果をみすみす京都から流出させることになり、非
常にもったいないことだ。
⑦ 最低10万㎡の展示会場を建設し、近い将来にそれを15万㎡に拡張することを提案する。
従来の発想から脱却しよう!
「真の展示会」 が、京都を大発展させる
石積の講演の後、約2時間にわたって質疑応答が繰り返された。ほぼ全出席者から、異例とも言える
ほど活発に質疑がなされ、この問題への関心の高さを改めて感じさせた。
質問の中の幾つかを以下紹介する。なお、分かりやすくするために、筆者が言葉を補った部分もある
事をご了承いただきたい。
質問1)展示会場の立地条件は?東京、幕張、横浜、福岡など、展示会場の多くは臨海部にあるが、京
都のように内陸部でも問題ないのか?
回答1)(石積)まったく問題ない。世界には内陸の都市が展示会都市として成功している例はたくさ
んある。全米最大の展示会都市ラスベガスや24万㎡の会場を有するシカゴも内陸だ。世界最
大の50万㎡の展示会場があるドイツのハノーバーはじめ、フランクフルト、ミュンヘン、ケ
ルン、フランスのパリなど、ヨーロッパの多くの展示会都市が内陸である。
2
質問2)日本の展示会場の稼働状況は?
回答2)(石積)日本の展示会場の稼働率は、世界の中でも飛び抜けて高い。空きがほとんど無い状態
の会場が多く、新しい展示会のために申し込んでも予約できないことが多い。
しかし私は、
「そのことを本当に喜んでいいのだろうか?」と申し上げたい。というのは、稼
働率が高く、ほとんど空きが無いということは、新しい展示会を立ち上げることができず、既
存の展示会も拡張できない状態であり、巨大な「機会損失」を引き起こしていることだと解釈
できるからだ。
展示会場に関する稼働率について多くの誤解があるので、念のために申しあげたい。一般的に
展示会場の稼働率はホテルの稼働率と異なり、65%が上限であるのが、世界の通念である。
というのは、展示会場はホテルと異なり、実際には貸し出すことができない日数が必然的に数
多く発生するからだ。例えば、お盆やクリスマス時期、展示会と展示会の間の細切れの日数、
会場全体の中で少しだけ空いているスペースなどがあり、それを埋めることは不可能な場合が
多い。これが、一室一室が独立しているホテルとは根本的に違う点である。
世界の展示会場の稼働率は良くて30%だ。その理由は、
①
「展示会による年間の経済効果が 1,000 億円に上る場合、会場の稼働率が 30%で年間の赤
字が 10 億円であっても、大きな問題ではない」と、世界中の都市が考えているからだ。
②
「誰でもいつでも新しい展示会を立ち上げられるようにしておくこと」が展示会場の使命
と認識しているからだ。この根底には、「展示会場は、空港、港、道路と同様、経済イン
フラである」という考え方がある。
日本は展示会場を考える際、稼働率を最優先にしがちだ。その結果、会場をできるだけ小
さく造り、展示会以外の様々なイベントで会場の予約を満たそうとする。そうなれば、宿
泊を伴うような大規模展示会が物理的に開催できなくなり、経済効果は微々たるものしか
生まれない。すなわち「本末転倒」になりがちだ。
質問3)なぜ日本の展示会場は規模が小さくなってしまったのか?歴史的背景があるのか?
回答3)(石積)様々な理由が考えられるが、
個人的見解を述べる。
①日本では「大きな会場を造って本
当に埋まるのか?」と過度に心配す
る傾向が強い。その結果、稼働率を
過剰に優先することになり、会場建
設の当事者はできるだけ小さく造ろ
うとするようになる。これは他の経
済インフラである空港や港も同じで
あり、日本が国際競争に年々遅れる
原因となっている。
私が世界中でよく聞いた言葉に、
「供給が需要を創り出す」という言
葉があるが、その発想が世界中の展
示会場を日本に比べて圧倒的に大き
くしていると思う。
議員からの質問に答える石積
3
②「コンベンション=会議」と狭く解釈する傾向があるので、
「会議ができればいい」となり、
その結果、「真の展示会」が開催できない小さい会場、すなわち 5,000 ㎡~1万㎡の会場が
日本中に建設されたと思われる。
私は同様の観点で、「MICE 施設=会議施設」と考えている人が多いのではないかと危惧し
ている。その偏った理解によって、結果的に小さい会場ができてしまい、「展示会場を造っ
た」と言いながら、実際には「真の展示会」が開催できないという状況が繰り返されてしま
うと心配している。
京都が「真の MICE 都市」になるためには、今までの発想と決別し、
「真の展示会」を開催
するという明確な決断が必要だということを、改めて強調したい。
質問4)(京都府に対する質問)京都府は、展示会場建設についてどのように感じているか?
