第3学年 音楽科学習指導案 男子 17 名 女子9名 計 26 名 指導者 松 本 朋 浩 1 音楽科研究主題 豊かに関わりながら『音楽のよさ』を感じ取り、主体的に表現していく子供の育成 2 題材名 せんりつや音の重なりをかんじとろう 教材曲「歌おう声高く」 「かね」 「A 表現」 (1)歌唱エ 「B 鑑賞」イ,ウ [共通事項]旋律、音の重なり、強弱、反復、変化等 3 題材の目標 ・ 旋律や音が重なり合う面白さに関心をもち、互いの歌声を聴きながら歌うことができる。 ・ 旋律の重なりや反復、強弱の変化を感じ取り、楽曲の構造に気を付けて聴くことができる。 4 ○ 題材について 高まってきている子供の姿 子供たちは3年生になり、初めてのリコーダーの学習に意欲的に取り組んでいる。リコーダー のきれいな音色に憧れをもち、タンギングや息づかいに気を付け、曲想を感じながら「小さな花」 などを演奏することができた。また「とどけようこのゆめを」では、歌唱とリコーダーの旋律に 分かれ、互いの音を聴き合って演奏しようとする姿が見られた。さらに、 「ゆかいな木きん」では、 楽しそうに橋渡りしている様子を歌声で表現したり、それを支える副次的な旋律との重なりに気 を付けながら演奏したりした。自分の担当する旋律の演奏で精一杯の様子も見られるが、繰り返 し練習する中で「2つの旋律を合わせてみたい」という声が聞かれるようになり、2つの旋律が 重なり、響きが豊かになることを楽しむようになってきた。このように、自分の演奏している旋 律だけでなく、互いの旋律に耳を澄ませ、その重なりを意識しながら演奏しようという気持ちが 育ってきている。 そこで、本題材を通して、2つの旋律の重なりを感じ取り、互いの旋律や音を聴き合いながら 歌う力を高めていきたい。 ○ 旋律の重なりを十分に感じ取る 本題材では、歌唱曲「歌おう声高く」と鑑賞曲「かね」を取り上げる。 「歌おう声高く」は、副 次的な旋律が同じ音型で繰り返されるオスティナートになっている。また主旋律は、3段目から 4段目にかけての曲の山が分かりやすくなっている。それぞれの旋律を十分に歌う時間を確保し、 歌声を重ねながら旋律の豊かな響きを楽しむことが、鑑賞の活動に生きるとものと考える。 「かね」は田園地帯に結婚式の開催を知らせる鐘が鳴り響いている状況を表現した曲である。 明るく滑らかな感じの主旋律と鐘の音を表現している副次的な旋律が重なっている。副次的な旋 律は、 「歌おう声高く」と同じオスティナートの音型であることやその旋律が繰り返されている ことから、鐘の音を聴き取ったり感じ取ったりしやすい。副次的旋律を聴くことを中心にするこ とで、曲の構成や音楽表現の面白さを感じ取ることができるだろう。このように、リズムや旋律 の反復、音色や強弱の変化の面白さを十分に味わい、聴くことを楽しむ姿を期待したい。 -下 1- 5 研究主題との関連 (1) 子供が主体的に表現していくための題材構成や教材選択の工夫 ○ 副次的な旋律の反復や変化に着目しやすい楽曲提示を工夫する 本題材の鑑賞では、子供に2つの旋律の特徴を聴き取らせ、その旋律の重なりを十分に感じ 取らせたい。そのため、鑑賞曲「かね」では、鐘の音を表す副次的な旋律に着目しながら聴か せる。子供は最初、鐘の音がどのように表現されているか分からない状態になるであろう。そ のような子供に、まず曲名と鐘の写真を提示し、鐘の音がどのように表現されているか聴くよ うに伝え、アの前奏と冒頭部分を聴かせる。これにより子供は、副次的な旋律が鐘の音である ことに気付くであろう。 一方、部分的に鐘の音に気付いているが、それが楽曲全体にわたってどのように展開されて いくかまで想像できる子供は少ないであろう。そこで、鐘の音が何回出てくるか数えながら聴 くように伝え、アの前半部分を聴かせる。子供は鐘の音に耳を澄ませながら、何回演奏されて いるか聴こうとするであろう。そして、鐘の音が何回も繰り返されていることを聴き取り、こ の後もずっと鐘の音が鳴り続けると予想するであろう。そのような子供に、アの部分を通して 聴かせる。