BL-17AのPilatus3 S6Mの検出エリア制限について

PF BL-17A の Pilatus3 S6M の検出エリア制限について
2015 年 10 月 24 日 作成
2015 年 10 月 27 日 追記
山田悠介
10 月 23 日に BL17A に設置された Pilatus3 S6M(P6M)に故障が発生しましたが、24 日よ
り検出エリアを制限するという応急処置を施すことで運用を再開しています。このことに
ついて、概要と使用上の注意点について説明します。
故障
故障の症状は検出器中央 1/3 から信号が出力さ
れなくなるというものでしたが(右図参照、検出器
の自己診断画像)、これは検出器内部の電源用電子
部品の一つが破損したことで検出器中央 1/3 のモ
ジュールに電源供給がされなくなってしまったこ
とが原因でした。修理には基板の交換が必要で、
その手配等に時間を要してしまうとのことでした。
応急処置
検出器内部の電気配線替えを行い、検出器中央
のモジュールへは電源供給を行う代わりに外側の
モジュールの電源配線を外すこととしました。そ
の結果、右図のような回折イメージを撮影するこ
とが出来るようになりました。現在のところ、外
側のモジュールは電気的ノイズによりランダムな
強度を示すようになっています。メーカーには外
側のモジュール部分を強度ゼロとするよう検出器
制御ソフトの修正を依頼していますが、いつ対応
できるかは未定です。
使用上の注意点
1.
UGUI での最大分解能表示
UGUI では通常検出器の端辺に相当する分解能を最大分解能として表示し、また測定時
にはそれに応じた位置に検出器を移動させます。応急処置を施した BL17A では検出器
の中央 2/3 の領域の端辺で最大分解能を計算するようにしています。(次ページ参照)
141 mm
UGUI 上の
最大分解能
176 mm
外側
波長 0.98 Å での最大分解能
2.
カメラ距離
UGUI 上の
外側での
(mm)
最大分解能 (Å)
最大分解能 (Å)
185 (最短)
1.53
1.32
200
1.62
1.39
250
1.93
1.62
300
2.25
1.87
350
2.57
2.12
ADXV のコントラスト調整
ADXV ではイメージを読み込む際にまず自動コントラスト調整をしますが、外側のラ
ンダムで非常に強い強度値が影響して正常にコントラスト調整が出来ません。マウス
右ボタンをドラッグしながら、”m”キーを押すことで、拡大ウィンドウで見えている範
囲のみを使用してコントラスト調整を行うので、何度か繰り返すと最適なコントラス
トになります。
また、自動更新の際にはデフォルトで更新時にコントラストがリセットされてしまい
ますが、[Edit]-[Settings]で開かれるダイアログ中にある Fix Contrast のチェックボッ
クスにチェックを入れることで、画像更新時もコントラストが保持されるようになり
ます。
3.
回折データ処理について
回折データを処理する際に外側のモジュール部分についてマスク指定をして処理から
除外する必要があります。
3.1.
XDS
XDS.INP に以下の記述を加えます。
UNTRUSTED_RECTANGLE= 0
UNTRUSTED_RECTANGLE= 496
UNTRUSTED_RECTANGLE= 990
UNTRUSTED_RECTANGLE=1484
UNTRUSTED_RECTANGLE=1978
486
980
1474
1968
2459
0 194
0 194
0 194
0 194
0 194
UNTRUSTED_RECTANGLE= 0 486
UNTRUSTED_RECTANGLE=1484 1968
UNTRUSTED_RECTANGLE=1978 2459
214 406
214 406
214 406
UNTRUSTED_RECTANGLE= 0 486
UNTRUSTED_RECTANGLE=1978 2459
426 618
426 618
UNTRUSTED_RECTANGLE= 0 486 1910 2102
UNTRUSTED_RECTANGLE=1978 2459 1910 2102
UNTRUSTED_RECTANGLE= 0 486 2122 2314
UNTRUSTED_RECTANGLE=1484 1968 2122 2314
UNTRUSTED_RECTANGLE=1978 2459 2122 2314
UNTRUSTED_RECTANGLE= 0
UNTRUSTED_RECTANGLE= 496
UNTRUSTED_RECTANGLE= 990
UNTRUSTED_RECTANGLE=1484
UNTRUSTED_RECTANGLE=1978
486
980
1474
1968
2459
2334 2526
2334 2526
2334 2526
2334 2526
2334 2526
ビームラインに併設された PC を用いて generate_XDS.INP コマンドで XDS.INP を
作成した場合には、上記マスクの記述が付加されます。
3.2.
HKL2000
手っ取り早い方法
処理する最大分解能を UGUI 上で指定した分解能にすれば、特にマスクをする必
要はありません。
真面目にマスクする方法
「4. 不良領域のマスク」に記した方法により不良領域の強度をゼロにしたイメー
ジファイルを作成して、処理を行ってください。
3.3.
iMosflm
GUI による Mask ツールを使用してください。
または、
「4. 不良領域のマスク」に記した方法により不良領域の強度をゼロにしたイ
メージファイルを作成して、処理を行ってください。
4.
不良領域のマスク
ビームラインの解析 PC 上で以下のコマンドを実行することで、外側の不良領域の強度
をゼロにしたイメージファイルを作成することが出来ます。
$ p4m_mask.py <イメージファイル名>
例:
$ p4m_mask.py collect_01_00001.cbf
p4m_mask.py は指定されたイメージファイルを含むデータセットについて、そのファ
イルの保存ディレクトリ下に masked サブディレクトリを作成し、そのサブディレク
トリ下に不良領域をマスクしたデータセットを保存します。