回答4)(京都府商工労働観光部 岡本部長)参考人の話の中で、「展示会場は産業のインフラである」
という観点は今まで持っていなかった。また、単にハード(建物)を造ればよいという従来の
考えとは異なり、石積参考人の話はソフト(展示会を京都で創っていこう、という発想)の話
が中心である。
現状の展示会場(パルスプラザ、みやこめっせ)は小さいが、稼働率は50%だ。参考人の話
では、この数字は「ほとんど埋まっている」ということだが、事実、両会場とも予約がとりづ
らくなっているようだ。
これらを総合し、京都府としても大規模展示会場の建設を真剣に検討してみたいと感じている。
(石積)地元の展示会場の稼働率は50%ということで、会場としては機能しているという
ことだと思うが、今の会場で行われているのは、私が主張するような「真の展示会」では
なく、地元を対象とした即売会や音楽会などのイベント、講演会などが中心のはずだ。
これらのイベントが、私が主張する展示会・見本市と決定的に異なる点は、宿泊を伴わないこ
とだ。つまり、経済効果が小さく、京都活性化策の決定打としてはインパクトに乏しい。
世界中の展示会都市は、宿泊がどのくらい生まれるかを第一に考えている。世界中から、すな
わち外部から、ビジネスマンが1回で何万人も集まり、宿泊して商売を行うことになれば、京
都は大きく変わる。したがって、従来型の地元中心のイベントはそれとして継続して開催する
一方、それとは全く違う発想で、「真の展示会」を京都は目指すべきだと思う。それは政治・
行政が決断すべきことだ。
さらに、京都にはホテルが少ないのが問題ということだが、展示会場を造れば、会場周辺にホ
テルが自然とできるので、休日はそのホテルを観光にも貸し出せば、現状のホテル不足にも対
応できるようになると考える。
質問5)
(京都府に対する質問)スポーツ施設等で、かなりの金額をかけて建設している例を考えれば、
展示会場は経済効果を生み出すという点で、ずっと効率的な投資だと考えるが、いかがか?
回答5)
(京都府商工労働観光部 岡本部長)今までは、小さいものからスタートして需要に応じて徐々
に大きくするという考え方だった。今日の参考人の話は、大きいものをつくって需要を生み出
していくという、逆の発想である。展示会場の建設は「先行投資的なもの」であると捉え、新
しく検討していきたい。
質問6)京都には、展示会のテーマとなる産業が限られているが、それでも大丈夫なのか?
回答6)(石積)展示会都市として成功するかどうかは、その都市が何かの生産地か、消費地かという
4
問題とは無関係だ。アメリカのラスベガスが最も良い例だ。ラスベガスはギャンブルとエンタ
テインメントの街というイメージが強く、巨大な生産者や消費者がいるわけではない。しかし、
全米最大の展示会都市として大成功を収めている。
ラスベガスが展示会都市として成功できた最大の要因は、ラスベガス市内で合計45万㎡にも
上る、巨大な展示面積を有していることだ。
京都に会場ができても、まだ全く足りない!
日本の会場面積を 現在の3倍以上に
日本でもようやくながら、大規模展示会場の建設の動きが全国各地で起きている。東京ビッグサイト
パシフィコ横浜が拡張を決めた他、成田、新潟、名古屋、大阪、沖縄・・・等で会場新設が真剣に検討
されている。そしてついに今回、京都で大規模展示会場建設に向けた「種」が撒かれた。
これを聞くと読者の中には、「そんなに各所で会場を造って大丈夫なのか」等と感じられる方もいる
かもしれない。
それに対して石積は、「日本は経済規模に比べ、展示会場が圧倒的に不足していることが事実だ。日
本の展示会場総面積は35万㎡であり、それは中国の14分の1、アメリカの20分の1、ドイツの1
0分の1でしかない。不足状態を裏付けるかのように、ほとんどの展示会場はなかなか予約が取れない
のが実情だ」
、さらに、
「現在の日本の展示会場総面積を、早急に 3 倍の 100 万㎡以上に拡大してもすぐ
に埋まってしまうので、これでもまだ足りないぐらいだと、私は確信している」と述べている。
右図は、石積が7年前から主張
している「日本の展示会場総面積
3倍構想」である。彼が全国各地
の会場建設を積極的に提唱する背
景には、この構想がある。
石積は長年に渡って主張してき
た。
「資源の無い日本が、グローバ
ル経済の中で勝ち残るためには、
世界中から人、モノ、情報がどこ
よりも集まる国にならねばならな
い。そのためには、
『見本市大国 日
本』になることが近道だ。そのた
めには、まずは大規模な展示会場
石積が提唱する「日本の展示会場総面積3倍構想」。日本中で会場が圧倒的に
不足する中、上記の構想がすべて実現しても、まだ足りないのが実情だ
が日本全国に建設されることが不可欠である」と。
今後も彼は、全国の展示会場建設計画に対して、協力を惜しまないと決意している。
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