子供は、鐘の音が消えてしまったこと、そして再び聞こえ始めることや強弱などの 変化に気付くであろう。 このように、子供がもっと聴きたいという思いをもてるように、楽曲を区切りながら提示し ていく。これにより、子供は鐘の音のモチーフに気付き、その反復や変化といった共通事項も 聴き取ることができると考える。 (2) 豊かな関わりを生む学習過程の工夫 ○ 聴き取ったことを伝え合ったり楽曲で確かめ合ったりする 本題材では、互いに聴き取ったことを歌唱に生かしたり、鑑賞において曲の要素を共有し合 ったりする。 歌唱では、子供がより互いの旋律を聴き合いながら歌えるように、聴き役を設けて互いの旋 律の歌声をアドバイスさせる。そのとき、聴き役の子供に、2つの旋律がきれいに重なって聴 こえてきたかという視点をもたせる。これにより、子供は2つの旋律に耳を澄ませ、2つの旋 律の音程や歌声が美しく響くかを意識しながら聴くようになるであろう。そして、よかったこ となどを言葉や音で伝えることで、歌うときに互いの旋律を意識して歌ったり、旋律の重なり による豊かな響きを楽しんだりするようになるであろう。 鑑賞では、聴き取った副次的な旋律の反復や変化等を、全体で共有し合う。このとき、子供 が聴き取った特徴を、時間的な流れを横軸に取りながら板書していく。これにより、子供は旋 律の特徴が時系列で分かりやすくなるとともに、楽曲の構成にも気付くことができるであろう。 さらに、聴き取ったことをすぐに楽曲に戻って聴いてみることで、子供は聴き取った要素を楽 曲で確かめながら感じ取ることができると考える。このように、聴き取ったことを言葉で全体 に伝えたり楽曲に戻って聴いたりしながら学習を進めていく。 (3) 一人一人の可能性が生きる評価の工夫 〇 瞬時の見取りを指導に生かす 鑑賞では、旋律の重なりによる響きのよさや強弱による曲想の変化等、楽曲を特徴付ける要 素を感じ取ることが大切である。子供の表情やつぶやき、挙手等の様子を瞬時に見取ることで、 子供が楽曲の要素を感じ取っているか確認しながら学習活動を進めていく。また、楽曲の要素 に気付けていない子供がいる場合は、気付いている子供に問い返したり、視点をはっきりさせ て楽曲を繰り返し聴いたりする必要がある。また、鑑賞曲「かね」では、副次的な旋律の変化 を感じ取ることが難しい子供がいると思われる。そのため、旋律を口ずさんだり楽器を用いて 身体表現をしたりしながら、旋律の特徴を感じ取れるようにする。 ○ ワークシートを活用して感じ取ったことを言葉で表す 鑑賞の活動を通して、子供たちは反復や強弱、旋律の重なりについて感じ取っている。それ を言語化することで、子供はより明確に曲の要素をとらえることができる。そこで、鑑賞の活 動の2時間目では、楽曲の要素を1枚のワークシートにまとめる活動を、授業の終末で行う。 旋律の重なりや強弱等の視点ごとに感じ取ったことを記入することで、子供自身の楽曲に対す る関わりや実感した学びの高まりを評価できると考える。 -下 2- 6 題材の評価規準 音楽への関心・ 意欲・態度 ① 友達の歌声を聴き ながら、自分の声 を合わせて歌う学 習に進んで取り組 もうとしている。 【関-①歌唱】 ② 旋律の特徴に気を 付けて聴き、聴き 取ったことや気付 いたことを言葉で 表したり楽曲に戻 って確かめたりし て、楽曲の特徴に 気付いて聴く学習 に進んで取り組も うとしている。 【関-②鑑賞】 7 時 間 第 一 次 第 一 時 第 二 次 第 二 時 本 時 音楽表現の創意工夫 音楽表現の技能 鑑賞の能力 ① 友 達 の 歌 声 や 副 次 ① 旋律の重なりや強 的な旋律を聴きな 弱を聴き取り、そ がら、自分の声を合 れらの変化が生み わせて歌っている。 出す楽曲の構造に 【技-①歌唱】 気を付けて聴いて いる。 【鑑-①鑑賞】 題材の指導と評価の計画(全3時間 本時2/3) ◎ねらい ○学習内容、学習活動 評価の観点 ◆評価規準【評価方法】 ・予想される子供の反応 関 創 技 観 □子供への支援 ◎旋律の流れを感じ取って主な旋律を歌ったり、互いの旋律を聴き合いながら合唱したりする。 〇 「歌おう声高く」を聴き、主な ① ① ◆関-①歌唱 友達の歌声を聴きながら、自分 旋律を歌う。 の声を合わせて歌う学習に進ん ・ 2つのパートの歌声が重なっ で取り組もうとしている。 ている。 【表情観察、演奏聴取】 ・ 弾んで歌うところと滑らかに ◆技-①歌唱 友達の歌声や副次的な旋律を 歌うところに変化をつけよう。 聴きながら、自分の声を合わせて 〇 副次的な旋律を歌う。 歌っている。 ・ 「ランランラン」を明るく弾む 【行動観察、演奏聴取】 □ 主な旋律を歌うグループ、副次 感じで歌おう。 的な旋律を歌うグループ、歌声を ・ 同じ音が繰り返されている。 聴くグループを交代して行う。 〇 互いの旋律を聴き合いながら、 □ 聴いたグループが、よかった点 や改善点を述べることで、互いの 二つの旋律を重ねて歌う。 旋律の音量のバランスや強弱な ・ 互いの歌声につられないよう どについて着目できるようにす に歌おう。 る。 □ 3段目がクレシェンドして、4 ・ 4段目に向かって盛り上がる 段目につながるとよいことを歌 ように、3段目の歌い方を工夫し い比べて意識づける。 よう。 ◎旋律の特徴や重なりを聴きながら、楽曲の構成に気付く。 ○ 鐘の音に着目しながら、 「かね」 ② ◆関-②鑑賞 旋律の特徴に気を付けて聴き、 の冒頭部分を聴く。 そこから聴き取ったことや気付 ・ 3つの音が何回も聞こえてく いたことを言葉で表すなどして、 る。 楽曲の特徴に気付いて聴く学習 に進んで取り組もうとしている。 ・ 「歌おう声高く」のランランラ 【行動観察、ワークシート】 ンと同じだ。 □ モチーフ(鐘の音)がはっきり ・ 鐘の音が 20 回出てきた。 聴き取れるように、冒頭部分のみ ・ もう1度聴いて確かめたい。 を聴くようにする。 ・ この先も鐘の音が続くのかな。 □ 鐘の写真を見せ、結婚式を告げ ○ 鐘の音がどうなるか予想しな -下 3- がら、 「かね」のアの部分を聴く。 鐘の音が強くなったり弱くな ったりしている。 ・ 鐘の音がなくなった。 ○ 鐘の音が聞こえない部分の旋 律に着目しながら、 「かね」の中 の部分を聴く。 ・ 鐘ではない旋律がずっと聞こ える。 ・ 最後の方でゆっくりと鐘の音 が、また出てくる。 〇 振り返りをする。 ・ 鐘の音が何回も出てきておも しろかった。 ・ 鐘の音がないところは、きれい な旋律が聞こえてきた。 ・ この後、鐘の音がどうなるのか 早く聴きたい。 る鐘の音であることを伝え、イメ ージを膨らませる。 □ 曲の時間的な流れを横軸にと り、繰り返しや変化が分かるよう に板書する。 □ 鐘の音の有無や強弱等の変化 への気付きを取り上げ、再度楽曲 に戻って確かめながら、十分に聴 けるようにする。 ・ 第 三 時 □ 主な旋律に気付いた子供の意 見から、主な旋律にも目を向けさ せる。 □ 鐘の音が再びどのように出て くるか聞こえ始めた所で手を挙 げさせて確認する。 ○ 鐘の音に着目しながら、 「かね」 の終わりの部分を聴く。 ・ 始めの部分と同じように、また 鐘の音が聞こえてきた。 ・ 最後の方は、結婚式のお祝いの ように勢いよく鐘が鳴っている。 ・ もう1つの旋律も始めの部分 と同じだ。 ○ 鐘の音に合わせて叩く真似を しながら聴く。 ・ 強いところは大きく叩いてみ よう。 ・ 鐘の音がまた出てくるところ は、よく聴いてゆっくり叩こう。 ○ 全曲を聴き、音楽を特徴付けて いる要素に気付く。 ・ 鐘の音が鳴っているところだ けでも、強い部分と弱い部分があ る。 ・ 鐘の音がないところは、優しい 感じの旋律になっている。 ○ 自由な聴き方で、全曲を聴く。 ・ 鐘を叩く真似をしながら聴こ う。 ・ 主な旋律を口ずさみながら聴 こう。 ① □ 再度聞こえてきた鐘の音が、こ の後どうなっていくか期待感を もたせながら、オープンエンドで 終了する。 ◆鑑-①鑑賞 旋律の重なりや強弱を聴き取 り、それらの変化が生み出す楽曲 の構造に気を付けて聴いている。 【行動観察、ワークシート】 □ 前時で用いた板書を続けたり、 始めと終わりの部分を聴き比べ たりしながら、構造に気付かせて いく。 □ 録音した主な旋律に合わせて ハンドベルを用いたり手で打っ たりしながら、鐘の音を感じ取 る。 □ これまで聴き取ったり感じ取 ったりしたことを基に、ワークシ ートに主な旋律、鐘の旋律、強弱、 その他感じたことをまとめてい く。 □ 自由な聴き方で聴かせること で、楽曲から感じ取ったことを確 かめながら鑑賞できるようにす る。 -下 4- 8 本時の学習(2/3時) (1) ねらい(B 鑑賞) ・ 3つの鐘を表現している音に着目して鑑賞曲「かね」を聴き、旋律の反復や変化等の特徴に 気付くことができる。 (2) 展開 学習活動と予想される子供の反応 □教師の支援 ◆評価 1 「歌おう声高く」を歌う。 (全体 3分) ・ 4段目に向かって盛り上げるように歌おう。 □ オスティナートの旋律を聴きながら伴奏に ・ 「ランランラン」の繰り返しを、旋律を聴き のって歌うことで、 「かね」のモチーフである鐘 ながら歌おう。 の音に気付くようにする。 かねを表すせんりつに気をつけて、楽曲「かね」をきこう。 2 「かね」の始めの部分を聴き、反復や変化を 聴き取る。 (全体 25 分) <「かね」の始めの冒頭部分(9秒)まで聴いて> ・ 3つの音が何回も聞こえてくるところが、鐘 の音だと思う。 ・ 鐘の音は、 「歌おう声高く」のランランランと 同じだ。 <「かね」の始めの半分(24 秒)まで聴いて> ・ 20 回出てきた。 ・ もう1度聴いて確かめたい。 ・ 何回も鐘の音が出てくる。 ・ この先も鐘の音が続くだろう。 <「かね」の始めの最後まで聴いて> ・ 鐘の音はずっと続くと思っていたけど、なく なってしまった。もっと先も聴いてみたい。 ・ 最後の方の鐘は、 「カーン」と鳴り響いている ような音だった。 ・ 鐘の音が強くなったり弱くなったりしている ところがあった。 3 「かね」の中盤の部分を聴き、鐘の旋律と主 な旋律の変化を聴き取る。 (全体 10 分) ・ 鐘の旋律でない、優しい感じの旋律が聞こえ てきた。 ・ 最後の方で、ゆっくりと鐘の旋律が聞こえた。 □ 曲名と作曲者名を告げ、鐘の音がどのように 表現されているか着目して聴けるようにする。 □ 鐘の音が聴き取れるように、始めの冒頭部分 だけを聴かせる。 □ 鐘の写真を提示し、結婚式を知らせる鐘の音 であることを告げることで、曲が表現しようと しているイメージを膨らませることができる ようにする。 □ 鐘の音が反復されていることに気付けるよ うに、 「かね」の始めの中盤まで聴かせ、鐘の旋 律に着目できるようにする。 □ 曲の時間的な流れを横軸にとり、曲の構成や その変化が分かるように板書する。 □ 鐘の音がこの後、どうなっていくのか想像す るという視点をもたせながら、 「かね」の始めの 最後までを聴かせる。 □ 鐘の音の有無や強弱等の変化への気付きを 十分に感じ取れるように、再度楽曲を聴いて確 かめる。 □ 主な旋律への気付きを取り上げ、主旋律に着 目して聴くようにする。 □ 鐘の音が再び聞こえてきたことに気付いた 子供のつぶやきを大切にして、鐘の旋律が何度 も出てくることを聴き取れるようにする。 □ 鐘の音の反復や変化に着目している子供の 4 振り返りをする。 (全体2分→個5分) 振り返りを取り上げ、楽曲の特徴を再度全体で ・ 鐘の音が何回も繰り返されていて、楽しみな 共有する。 がら聴いた。 □ 再度聞こえてきた鐘の音が、この後どうなっ ・ 鐘の音が強くなったり、弱くなったりしてい ていくか期待感をもたせ、次時へつながるよう ておもしろかった。 にする。 ・ 鐘の音がないところでも、きれいな旋律が聞 ◆ 旋律の特徴に気を付けて聴き、聴き取った ことや気付いたことを言葉で表したり楽曲に こえてきて、きれいに響いていた。 戻って確かめたりして、楽曲の特徴に気付い ・ この後、鐘の音がどうなるのか早く聴きたい。 て聴く学習に進んで取り組もうとしている。 【行動観察、ワークシート】 -下 5-
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